登壇者プロフィール
河野 貴輝(かわの たかてる) 氏
株式会社ティーケーピー 代表取締役社長
1996年慶應義塾大学商学部卒業後、伊藤忠商事株式会社為替証券部を経て、日本オンライン証券株式会社(現auカブコム証券株式会社)設立に参画、 イーバンク銀行株式会社(現楽天銀行株式会社)執行役員営業本部長等を歴任。2005年8月当社設立、代表取締役社長就任、現在に至る。
鈴木 章裕(すずき あきひろ) 氏
株式会社コミクス 代表取締役
1969年、大阪府生まれ。甲南大学法学部を卒業後、広告代理店の営業部長を経て、2000年にインターネット広告を手掛けるアイブリッジ株式会社へ入社。
2007年9月、アイブリッジ株式会社、アドデジタル株式会社、アカラ株式会社、ブランド総合研究所という4つの会社を束ねるグループ会社へと成長した同社の社長を辞し、株式会社コミクスを設立し、代表取締役社長に就任。
「コロナ直撃銘柄」といわれるほど株価が暴落
本日は株式会社ティーケーピー 代表取締役社長 河野さんにお越しいただきました。11年ぶりですよね。あの時まだ上場されてなかったんですよね。
上場したのは2017年で、まだリーマンショックをやっと超えたあたりですね。
馬淵さんと河野さんの動画セッションを見ていて、貸し会議室、宿泊はコロナ禍でダメージを受ける業界ですよね。株価も暴落するし、リージャス社を買収して踏み込んだ後に、僕がもし河野さんの立場だったらもう死にたくなるなと。ハラハラしませんでしたか。
踏んだり蹴ったりで、ハラハラを通り越してました。今まで15年間やってきて、この後どうなるんだろうかと非常に不安でした。
それまではそもそも上昇しか知らないような、綺麗な右肩カーブをずっと描いているじゃないですか。
オリンピックに合わせてアパホテルも10棟建てて、最後の2棟、上野ができあがるというタイミングでした。
コロナ禍で2020年の4月から6月はめちゃくちゃだったのではないですか。
そうですね、株価も直前の2019年の終わりは5,000円~6,000円ぐらいだったのが、910円まで落ちますからね。「コロナ直撃銘柄」といわれていましたね。
先週クックビズ社の藪ノさんとも公式セッションしましたが、彼らも飲食店の転職プラットフォームなので、打撃を受けて10億円借り入れしたと言ってましたが。
僕もレストランとか20店舗ぐらいやってたんですよね。ウナギ屋さんとか懐石料理屋とか。全滅でしたね。
休業宣言出して休業手当を出しつつ、粘る感じで我慢するのを半年やってた感じですか。
頑張っていました。弁当工場も発注ゼロが続いて厳しかったです。
航空会社の機長さんの弁当も作ってましたけど、飛行機動いてませんからね。
そういうことですよね。JAL、ANAでも5,000億円とか、そういった単位の金額が半年で赤字になってましたもんね。
もっと大変だったのは海外ですね。マンハッタンがロックダウンみたいな。
TKPニューヨークカンファレンスセンターもどうしようもないですよね。何の補償もなかったですよ。
2023年にV字回復を果たすまでの経緯
コロナ禍で起こった出来事に対してTKPとして対策を講じて、今回7月14日の2023年の第1四半期決算、見事にV字回復おめでとうございます。130億円、EBITDAで25.5億円、営業利益で12.15億円、経常利益10.56億円で、当初の23年通期の20億円も第一四半期で半分以上クリアしてるので、すごく長かっただろうなと自分ごとのように見てました。最初の3カ月、1年、今で、コロナ禍で起こったことに対して、どのようにTKPとして変えていったのかを時系列でお伺いしたいなと思ってまして。
2020年の2月決算だったんですが、2月決算過去最高利益を発表するつもりでした。4月の発表の時は最高売上最高利益と言いながらも直近がダメで、3月4月も緊急事態宣言でそもそもロックダウンです。海外と同じです。
