登壇者プロフィール
伊藤 宜範(いとう よしのり) 氏
絆ホールディングス株式会社 代表取締役
早稲田大学中退後、2000年に株式会社流通ドットコム(現流通コミュニケーションズ)に参画。 通信サービスインフラの販売代理店業を主体とした会社で代表取締役として、売上高12億円を大きく牽引。 その後、2008年に自らが株主として株式会社絆コンサルティング創業、代表取締役就任。
鈴木 章裕(すずき あきひろ) 氏
株式会社コミクス 代表取締役
1969年、大阪府生まれ。甲南大学法学部を卒業後、広告代理店の営業部長を経て、2000年にインターネット広告を手掛けるアイブリッジ株式会社へ入社。
2007年9月、アイブリッジ株式会社、アドデジタル株式会社、アカラ株式会社、ブランド総合研究所という4つの会社を束ねるグループ会社へと成長した同社の社長を辞し、株式会社コミクスを設立し、代表取締役社長に就任。
絆ホールディングス株式会社の紹介とコロナ禍の働き方
絆ホールディングス代表取締役社長伊藤様にお越しいただきました。伊藤さん、よろしくお願いします。自己紹介を簡単にお願いしてもよろしいでしょうか。
絆ホールディングス代表取締役と、子会社の代表も何社か兼任しております。弊社はセールスを軸にしている会社で、個人向けから大手法人向けまで幅広い領域で営業を行っている会社になります。
グループとして7社・13事業を展開されていますが、絆ホールディングスの強みは何でしょうか。
とにかくセールス力です。個の営業力と、営業組織力、この2つを高めることが最大の強みです。
ですよね。色々な経営者の代表から、絆ホールディングスの営業力が強いと聞いています。コロナ禍でどのような変化が起き、どの事業が伸びていますか。
まずコロナ禍でも絆ホールディングス社はそこまで働き方を変えていません。一部、在宅勤務は始めましたが、営業面はやはり対面でやりたかったので、基本的には管理面も含め会社に来ていただきました。その中で伸びた事業は、在宅率が上がった点と家で商談が増えている点から、個人向けのインターネット回線です。あとは、大手さんが店舗を運営できないところでECの販売を伸ばしていて、私のPR事業もかなり伸びました。
活躍する人材を引き抜くための独自の採用手法
採用手法にすごく強みと特徴があるとお伺いしています。
8年前ぐらいから、右も左もわからないまま新卒採用を始めました。その中で企業は「キラキラな仕事をしています」「会社みんな仲がいいです」「将来○○を目指します」など良い面ばかりをみせると思います。弊社も当初は、インターネット回線の事業しかなく、その中でキラキラ見せるために少し盛っていました。その結果、魔法が解けたときにギャップが生まれていました。
さらに、絆ホールディングス社は企業向けのコンサルを集めていましたが、学生と弊社のコンサルの目線は違いました。
学生からすると、
コンサルはかっこいい仕事で、キラキラしていて大手さんと一緒に仕事ができるといったイメージがありました。でもこれは
絆ホールディングス社がやっている事業とは異なるため、入社した学生も結局辞めてしまいます。また、形から入る人間ばかりが集まってしまいました。
そこで、事業ではなく、会社の理念や絆ホールディングス社が社員に何をしてあげられるかや、どのような人物になって欲しいかを中心にした採用を実施することに決めました。説明会では僕が1時間ぐらい毎回話をしますが、基本的に事業内容には触れません。会社の経営理念からなぜこの経営理念になったか、そして学生に働く意義を伝え、それが自分の人生のためだよねという話の流れに持っていきます。絆ホールディングス社の経営理念は、社員の夢を実現する会社としています。でもこれは僕が叶えるものでも、会社が叶えるものでもないです。結局自分で掴み取るものだから、絆ホールディングス社はその制度を用意することを話します。
さらに他社と違う点として、人事制度についても細かく説明します。具体的には、等級・インセンティブ・ボーナスの支給です。さらに、お給料の変動に関してもはっきり言います。そのため、入社意欲が低い人には次の選考に進んでもらいません。反対に、絆ホールディングス社で頑張りたい人たちを選考に進めるやり方に変えています。だから、入社後のギャップがほとんど生まれません。
それは素晴らしいです。入社後のギャップがあると、教育面で既存社員が疲弊しますよね。
これが、まず1つ行っていることです。しかし、入社意欲を中心にした採用を何年かやり続け失敗したことがありました。モチベーションは高いけれども、営業に出したときに上手く営業ができないタイプの人材が集まってしまったんです。
この問題を解決するために、最終面接で模擬営業を行うことしました。
