価値観の多様化が進むミレニアル世代・Z世代
――少子高齢化が進む日本では慢性的な人材不足が問題となっていますが、特に若手人材の採用に苦戦している企業が多いと耳にしました。ミレニアル世代やZ世代など、価値観が多様化している現代の若手は、就職活動や転職活動の際にはどのようなポイントを重視しているのでしょうか?
<三嶋氏>
新卒採用でもキャリア採用でも、求職者の価値観が多様化していることは大きな変化です。
私は前職で長年キャリアアドバイザーとして転職支援をしてきた中で、多くの退職理由が「給料」もしくは「人間関係」であることに気づきました。そのため転職活動の際には、年収や福利厚生だけでなく「どんな社風か」「どんな人が働いているのか」「どんなオフィスで働いているのか」など、企業の『中身』を知りたいという方が増えています。
――確かに企業の『中身』を知らずに入社すると、入社後に「やっぱり合わない」となってしまい退職につながりますよね。つまり「入社後のミスマッチを防いで、長く働きたい」と思っている求職者が増えているのでしょうか?
<三嶋氏>
入社後のネガティブなミスマッチで退職する方も少なくありません。その一方で、入社後に「この会社、意外とすてきだな。迷ったけれど入社してよかった」という方も多いんです。
このポジティブなミスマッチがあるということは、企業の良さを求職者に伝えきれていない可能性があるということですよね。その良さをアピールできれば、若手採用の機会損失を防ぐことができます。
企業と求職者のミスマッチを減らすためには
――とはいえ、社風や社員の特徴などはテキストでは伝わりにくいと思うのですが…。企業はどのようなアプローチをすべきか悩んでいるのではないでしょうか?
<三嶋氏>
その通りです。
だからこそ、近年は採用動画でアピールする企業が増加しています。社員へのインタビューやオフィス紹介などの動画なら、テキストでは伝わらない情報も視覚的に訴求できます。
その企業のカルチャーや、働いている人の人柄を具体的にイメージできるため、入社後のギャップを事前に埋められるのです。
――動画での訴求は、他にも効果がありますか?
<三嶋氏>
親近感がわくので、求職者の応募を促す効果があります。
採用ってどうしても堅苦しいイメージがあるので求職者も緊張してしまいますが、動画で親近感をアピールできれば「ちょっと話を聞いてみようかな」という気持ちになるようです。
また、他企業との差別化にもなりますね。
現代はビジネスモデルも多様化しています。同業種だけでなく、類似している業種や代替できる業種も登場している時代です。
そんな中で、優秀な若手人材を他社に取られないようにするためには、自社独自のアピールが必要。動画は、自社のリアルを伝えられるため、自社にしかない強みや独自性をアピールするには最適なんです。
――なるほど。近年は、ハローワークや転職エージェントだけでなくインターネット上での採用活動も盛んなので、親和性も高そうですね。
<三嶋氏>
まさにその通りで、現代は多くの採用チャネルがあり、求職者とさまざまなチャネルで接点を持つことができるようになっています。
以前は「求人サイト」「人材紹介」が主流でした。今は、リファラル採用や採用イベント、ダイレクトリクルーティングなども多く活用されています。採用専用のコーポレートサイトを作っている企業も多いですね。
そして無視できないのが、動画とSNSです。
令和2年度の調査によると、20代・30代は休日を「SNS」「動画」で多くの時間を使っていることがわかっています。※
この調査結果は採用に限った話ではないのですが、SNSと動画を採用チャネルとして使えば、多くの求職者にリーチできるということを示していると思います。
※令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書|総務省情報通信政策研究所
7ページ
――確かに最近は、TilTokやInstagramリールのようなショート動画のSNSの利用率が高いですよね。短尺動画なら気軽に視聴できるので、他のジャンルの動画を見ている中で「おすすめ」に採用動画が出てきても、「見てみようかな」と思ってもらえそうですね。
<三嶋氏>
そうなんです。5分以上の動画だと、視聴するのをためらってしまうことが珍しくありません。
でも30秒ほどの動画なら「このくらいの時間なら見ても良いかな」という心理になりますよね。
また、30秒ほどの短尺動画なら次々に視聴できるので、複数本数を見てもらうこともできます。実際、当社の調査では、求職者は平均して4本ほどの動画を視聴していることがわかっています。