1月まで絶好調でしたが、2月にちょっとおかしいなっていう動きがありました。4月も過去最高売上のはずだったんですが。ニューヨーク、スコットランド、ロンドンと、2月はIRで海外に行っていました。ですが、帰ってきて不穏な動きがありました。ダイヤモンドプリンセス号のニュースを、ニューヨークでずっとテレビで流れてまして、アジアからくるコロナを、アメリカは非常に警戒してました。それを受けて、3月になるとすぐロックダウンの話が出てきましたね。
当時の安倍総理も「緊急事態宣言」を出して。
3月中旬ぐらいから焦りました。株は暴落、キャンセルは続出。キャンセルの金額も100億円単位の大きな規模で。貸し会議室だけで、家賃20億円、人件費10億円と月30億円のお金を払ってたんですよ。何もしなくても毎月30億円出ていくので、売上が0になると30億円の赤字ってことになりますよね。
売上は540億円でしたが、会議室の部分だけ見てもコストが360億円が出ていくと。その時にやっぱり「冬眠するしかないな」と。海外もロックダウンしてるから、日本だけ助かるわけがなかったので。助からないとなると生き残るしかないと。社員には「生き残れば生存者に利益があるからまず生き残ろう」と。熊も冬眠するときは脂肪を蓄えて冬眠するので。企業の場合は、現金を蓄えなければ死んじゃいますよね。
3月の最後の週に一気に動いて、4月の最初の週にはもう360億円の手当をしてましたね。
その当時、コロナ自粛がどれくらい続くと想定されてましたか。
当時は香港のSARSの件をあげて6カ月だと言われてましたので、私も6カ月間見ておけばなんとか戻るだろうと信じてました。6カ月だと思ってましたが、1年分の資金を確保しようと動いたんですね。
冬眠すると言っても、コロナ禍の構造改革などいい影響がでてると書かれたのですが、どうビジネスモデルを変えていったのですか。
コロナの前は上場もして成長していましたが、目に見えないところで膨張してたんですね。そこが浮き彫りになりまして、何のビジネスがコアビジネスで、何がノンコアビジネスかはっきりしまして。会議室やフレキシブルなオフィスの事業、宿泊事業はコア事業、それ以外は一旦ノンコア事業とスリム化しました。とはいってもコベナンツにヒットしたので、こんなことを偉そうに言ってますけど銀行さんと一緒に話し合って。コアとノンコアに分けて整理しますから、ジャンプしてくださいという話になるわけですね。
直近でもホテル事業も2期連続で史上最高益って書かれてたんですけど、結構戻ってる感じですか。
会議室のほうだと思いますね。ホテルはオリンピックに向けて10棟オープンしたので、そういう意味では売上はどんどん上がってますね。しかしまだこれから、インバウンドが入ってこないとですね。稼働は今上がってるんですよ、アパホテルもですね。
もっといってますね。ISHINOYAとかレクトーレというリゾートホテルは軒並み成績がいいんですが、本格的なのはこれからインバウンドが、個人旅行が入ってきてから増えると思いますね。
制限がなくなっていよいよですね。待ちに待った2年半ですね。
スポーツを通じた地方創生の取り組みも
大分のサッカー支援してるんですか。検索したら、大分トリニータ系の動画が出てきて。
サッカーファンはアツいですよ。ビジネスの話をするよりもサッカーの話でTwitterしたほうが良いです。全然反応が違いますね。
スポーツで地方に貢献して、それが地方創生になって、ひいてはそれがビジネスに還元する。日本が一番目指すところ、地方創生の一番いいところのモデルですね。
1丁目1番地ですよね。アメフトとかでもアメリカのこの地方の州のコンテンツで、エンターテインメントの要になりますからね。
ワクチンの接種会場として「サービスを時間貸し」した転換点
話を変えますが、2022年最終損益32億円と書いてあったのですが、一番沈んだのは32億円ぐらいですか。
ほぼ同じくらい沈んでますね、前後利益でいくと。悪くなるといろいろ出てきますよね。減損処理されて営業利益で見るとそんな損はしてないですが。
営業利益で見るとそこまで落ちていなくて、今回の営業利益の第1四半期で取り返してるぐらいの感じですが、潮目が変わった転換点はどこでしたか。
