マーケティングと経営の言葉の意味と関係性
まず基本的な部分として、マーケティングと経営というそれぞれの言葉の意味を確認し、関係性を紐解いてみましょう。
マーケティングとは
“marketing” の “market” は「市場」を意味します。つまり、もっとも端的な言い方をすればマーケティングは「市場活動」ということです。市場に商品を提供する活動全般を指すことになるので、結果的にマーケティングの定義とぴったり重なってきます。
マーケティングの定義は何通りかありますが、共通する要素からまとめると、以下のようになります。
【市場のニーズを満たす商品・サービスを開発し、市場に提供して利益を上げる活動に関わるすべてのプロセス】
商品・サービスの企画やそのための市場調査・分析、そして出来上がった商品・サービスを市場に投入して、広告宣伝で消費者に知らせ、販売促進活動によって購買意欲を高めて売れる土壌を作るまでの包括的な活動がマーケティングです。
まさにひと言で表現すれば、市場活動となります。なお、マーケティングの本質的な意味については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にご覧ください。
経営とは
経営の言葉の意味は、辞書的な解釈の共通する要素をまとめると、以下のようになります。
【計画的かつ継続的に意思決定を行い、事業を組織的に管理・遂行すること】
ちなみに、日本語の経営は組織全体の運営に対して使われ、組織内の個別の部門や部署を主語としては使用されません。つまり、「会社を経営する」とは言いますが「営業部を経営する」「総務部人事課を経営する」とはいいません。
一方、英語の経営は “management” がそれに当たり、上記のような部門、部署でも“management” の対象となります。日本語の経営よりも広い範囲で適用される言葉です。
ともあれ、基本的には管理下に置かれた組織が目標を持ち、利益(宗教法人やNPOなども法人経営になるので、経済的な利益とは限らない)の追求を目標として事業を推進することが経営です。
マーケティングと経営の関係性
マーケティングと経営の関係はシンプルです。経営はマーケティングの上位概念であり、マーケティングのすべてをその中に包含します。よって、マーケティングの目指すものは経営の目指すものと矛盾することなく、同じ方向を向いています。
マーケティングが良い結果を出せば経営に貢献し、悪い結果なら足を引っ張ります。また、優れた経営判断はマーケティングを良い方向に導き、またその逆もありえるでしょう。
このように、上位と下位の関係で連動しているのが経営とマーケティングです。なお、マーケティングと「営業」の関係性については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
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マーケティング企画と経営企画の違い
マーケティングと経営は、それぞれ「企画」を立てます。両者の企画の違いについて、触れておきましょう。
マーケティング企画は主にマーケティング活動の中の、アプローチ施策の企画を意味することが多いです。どういう方法でどれくらいの費用をかけて、どういう成果を目指すかを企画します。そして実現可能性を慎重に議論した上で、KPI(重要業績評価指標)を設定し、効果が測定できる体制で計画的に実行に移します。
一方、経営企画は事業全体の、大きな舵取りに関わる企画です。事業転換や新事業への参入、M&Aや組織の再編成などの、経営の根幹にも関わってくる命題での企画となります。それによって、マーケティングの企画の方向性も影響を受ける場合が少なくありません。
なお、マーケティング企画の要となるUSPについては、以下の記事で特集していますので、参考にしてください。
マーケティング戦略と経営戦略の違い
マーケティング戦略は特定の商品やサービスを市場に売り出す際に、いかに効率よく市場に浸透させるかを目指す大局的な作戦を意味します。ちなみに、その作戦を現場レベルの業務に落とし込む際に、できるだけ効果的に実施するための工夫が戦術です。
一方、経営戦略は中長期的な事業の展開を見据え得た方向性の意思決定や、そのための資金調達、人材確保などの方法を包括的に構築することを意味します。
なお、マーケティングや営業に現場レベルの「戦術」はあっても、経営に関して戦術という概念はあまり用いられません。経営判断には、ひとつひとつが終局の重みがあり、小手先の工夫は通用しないシビアな分野だからでしょう。
なお、戦略と戦術の違いについては、以下の記事を参照してください。
また、マーケティング戦略の立案に必要なフレームワークについては、以下の記事で詳しく取り上げていますので、ぜひご覧ください。
マーケティング学と経営学の違い
マーケティング学と経営学の関係は、マーケティングと経営の関係そのままの図式で理解できます。経営学という「幹」があり、「マーケティング学」はそのひとつの「枝」です。
経営学という「幹」には、ほかにも「財政学」「会計学」「商学」や「組織論」「金融論」「投資論」などが存在します。
大学の経営学部にマーケティング学科があることからも、その関係性は明らかです。なお、マーケティングを学ぶ際のおすすめの勉強方法をは、以下の記事で特集していますので、参考にしてください。
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マーケティングコンサルタントと経営コンサルタントの違い
マーケティングコンサルタントとは、マーケティング部門の業務に関して専門的なアドバイスとサポートをするコンサルティングビジネスです。マーケティング業務を部分的に受託あるいは代行する場合も少なくありません。
