ハッシュタグマーケティングとは?
ハッシュタグマーケティングとは、InstagramやX(旧Twitter)、TikTokなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)において、「#(ハッシュマーク)」記号を付けたキーワード、すなわち「ハッシュタグ」を活用して行うマーケティング手法の総称です。
具体的には、自社の投稿に適切なハッシュタグを付けたり、独自のハッシュタグを用いたキャンペーンを展開したりすることで、商品やサービスの認知拡大、ブランディング、販売促進、顧客との関係構築などを目指します。
現代の消費者は、SNSのハッシュタグ検索を利用して商品や情報を探すことが一般的になっており、ハッシュタグを制することは、SNSマーケティングを成功させる上で極めて重要な要素となっています。
ハッシュタグマーケティングの仕組みと重要性
ハッシュタグの仕組みは非常にシンプルです。投稿する文章の中に「#(半角シャープ)」に続けてキーワードを入力すると、その部分が自動的にリンク化されます。ユーザーがそのハッシュタグをタップ(クリック)すると、同じハッシュタグが付けられた投稿が一覧で表示される仕組みです。これにより、ユーザーは自分の興味や関心があるトピックに関する投稿を、アカウントをフォローしているかどうかにかかわらず、効率的に見つけることができます。
この仕組みが、マーケティングにおいて非常に重要な役割を果たします。従来の広告とは異なり、企業は自社の商品やサービスに興味を持つ可能性が高い「潜在顧客」に対して、能動的に情報を届けることが可能になります。例えば、化粧品メーカーが「#新作コスメ」というハッシュタグを付けて投稿すれば、新しいコスメを探しているユーザーの目に留まりやすくなります。これは、SNS内における一種のSEO対策(検索エンジン最適化)と考えることもできるでしょう。
さらに、ユーザーが企業のオリジナルハッシュタグを付けて自発的に投稿する「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」が生まれれば、その情報は友人やフォロワーへと自然に拡散され、信頼性の高い口コミとして絶大な効果を発揮します。このように、ハッシュタグは情報を整理し、届けたい相手に的確に届け、さらには拡散させるという、現代のマーケティングに不可欠な機能を持っているのです。
企業が実践するメリットとデメリット
ハッシュタグマーケティングは多くの企業にとって強力な武器となりますが、一方で注意すべき点も存在します。メリットとデメリットを正しく理解し、戦略的に活用することが成功への鍵です。
項目 | 詳細な説明 |
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メリット |
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デメリット |
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【主要SNS別】ハッシュタグマーケティングの特徴と活用法
ハッシュタグマーケティングと一口でいっても、その効果的な活用方法はSNSプラットフォームごとに大きく異なります。各SNSのユーザー層や文化、アルゴリズムの特性を理解し、最適なアプローチを選択することが成功への鍵となります。
ここでは、国内で特に利用者の多いInstagram、X(旧Twitter)、TikTokの3つのSNSに焦点を当て、それぞれのハッシュタグ活用法を詳しく解説します。
Instagramにおけるハッシュタグ活用
Instagramは、ビジュアルコンテンツが中心のSNSであり、ユーザーが新しい情報や興味のあるコンテンツを「タグる(ハッシュタグで検索する)」文化が根付いています。そのため、ハッシュタグはユーザーに投稿を発見してもらうための最も重要な手段の一つです。
Instagramのアルゴリズムは、投稿とハッシュタグの関連性を重視しています。関連性の高いハッシュタグを付けることで、そのテーマに興味を持つユーザーの「発見タブ」やハッシュタグ検索結果に表示されやすくなり、新たなフォロワー獲得に繋がります。
以前は最大個数である30個付けることが推奨されていましたが、現在では量よりも質が重視される傾向にあります。Instagram公式も、関連性の高いハッシュタグを3〜5個程度に絞ることを推奨しており、多くても10個前後が効果的とされています。
ハッシュタグの種類 | 特徴 | 具体例 |
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ブランドハッシュタグ | 企業名や商品名、ブランドスローガンなどを使った独自のハッシュタグ。UGC(ユーザー生成コンテンツ)の創出を促す。 | #○○のある生活 #今日のコーデ |
キャンペーンハッシュタグ | 期間限定のキャンペーンやイベントで使用するハッシュタグ。参加の促進や効果測定に活用する。 | #〇〇(ブランド名)夏祭り2024 #〇〇プレゼントキャンペーン |