2020年10月〜12月に1回戻りかけたものの、その後まん防が出て緊急事態宣言の発令。それでまた落ち込んで回復してないです。でもそこで5月、株主総会の時期を迎えました。どうしようもないと思いましたが、欧米を見てると戻っている。ヨーロッパもアメリカも。コロナのワクチンを打って経済が戻ってきて、マスクもしなくなっていると。
日本は何でこうなんだろうと。当時のリージャスのオーナーと取締会で話をしていると、なんで日本人はワクチンを打たないんだというわけです。これがヒントになりました。ワクチンを打って経済を正常化させるしかないと。当時まだ厚生労働省がシルバーの方から打っていて、接種率は数%だったんですよ。
打ちたくても打てないという感じで。僕らも当初は、楽天社とかGMO社とかにお願いして打ちに行ってました。
それであれば、
企業はインフルエンザのワクチン注射打ったりしてましたので、企業単位で打つという職域摂取をやったらいいんじゃないかと。
全国にあるTKPの会議室を使ってやればいいじゃないかと、当時の菅総理に進言しに行ったと。本当は大企業が自分の会社単位で職域接種センターを作るんですが、僕たちはもともと経済同友会の幹事をやっていたので同友会企業を取りまとめて、レーンを作って15分単位で時間貸ししていくんです。会議室と同じようにワクチンセンターとして使いました。
パーク24がやってるカーシェアリングとかが結構近いです。もともと駐車場に車を置いて、車ごとレンタカーで時間貸ししますよね。同じように会議室とお医者さん、看護師さんなど全部用意して、15分単位でいろいろな会社に貸していきました。そういう意味では非常に応用が効いてたなと。
「時間貸し」という発想を、「サービスの時間貸し」という発想にしていきました。それが功を奏して。TKPのお客様企業にもすごく喜んで使っていただきましたし、総務部人事部のお客様と太いパイプが作れて、それが3月4月5月の決算に出てくるんですね。
そうしただけで、TKPを使おうと思っていただけて。
それで3月4月5月の売り上げが戻ってきて、やっと黒字になりました。しかしまだ全然回復してないです。会議室でやっと7割ぐらいの回復。
飲食のパーティー、ケータリング、弁当。これらはまだ10%しか戻っていないです。
伸びしろしかないですね。それが戻ってきて、会議室も食べ物も戻ってきたらまた盤石ですね。
そうですね。会議室だけ戻って利益が出る体制になり、筋肉質になってきたのかなという感じです。
オンラインイベントの企画などハイブリッドなサービス提供も
場所を貸す感じだったのが、今どちらかというと例えばハイブリッドで、オンラインもしたり、会議そのものの企画をしたり、イベントの企画をしたりと、パッケージ化されてることも書かれていたんですけど。
もともと子会社にイベントプロデュース会社があったので、そこが
Google社やソフトバンク社のイベントをやっていたのを応用しました。今までTKPでやっていた表彰式などについて、コロナ禍になってからスタジオでのオンライン表彰式の形式で受注するようになったんです。
オンラインだけでやる研修やプログラム、動画の制作までTKPで提供するようになりました。
そうすると、今までリアルで使ってたお客様もオンラインでできるようになり、今回またリアルで開催できるようになったので、またお客さんがそのまま戻ってくるんです。その時に、リアルだけじゃなくオンラインもセットでできますよと。
確かに。せっかくオンラインも覚えたから、ハイブリッドでリアルと同じことをやりたいところは増えていますよね。
そうですね。絶対その本会場に来させたい社員は来させて、あとはオンラインでつなぐと。今まではリアルに来なければ絶対参加できなかったのが、ハイブリッドで参加できるようになって、いろんな意味で効率もよくなってきましたし、企業様から見ても交通費含めて費用削減ですね。昨年もできるようになってきたので非常にこのハイブリッドはいいのかなと。
ユーザーがデータベースから探せる形に変えた経緯
僕は改めてサイトの自動化も気になったんですけど。11年前にSEO対策やらせていただいたと思うのですが、その時はTKPの人が会場を探すという。僕、ユーザーが勝手に探すと思い込んでたんですが、問い合わせたらTKP側で会場を探して手配しているモデルだったんですね。それを今度のバージョンは、ユーザー自らがDBから探すように変えるということですよね。
