シナジーとは?
企業同士の業務提携や経営統合での会見やニュースなどで用いられる言葉として「シナジー」を聞いたことがある人も多いでしょう。また、会議やプレゼンの場でも使用される言葉でもあります。
本来「シナジー」とは、薬学や生理学などの生物学分野においての専門用語として使用されている言葉でした。しかし、「ものや事柄、人などが複数存在することで、お互いが作用し合い、効果や機能を高める」という意味でもあることからビジネスシーンにおいても活用されるようになりました。また、ビジネスシーンでは「相乗作用」を意味する言葉としても用いられています。
- シナジーとついになるアナジーについて
- シナジーを生み出す方法
上記について詳しく解説していきますので、ぜひご覧ください。
シナジーと対になるアナジーとは?
シナジーとは、「共同作用」「相乗効果」という意味に対して、事業間の相互マイナス効果のことを「アナジー」と呼んでいます。例として、M&Aにおけるアナジー効果が以下となります。
- 既存事業との方向性があまりに違いすぎる
- 経営者同士の思想の相違
- 経営統合によるコストが想定外だった場合
- M&A後に企業において重要な役割である人材がやめてしまう
- M&Aを機会に最重要顧客との契約が打ち切られる
- M&Aを機会に経営者のモチベーションが下がる
そもそも、「共同作用」や「相乗効果」を求めてとった行動がうまくいかなかった場合に、アナジー効果と表現されます。シナジー効果とアナジー効果は真逆の意味でありながら、スタートラインは同じ場所であることを理解しておきましょう。
シナジーを生み出す方法は?
シナジー効果を生み出すには、意味でもあるように「共同作業」として他の部署との協力や他の企業と合同で事業を行うことが重要であるとされるでしょう。具体的な方法として、以下の3つを紹介します。
- 業務提携
- M&A
- グループ一体経営
方法1:業務提携
業務提携とは、自社と異なる商品やサービス、技術をもつ企業同士がチームとなり業務を行う方法です。お互いの強みを活かし合うだけでなく、弱みを補い合えることからも企業価値が高まる効果が期待されるでしょう。それによりシナジー効果を得られることができます。
例えば、家電に関する知識が豊富な「ビッグカメラ」とファッションにおいて有名企業でもある「UNIQLO」が『ファッションと家電で培った両社のノウハウを重ねて、さまざまな人に喜びと驚きを提供する新しいタイプの店舗を提案する』を目的として業務提携を行なったことで話題となりました。
方法2:M&A
M&Aは「Mergers and Acquisitions」の略であり、企業における「合併」と「買収」の総称です。M&Aの一種でもあり、よく聞くのが吸収合併です。合併に関しては以下の2種類があります。
- 吸収合併:吸収する方を「存続会社」される方を「消滅会社」とする
- 新設合併:新しく会社を設立し、各企業の資産全てを継承する
合併を行うことで、吸収される方の法人格は消滅してしまいます。主な目的は組織再編であり、シナジー効果を狙うことができます。しかし、消滅会社の社員のケアなども必要なことからコストの負担も大きくなる場合があるでしょう。
続いて、買収の3つの種類について紹介します。合併と買収の違いは、法人格が消滅するかしないかです。
- 株式譲渡:相手企業の全株式を譲り受け、経営権を取得する
- 事業譲渡:一部の事業のみを買い取る方法
- 会社分割:相手の事業の一部を切り出し、新会社の設立か別会社に吸収する
シナジー効果を狙うなら、M&Aは近道であると言われていますが、相手との合意については慎重に行うことが重要です。
方法3:グループ一体経営
グループ一体経営とは、金融業界に多くみられる方法であり、巨大グループ内で顧客を共有する企業において事業の統合を行うことを指します。
スケールメリットや業務の統一を行うことでコスト削減といったシナジー効果が期待されるでしょう。グループ経営を成功させるには、以下の内容が重要であると言われています。
- 明確なビジョンを持つ
- グループ全体の可視化
- 定期的なガバナンスの強化や見直し
- 業務効率化
- 細かいデータ分析
- 人材確保・育成・的確な配置
- 働きやすい環境づくり
シナジーの種類は?
シナジー効果を生み出す方法を前述で紹介しましたが、そもそもビジネスにおいてのシナジー効果にはどのような種類があるのでしょうか。大きく分けて3種類あり、以下でそれぞれ詳しく解説していきます。
- 事業シナジー
- 組織シナジー
- 財務シナジー
種類1:事業シナジー
事業の推進に関わることでシナジー効果を得ることであり、以下の項目によって付加価値が高まることが期待されるでしょう。
- 売り上げの増加
- スケールメリット
- ノウハウの統合
- コスト削減
- 人材の獲得
種類2:組織シナジー
組織に関する以下の観点からシナジー効果を得ることです。
- チームなどアイデアを出し合うことによる生産性の向上
- 部署の統合などでの業務の効率化
- 職場環境の改善などから従業員のモチベーションの向上
この中でも、従業員のモチベーションの向上は、企業にとって重要な課題であると言えるでしょう。以下の記事『モチベーションとは?モチベーションが下がる理由と上げる方法を徹底解説します!』では、モチベーションについて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
種類3:財務シナジー
お金や税金に関するもので生まれるシナジー効果です。例として2つが挙げられます。
- 合併を行ったことで余剰資金が有効活用できるようになる
- 税控除やグループ法人税を使用して節税の効果を得る
シナジーに期待できる効果は?