僕らは、まず最終面接時にカードを4枚渡します。その中から、学生に1枚選んでもらい、30分の考える時間を与え、最終的に社長に向けて直接営業をしてもらいます。条件は、サラリーマンで年収300万円ぐらいの人に対し、会社の利益が残るように自由に商品設計をして営業しなさい。といった形です。
何も書いていないです、基本的には、無形のものしか入れていません。例えば、空気、水、自分の1日などです。
自由な発想で、本人の営業適正能力が見えてくるわけですね。
僕らが見ているのは3つです。1つ目が、「人間力」です。単純に「人懐っこいな、この子可愛いな、この子だったら申し込んじゃうな」と、思えるかどうかです。
主に
挨拶・自己紹介・アイスブレイクの持っていき方を見ています。
2つ目は、
「提案力」です。僕にどれだけ想像させる力があるかや、学生が考えた即席の商品案を純粋に取り入れてみたいかです。
3つ目が、
「提案内容」です。要するに商品設計を通し、地頭力を見ています。
この3つを中心に見ています。そして、学生に対してプレッシャーもかけます。「君から買う理由はあるの?」など質問をした時にどのような反応をするかを見ています。これを見ると、入社後の営業成績も感覚でわかります。
だからこそ、僕らは大学の学歴を一切見ないで、やる気を持ち、面接で僕が魅力的と感じた人を採用しています。
一応見ますけども、正直大学って推薦でも入れますよね。なのであまり学歴は信用せずに、発想力や人間性、提案の想像する力を見ています。これがまず採用で行っていることです。
未来を見据えた教育体制
次に僕がやっていることは、「教育」です。新卒が入社すると、僕が直接2週間に渡り、1日1~2時間の教育をします。
前半5日間、後半5日間ですね。何をやるかは、毎年決まっています。
1つ目が、「社員の夢を実現できる会社」を経営理念に掲げていますから、社員全員に夢を設定してもらいます。その夢をより具体的に設定してもらいます。例えば「将来、車を買いたいな。」これは僕がダメ出しをします。
どのような車をいつまでに買うのかみたいなことですよね。
いつ、どんな車のグレードか、新車なのか中古なのか、何のために必要なのかまで説明をさせます。
そして、自分の人生の中で「本当にこれがなかったら人生が終わりだよね。」という目標設定もさせます。これらを1日目に実施します。
そうです。2日目は、
設定した目標の値段を細かく調べさせます。今はインターネットで便利に調べられるので、
「自分の人生で最低でもかかる生活費」と、「夢を達成するための金額」を載せてもらいます。
その結果、いつまでにどれだけの年収でなければならないかまで逆算できます。これを2日目にやります。
3日目は、2日目で逆算した年収に、税金を含めた計算も行ってもらいます。ここで、弊社で年収をいくら稼ぐ必要があるのかを認識させます。そして、4日目に人事制度をやります。3日目で計算した年収になるために、どのランク、どういうインセンティブをとる必要があるかを調べてもらいます。
最終日には、1日目から4日目で実施したことをもとに、目標年収・役職、インセンティブをとるためには、日・月・クオーターで何件とる必要があるのかまで計算させます。
そうすると、「この1日の目標を達成すると、夢に近付いているんだ」と、知ることができます。そして、最終日にノートを渡し、これらを全てまとめてもらう作業をします。
素晴らしい。そのノートを何度も見返すと、「夢を実現するために日々頑張っているんだ」と、振り返られるようになるわけですね。
それよりも、気持ちが弱い子に向けてやっています。上司がノートの話をし、「夢を諦めるの?自分の人生だからいいけど」と振り返りをさせています。設定した夢よりも上に行く子もいます。それは、自分で努力ができる子なので、努力ができない子をフォローする感じになります。
僕らは2週目に営業のフロント研修を行います。これは、人間力をどう磨くかです。
僕らはファースト商材として、人間力だけで売れる商材を扱います。例えば、電気の割引サービスを取り扱っていますが、これは基本的にお客さんがお金を追加で払うものではないですよね。
昨今の事情もありまして、電気代も大して安くはならないんですよ。1%ぐらいしか変わらないかもしれないです。
それよりも、お客さんからすればやる理由はほとんどありません。
例えば、今日初めて会い、東電から知らない電気会社にハンコを押すのは、相当ハードルが高いはずですよね。
しかし、僕らの営業の子たちは、6割か7割もハンコを貰ってきます。何をしているのかというと、最終的には人で売っています。「お兄ちゃんがそこまで言うのであれば、もう信じます」とか。
「お姉ちゃんが頑張っている姿を見て、私の娘が重なったから、お姉ちゃんのためにやってみる」とか「今日はもう頑張ったからなんか食べていきな」などといった感じです。だから、モノよりも人を売っています。