一方、経営コンサルタントは経営に関わる、抜本的な課題解決のサポートを行うコンサルティングビジネスです。かつての経営コンサルタントは課題を分析して提案や助言をするのが仕事でしたが、最近では実行部分も含めて、企業の内部に常駐してサポートをするやり方が増えてきました。
ただし、現在はパンデミックの影響で、リモートでのサポートも見られます。
なお、マーケティングコンサルタントも重視する、インサイトの概念を理解するためには、以下の特集記事を参考にしてください。
マーケティング資格と経営資格の違い
マーケティング関連の資格と経営関連の資格は、ともに取得が必要なものではありません。そしてまたどちらも、取得を目指す勉強を通して基本や考え方を学び、ビジネスの糧となり、人材価値を上げていける要素となります。
その上で違いを言うなら、どちらの業務に役立つものであるかというシンプルな項目になります。また、MBAや中小企業診断士のように、マーケティングと経営の双方に役立つ内容に関する資格も存在します。
【おすすめ記事】
経営視点でマーケティングを解説するおすすめ本
マーケティングの解説本や経営の専門書はたくさんあっても、経営視点でマーケティングを解説する本は多くはありません。ここでは経営視点でマーケティングを解説する本から、おすすめを厳選して3冊ご紹介します。
名古屋商科大学ビジネススクール ケースメソッドMBA実況中継 01 経営戦略とマーケティング
この本はビジネススクールで行われている人気が高い講義「Aligning Strategy and Sales(戦略とセールスの調和)」をベースに編纂されています。
著者はその講義をさらに「経営戦略とマーケティングのマリアージュ」と表現しています。マリアージュとは結婚を意味するフランス語であり、料理用語ではワインと料理がお互いの良さを引き出し合って高め合うことです。
経営戦略にも事業戦略だけでなく差別化戦略ほか、さまざまなレイヤーがあって、それぞれが溶け合うように調和と整合性を保っていないと戦略が思うように機能せず、水泡に帰すと著者は考えます。
マーケティングと経営上の事業戦略を、どのように適切に噛み合わせるかを基本のテーマとした、マーケティングと経営の本質に迫る一書です。
名古屋商科大学ビジネススクール ケースメソッドMBA実況中継 01 経営戦略とマーケティング | 牧田 幸裕
売上が上がるフロントオフィスの設計図――営業DX・CRM/SFA・MA活用・マーケティング戦略を一気に実現させる方法
この本は、バックオフィス(後方支援部門)に対するフロントオフィス(収益を稼ぎ出す部門)の改革を基本テーマとして扱っています。営業・マーケティングのデジタル化で、非効率な営業活動をいかに合理的に変革すべきかを解説した内容です。
日本の中小企業の多くは、フロントオフィスの効率化がなされず、2020年代の現在もマンパワーの「勘と手作業」に支配されて生産性が上がらないと著者は指摘します。
「勘と手作業」が無意味なわけでは決してありません。問題は昔ながらの営業・マーケティング手法のまま何ら変化しないことにあります。その結果、担当者のアナログな方法だけに頼ってしまい、データに基づいた戦略構築ができていないというのが、著者の冷静な評価です。
「見込み客(リード)の獲得から成約に至るまでのプロセスが可視化されていない」
「それゆえ成約の確度もわからない」
「受注までの工程が不明で売上見込みが立てられない」
「デジタルツールを導入しても現場の営業担当が使いこなせない」
本書はこれらのボトルネックの解決に向けて、事例も交えて「考え方」と「方法論」をわかりやすく説いています。事業のデジタル化に苦労している経営陣および営業部門、マーケティング部門の責任者におすすめの一書です。
売上が上がるフロントオフィスの設計図――営業DX・CRM/SFA・MA活用・マーケティング戦略を一気に実現させる方法 | 本間卓哉, 江尻 俊章, 加藤 善春, 積 高之, 廣瀬 隆彦, 村田 良輔
「営業」をデジタル化し、「経営」を加速させる、「強い」マーケティング組織のつくり方
この本は営業をデジタル化し、リード(見込み客)を獲得して売上をもたらす「強いマーケティング組織」の作り方について解説しています。あくまで経営の視点で、マーケティングや営業のコントロールを解き明かした、経営幹部や営業・マーケティング責任職のみなさんにとって有益な内容です。
社内のデジタル化によって「強いマーケティング組織」を作り出してきたコンサルタントである著者が、誤解が多いデジタルマーケティングに警鐘を鳴らし、マーケティングで成果が上げられる組織づくりを説いています。
また、コモデティ化(標準化)の急所について、事例をふんだんに交えつつ、具体的なノウハウを公開した注目の一書です。
「営業」をデジタル化し、「経営」を加速させる、「強い」マーケティング組織のつくり方 | デ・スーザリッキー
なお、マーケティング戦略の実践に役立つ本を、以下の記事でご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
まとめ
マーケティングと経営という、引き合いに出されがちで掴みにくい概念について、理解しやすいように5つの観点から立体的に解説しました。経営という大きなプロジェクトがあって、その中の重要な「市場活動」を担うマーケティングとして捉えるのが妥当です。
経営陣はマーケティングを理解し、マーケティング担当は経営視点に立つことで、強い組織となるのは間違いありません。経営陣およびマーケティング担当のみなさんは、ここでご紹介した情報を参考に、相互理解に立って業績拡大を目指してください。
【コンテンツマーケティング担当者必見:おすすめ記事】
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