シナジーの種類について説明しましたが、ではシナジーにできる効果はどのようなものがあるのでしょうか。以下の2つの点について徹底的に解説していきます。
- 事業のコストカット
- ノウハウ・知識の共有
効果1:事業のコストカット
複数の企業が提携することで、各事業において重複している部分が見えてくるでしょう。重複している部分に置いて、見直しや削減することが可能となりますので、コストカットへとつながります。さらに、業務の効率化や時間の節約に対しても、シナジー効果が期待されるでしょう。
また投資したインフラや、研究開発を共同で行うことでもコストダウンの効果が期待されるでしょう。各企業に対して、投資に関しての役割を細かく決めておくことで、投資においての重複を防ぐことができます。
効果2:ノウハウ・知識の共有
それぞれの企業が持つノウハウや知識の共有もシナジー効果であると言えます。新商品や新サービスの開発に役立つだけでなく、組織マネジメントの強化も期待できます。
シナジー効果を狙った企業の成功事例3選!
ここまで、シナジー効果について生み出す方法や種類、効果について説明してきましたが、いまいちどう自社に取り込めばいいのか迷う方も少なくないでしょう。ここからは、シナジー効果を狙った企業の成功事例を詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
- トヨタ自動車・スズキ
- 大正製薬・ドクタープログラム
- LIXILグループ
業務提携 | トヨタ自動車・スズキ
事業提携でのシナジー効果を狙った企業の事例として紹介するのが、トヨタ自動車とスズキです。2017年から2社の業務提携に向けた検討が行われ、2018年に資本提携が発表されました。
以下の3点においてシナジー効果を狙っての事業提携であるとされていますので、紹介していきます。
- トヨタ自動車の電動技術とスズキの小型車技術を組み合わせることにより、さらに競争力のある製品開発を目指す
- スズキがもつ、インドでの圧倒的な市場シェアの共有
- 部品などの調達を共有化したことによるコストダウン
長期的な提携関係の構築や推進を目的としており、それに伴い相互に株式を取得しました。狙いとしては、自動運転分野などにおける「自動車業界の100年に1度の大変革期」を乗り越えていくためにも、自動車産業におけるさまざまな課題の解決や、お互いの持続的な成長の実現となります。
M&A | 大正製薬・ドクタープログラム
M&Aによるシナジー効果を狙った事例として、大正製薬によるドクタープログラムの買収を紹介します。
- ドクタープログラムがもつ特徴の通販事業と大正製薬の既存事業を組み合わせることで、新規の販売ルートの開拓やシェアの拡大を図る
- 化粧品メーカーであるドクタープログラムを買収することで、大正製薬のブランド戦略やノウハウを活かし、迅速にスキンケア領域において拡張していく
2016年に大正製薬がドクタープログラムを全株式取得によって買収を行い、完全子会社化するだけでなく、事業資産や全従業員を継承しました。
ドクタープログラムは、機能性基礎化粧品「トリニティーライン」の開発および販売を行う化粧品メーカーであり、そのノウハウや知識と、大正製薬の強みであるブランド戦略に関するノウハウを掛け合わせることで、より多くのシナジー効果を得ることができたでしょう。
グループ一体経営 | LIXILグループ
LIXILグループは、グループ一体経営においてシナジー効果を狙ったとされており、2012年に子会社105社の会計システムの統合を行いました。
このグループ一体経営で、以下の2点からシナジー効果を狙ったとされています。
- 会計システムの統合により会計部門の共通化を推進
- 各社の業績がリアルタイムで把握できることから素早い経営判断が可能
もともとは、住宅設備機器や建築材料など5つの大手企業が統合し、多数のM&Aを経た経験から、各社で異なる会計システムを用いていました。しかし、会計におけるほとんどの作業が各社で共通していることから、会計システムの統合へと踏み切ったとされています。
また、グループ一体経営を行うことで、グローバル展開に対するスピードアップも目的とされていました。
まとめ
提携や合併でのシナジー効果を生み出すことを目的とした場合、お互いの得意分野を組み合わせた時に効果的であるかを検証しておくことが大切です。そのためにも、自社の強みや弱みを把握したり、相手企業の得意分野などに対しても分析することが重要であると言えるでしょう。
前述にもある、スタートラインが同じだが結果によって「シナジー効果」と「アナジー効果」となるという点からも、慎重に検討していきましょう。
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