その中で、重要なのは「人間力」です。もちろん難しいサービスになると、提案力も必要だと思います。
特に大手企業だと、人間力ではカバーしきれない部分があると思います。僕らは初めのステップの焦点を、オーナーさん個人の好き嫌いで判断できます。これは営業の基礎だと思っており、嫌いな人からは申し込まないですよね。
これも深掘りして良いですか。人間力を大事にしていますが、担当が変わった場合はどう対応していますか。
「○○さんが良かったのに、変わるの」みたいな感じです。
僕らは取り切り商材なので、基本的には持ち帰らない即決営業をしています。だから、担当は変わらないです。
ただし、テレアポをしていますので、ここからは担当が変わります。
訪問をした人がフォローには入りますが、基本的にその場で即決します。
バックヤードの人事評価は基本的に全て定量評価
人事評価制度の話が何度か出てきましたが、バックヤードの人事評価はどのようにされているのですか。
バックヤードの人事評価は、基本的に全部定量評価をしています。A職と、B職と、C職があると、その中にグレード性がAグレード、Lグレード、Pグレード、Mグレードとあります。
定性評価をすると、上司の基準になってしまうので、僕らは全部数字で表せる定量法でバックヤードをします。
全部数値化するのですね。納品するスピードと正確性といったことですか。
個で設定するものと部門で設定するものに対し、〇×で何点入ってきたかを示すので、0:100です。曖昧な2点や、3点は付けず、5点か0点といった形です。
例えばグループの長は、グループ全体の数字で評価するのですか。それとも、個人にも反映されますか。
セールス側は営業利益で見ており、バックヤード側は同じく長としての設定をします。
なるほど、バックヤード側には工夫が必要そうですね。
僕らはバックヤードよりもセールスが明らかに多いです。8割セールスですから。
ストーリー性のある営業こそが心を掴む
人間力の研修では、挨拶・自己紹介・アイスブレイクを徹底的に行います。この3つでほとんどが決まると思っています。
それで、挨拶は減点方式だと思っています。適当な挨拶をする人は初めから信用がなくなりますよね。きちんとした挨拶であれば、加点はなくても、話は聞こうと思いますよね。
だから、必要以上に元気良く頭を下げてはっきりと話しなさいと言いますね。
2日目は、自己紹介です。自己紹介は「私、誰々です!」といった話ではなく、相手を引き込むストーリーを作ることです。
要するに、お客さんは応援をしたいから、あなたを信用したいから、申し込んでくれます。ただこれは、自分のことを知ってもらえなかったら絶対に応援・信用をしてもらえません。
「私、頑張っているから」という、ストーリーをわかってもらえないとですよね。
例えば、出身地や頑張ってきたスポーツ、今までの苦労話、あるいは「今年新卒なのでまだまだひよっこです。」これらに相手は引き込まれます。
みなさん絶対に新卒の経験があり、逆に好感を持てるので、新卒であることを恥ずかしがらずにこれらをフロントで話しなさい。とレクチャーをしています。
自分の過去をやはり照らし合わせますよね。自分なりのストーリーを作りなさい、これが2つ目です。
ストーリーの中で、自慢ばかりをされるとイラッとしませんか。
そうなんですよ、自慢は基本的に言うなとかです。
僕は一生懸命なストーリーが、1番人の心に響くと思っています。オリンピックは、出場選手は皆さんには関係がないじゃないですか。その瞬間に知った選手もいますよね。でも、何故かその人の頑張っている姿を見て、感動して応援したくなりますよね。
これは、多分オリンピックまでの期間に一生懸命練習に取り組んできたことが想像できるからです。人は、自然と一生懸命な人の姿を応援したくなるんですよ。
自分も一生懸命頑張った時は、絶対誰にでもありますからね。
だから、応援したくなるようなストーリーを作りなさいと言っています。
「何々で1位になりました」とか「何々で優秀な成績を取って何々に出ました」みたいなことはいけないですよね。
それよりも、母子家庭だった話や親元を離れ全寮制で頑張ってきたこと、野球部の補欠でも頑張ってきたことの方が響きますよね。これらを武器にしなさいと言っています。
それで、相手に自分のことをよく知ってもらい、応援してもらうくらいの自己紹介をするのが2日目です。
3つ目はアイスブレイクです。アイスブレイクでお天気の話をするのではなく「素敵なお店ですね。」や「前から来てみたかったお店なんですよね。」など、相手が喜ぶ話をして褒めます。応援したい人から褒められたら断れなくないですか。
それはそうですよね。褒められているのに、怒る人はいないですよね。
だからストーリーが作成できるだけで、成約率は一気に上がります。