――その4本の中で「社風」「社員」「ビジネスモデル」「オフィス風景」など異なるテーマで訴求できれば、視聴した求職者はその企業について充分に知ることができますね。
<三嶋氏>
さまざまなテーマの動画を用意しておくと、いろいろな角度から自社について訴求できる点がメリットですね。
求職者によって「社風を知りたい」「社長はどんな人?」など知りたい情報が違うので、それぞれのニーズを満たすことができます。
また、動画を作っておけば、既存の採用チャネルをより強化することも可能です。
先ほど述べた通り、採用専用サイトやSNSなど採用チャネルが多様化している中で、それらをうまく活用できていない企業も少なくありません。しかし、動画を埋め込むことで採用コンテンツが充実するので、それぞれの採用チャネルを強化できます。
30秒の動画があるだけで、採用活動を大きく変えることができるんです。
気軽に採用動画を制作できない企業に向けて「moovy+」が誕生
――しかしながら、企業はこうした動画を制作できるスキルやリソースがない場合がほとんどだと思います。そこで、御社の「moovy+」のような動画制作サービスが役立つのですね。
<三嶋氏>
当社の「moovy+」は、30秒の縦長動画に特化した動画制作サービスです。動画の撮影や制作だけでなく、企画やBGM挿入、テロップ挿入やサムネイル画像作成なども含まれています。
Webサイトに一行のコードを埋め込むだけで動画が表示されるようにできますし、個別URLも発行できます。
――個別URLは、メールに貼り付けて送るのでしょうか?
<三嶋氏>
それだけではなくて、SNSや求人サイトのメッセージなどでURLをご案内している企業も多いですね。
たとえばスカウトをする際に動画のURLを貼り付けておけば、テキストだけでは難しい自社のアピールができます。
また、選考結果を動画でお送りしている企業も多いです。
良い人材が応募してくれても選考途中に辞退してしまうことに課題を抱えているお客様がいたのですが、選考結果と次の選考の案内を動画で送るようになり、昨対比1.6倍を記録したことは大きな成果だと思います。
――選考プロセスに1つの動画を追加するだけでも、それほど違いが現れるんですね。
<三嶋氏>
合格者だけでなく、お見送りになった方にも動画をお送りしている企業もいらっしゃるほどです。
企業としては真剣に考えて苦渋の決断をしたものの、お見送りになった求職者にはそれがいまいち伝わらないことも珍しくありません。それが原因で、企業に対してマイナスイメージを抱いてしまうこともあるでしょう。
しかし、テキストではなく動画を使って、真剣に考えたことや、その方の将来を応援していることを発信できれば、相手にもきっと伝わるはずです。
――相手に誠意を伝えるためにも、動画が役立つのですね。実際、動画で応募数が増えているという声も多いのでしょうか?
<三嶋氏>
当社のお客様のうち、採用動画を取り入れたことで以下の効果があったという声がありました。
- 応募者の4分の3が採用動画を視聴していた
- スカウトメールに動画を入れるようになったら返信率が上がった
「moovy+」は10本から発注可能なので、さまざまな切り口の動画を用意しておくことで、求職者の応募を促す効果があります。
オーソドックスな「社員インタビュー」「社長紹介」「オフィス紹介」などのほか、最近ではアニメやテレビ番組のオマージュした採用動画など、おもしろい企画動画を作ることもあります。
そのような動画は、テイストを崩しすぎてカジュアルになりすぎると、企業の公式なメッセージが伝わりにくくなります。そのへんの塩梅が難しいのですが、「moovy+」は動画を通じて企業のメッセージや魅力を伝えることの軸はブレないようにしているので、どのようなテイストの動画でも採用と結び付けて制作することを強みとしています。
――三嶋様の採用ノウハウと動画を掛け合わせたことで、効果の高い動画制作が実現しているのですね。とはいえ、動画制作のノウハウは、採用以外にも活用できそうですね。
<三嶋様>
そうなんです。
当社は、動画とテキストがセットで表示されるシステムを開発しています。そのシステムを使うと、パソコンで視聴した際に左側に動画、右側にテキストが一画面で表示されるようになっています。
また、動画自体は30秒ですが、その30秒を70~80個のファイルに細分化しているため、サーバーの負担を軽くして読み込み速度の高速化を実現しています。
このシステムやノウハウは、採用以外の動画制作にも応用できると思っています。実際、商品紹介動画のお話もいただいているので、今度は多方面に展開したいと考えています。
――動画で商品についてアピールできれば、消費者の購買意欲を高めることもできそうですね。
今回は貴重なお話、ありがとうございました。