多様性ですから、もちろん依頼いただいてもいいです。しかし、リピーターのお客様はそのまま探したほうが楽ですね。
BtoCだと当たり前なんですが、BtoBではなかなか難しいんです。リピーターのお客様はいいと思いますが、初めての場合は相談をしたいとか。
私もあえて今まではコールセンターに電話してきていただいて、1回使っていただいたら担当者をつけて、担当者が事細かにサポートするという体制をとってきました。しかし大口のリピーターのお客様と、小口のお客様がいて、ロングテールなんです。ロングテールで入口しか営業マンがフォローできてなかったんですよね。コールセンターも限界がありますので、自分たちで使えるような形にしたと。
情報DBができたら、そこに対して強く踏むところは営業コンサル的な要素を入れたり、真ん中はプラスオプション出したり、反対に自分たちで個別に探してくださいと言ったら人件費削減できたりするので。うまく変えていこうとされてるんだなっていうのを改めて拝見して思いました。
そうですね。コンサルティング型で借りたい方もいますし、クオリティよりもプライスが大事だというお客様もいます。みんなに対応するには、切り口を変えていかないとどうしようもないですね。
使っていない時間帯で変動費型の提供も開始
23年に3つの方針を出してますが、「仕入のポートフォリオ改革」と「営業のリアル・オンラインでの需要総取り」「事業開発の事業提携による付加価値を付与する」と。オンラインはさきほど話したところですし、ポートフォリオの仕入れ改革も話しましたが、事業提携付加価値を増やすところは、具体的にはどういうことを模索されてるのですか。
今はスペースを使いたい人にそのままスペースを貸してますが、それは
スペース貸し会議室の料金を払っても、ビジネスで利益を出せる会社なんですね。ですが、固定費ではなく変動費で提携できたら、うまくいかなかったら家賃払わなくて済む、うまくいったら収入が入って家賃も払えるといった方々を取り込むことができればと思いました。
やっぱりスペースをもっと利用したい方はいると思うんですよね。
今までまだ成功するかわからないからと地団太踏んでるようないい事業、いいコンテンツを放置するのはもったいないと思いまして。もっと青田買いというか、まだこれがどうなるかわからないところでTKPと組んで一緒にやっていったらどうだろうかと。
YouTuberさんのニーズも結構あるんですよ。有名な人は儲かるからTKPの会議室を固定費で家賃払ってくれますが、これからの人たちは入ったら払うと。そういう方々にもチャンスを与えられたらいいなと。会議室は使ってない時間帯に使ってもらうんですよね。普段の時間は企業様に使っていただいて、土日や夜、朝などの時間帯はご自由に使って成果があったらお金ちょうだいねと。
0円ですもんね。だからいろんな収益モデルがあるってことですね。
本当ですね。最後に1つ、仮に直近またパンデミックが起こって同じようなことを2年繰り返すとなったら、どう経営を切り盛りされていくつもりですか。
命に関わるようなパンデミックが起きたら全部止めて冬眠するしかないですが、どんどん耐性がついているので、少々の流行だと多分もう大丈夫じゃないですかね。
それで止めずに経済を回していくっていうのはもう誰もが分かってるので。
そうですね、そういうことがあったらやっぱり私もいろいろ働きかけて、経済を正常化するように必死に動くんじゃないですかね。
そうですよね、そこしかないですよね。今日はありがとうございました。すごく学びがありました。
まとめ
今後もSaaSについてのお役立ち情報とかを配信していきますので、チャンネル登録と高評価をよろしくお願いします。ご視聴いただきありがとうございました。
働き方改革サミット2022 コロナ禍における構造改革 Day1 アーカイブ
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