人のストーリーをそのまま覚えてしまい、自分の言葉ではないから忘れてしまうことですよね。
言霊が乗っかっていないので、伝わらないんですよ。でも、本気で自分が考えて思ったストーリーは相手にも刺さるし、何より相手からも感動を引き出せるんですね。
僕はたまに結婚式の祝電をやりますが、初めは緊張してしまい、インターネットに載っている文章を少し変えて喋っていました。しかしながら、大体話すことを決め、その場で相手に対して思ったことをぶつけた方が絶対伝わると思いました。
このように変えてから「良かったです、スピーチ。」と言われるようになったので、結局言葉って力だと思っています。やはり自分の頭で考えたオリジナルなストーリーを作っていかないと、営業もダメだと思っていますので、その研修をしています。
それこそSaaS事業者とたくさん取引をしていますが、セールストークを覚えてMAツール使用し、自分の言葉ではないことを話してサービスの説明ばかりをする営業担当が増えています。
だから、僕は覚えただけの文章を話してくれる人が増えると、僕らの価値が上がると思っています。
逆にこのような世の中になってくれてありがとう。という感じです。
多くの人がこれを見ますが、ここまで大事なことを話しても大丈夫ですか。
でも、真似できないと思います。本気でこれをやるかやらないかなので。
そうですよね。聞くのは簡単ですが、実践するにはすごい労力がかかるし、大変ですもんね。結局は、やり切ることが大事ですもんね。
これも僕が色々な人から聞いた中で、考えを全部真似しないで自分の中の解釈で作ってきたものなので、単純にコピーは絶対に無理だと思っています。
納得感のある人事評価制度
色々と参考にしながら、ずっと変えてきているんですよね。
変わっていますね。インセンティブではなく、固定給を上げた方が良いのではないかと今も悩んでます。
悩みますよね。僕は16年くらいやってきて7・8回くらい制度を変えてきていますが、ずっと答えが見つかりません。
弊社では、クォーターごとに上振れインセンティブがあります。予算を超えた分の10〜15%が吐き出されるんですよ、結構でかいですよね。これで100万とかを取れます。これが計算できると美味しいなと思います。でもこの計算すらわからない子からすると、次のクオーターに給料を10万上げてしまった方がいいのかなと思います。わかりやすいじゃないですか。これができたら10万が上がるとか。
トッププレイヤーたちが稼いだら減るので、僕は基本的に人事制度も組織の作り方も、全部答えがないと思っています。正解の組織は、僕にはないと思っています。
それこそ国もそうですよね。北朝鮮やロシアを僕らはダメですよとか言いますけど、向こうからするとそれが当たり前で、それが国家として成り立っているわけですよ。企業も多分色々あると思います。
究極の人事評価は、もしかすると個で変えていった方がいいのかもしれないですね。
個もそうですけど、僕は人事評価は文化を作っていくものだと思っているので、だからそこも含めて真似ができないなと思います。
その評価制度が、会社のメッセージ性にもなりますよね。
今の時代で組織はなにに注力していくべきか
最後に、見えにくい時代と言われる中で、伊藤さんはこの時代に何に注力をしていればいいとお考えかをお伺いしたいなと思っています。
冒頭からセールスと言っていますが、セールス力を高めることが、どんな時代でも希少化しているからこそ生き抜く力になると思っています。昔からですが、やはりセールスが強い会社は大きくなりますよね。
良いモノを作ってもマーケットができない、セールスができない、これは多分世の中に埋もれます。
キーエンス社もリクルート社もサイバーエージェント社も、みんなセールス論でありますもんね。
どんな時代でも売るものは出てくると思っていますので、僕らはもうマーケットではなく、セールスの方に組織力や、個の営業力を高めるところに注力していきたいです。だからこそ、しっかりと基盤を固めていけば、それほどリスクはないかなと思います。
まとめ
今後もSaaSについてのお役立ち情報とかを配信していきますので、チャンネル登録と高評価をよろしくお願いします。ご視聴いただきありがとうございました。
働き方改革サミット2022 社員が生き生きと働ける環境改革 Day2 アーカイブ
YouTube:https://youtu.be/dexueBC6MjA?t=6161
【SNSフォローのお願い】
kyozonは日常のビジネスをスマートにする情報を毎日お届けしています。
今回の記事が「役に立った!」という方はtwitterとfacebookもフォローいただければ幸いです。
twitter:https://twitter.com/kyozon_comix
facebook:https://www.facebook.com/kyozon.comix