コミュニティハッシュタグ | 特定の趣味やライフスタイルを持つユーザーが集まるハッシュタグ。ターゲット層との繋がりを強化する。 | #カフェ巡り #猫のいる暮らし #丁寧な暮らし |
一般ハッシュタグ | 投稿内容を説明する一般的なキーワード。ビッグ・ミドル・スモールを組み合わせてリーチを最大化する。 | #パスタ(ビッグ) #トマトパスタ(ミドル) #絶品トマトパスタレシピ(スモール) |
リールやストーリーズでもハッシュタグは有効です。特にショート動画であるリールは発見タブでの露出が期待できるため、投稿内容に合ったトレンドの音源と関連性の高いハッシュタグを組み合わせることで、大きなリーチを獲得できる可能性があります。
X(旧Twitter)におけるハッシュタグ活用
X(旧Twitter)は、リアルタイム性と情報の拡散力が最大の特徴です。ハッシュタグは、今まさに話題になっていること(トレンド)を可視化し、特定のトピックに関する会話を促進する役割を担っています。
Instagramとは対照的に、Xではハッシュタグの付けすぎは敬遠される傾向にあります。投稿の可読性を損なうだけでなく、スパムと見なされる可能性もあるため、関連性の高いものを1〜2個に絞って使用するのが基本です。ハッシュタグは、ユーザーが情報を検索する目的だけでなく、投稿のカテゴリを分かりやすく示す「ラベル」のような役割も果たします。
活用シーン | 目的とポイント |
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トレンドへの参加 | 「トレンド」に表示されているハッシュタグを使い、多くのユーザーに投稿を届ける。ただし、自社の投稿内容と関連性がある場合に限る。無関係なトレンドの乱用はブランドイメージを損なうリスクがある。 |
キャンペーンの実施 | 「フォロー&リポスト(RT)」や「ハッシュタグ投稿」を条件としたキャンペーンと非常に相性が良い。独自のハッシュタグで参加者を管理し、拡散を狙う。インスタントウィンツールとの連携も効果的。 |
イベント実況 | テレビ番組、スポーツ中継、オンラインセミナーなどのイベントと連動した公式ハッシュタグを用意し、ユーザーと一緒に盛り上がりを創出する。 |
コミュニケーションの創出 | 「#〇〇について語ろう」「#教えて中の人」など、ユーザーに意見や質問を投げかけるハッシュタグを作成し、双方向のコミュニケーションを活性化させる。 |
Xのハッシュタグマーケティングでは、情報の鮮度が命です。常にトレンドを注視し、世の中の関心事と自社の情報をタイミングよく結びつける瞬発力が求められます。
TikTokにおけるハッシュタグ活用
TikTokは、強力なレコメンドアルゴリズムによってコンテンツがユーザーに届けられるショート動画プラットフォームです。ハッシュタグは、動画の内容をアルゴリズムに正しく伝え、「おすすめ」フィードに表示させるための重要なシグナルとなります。
TikTokの最大の特徴は「ハッシュタグチャレンジ」に代表される、ユーザー参加型の文化です。企業が提示したお題(特定の音源やエフェクト、ダンスなど)にユーザーがハッシュタグを付けて参加することで、UGCが爆発的に拡散され、認知度が飛躍的に向上することがあります。
また、流行の移り変わりが非常に速いため、トレンドのハッシュタグを積極的に取り入れることが不可欠です。流行っている楽曲やダンス、チャレンジに関連するハッシュタグを付けることで、多くのユーザーの目に留まる機会が増えます。
ハッシュタグの種類 | 特徴と活用法 | 具体例 |
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トレンドハッシュタグ | その時々に流行している楽曲、ダンス、エフェクト、チャレンジなど。動画の再生数を伸ばすために必須。 | #うちゅくしい #アニメ化 #CapCut |
チャレンジハッシュタグ | 企業が企画するユーザー参加型キャンペーン。UGCの創出とブランド認知拡大を目的とする。 | #〇〇チャレンジ #ポーズチャレンジ |
定番・カテゴリハッシュタグ | 動画のジャンルをアルゴリズムに伝えるためのハッシュタグ。「おすすめ」表示の精度を高める。 | #vlog #検証 #グルメ #DIY |
オリジナルハッシュタグ | ブランド名や商品名を使った独自のハッシュタグ。シリーズものの動画やブランドの世界観を伝える際に使用する。 | #〇〇(企業名)の日常 #商品名レビュー |
TikTokでは、複数のハッシュタグを組み合わせるのが一般的です。トレンドハッシュタグで広く浅くリーチしつつ、定番・カテゴリハッシュタグで興味関心の高い層に届け、オリジナルハッシュタグでブランドのファンを育成するなど、目的の異なるハッシュタグを戦略的に組み合わせることが成功のポイントです。
失敗しないハッシュタグマーケティングの始め方|3ステップで解説
ハッシュタグマーケティングを成功させるためには、やみくもに投稿を始めるのではなく、事前の戦略設計が極めて重要です。行き当たりばったりの運用では、期待する効果が得られないばかりか、時間と労力を無駄にしてしまう可能性があります。
ここでは、着実に成果へ繋げるための基本的な3つのステップを、初心者の方にも分かりやすく解説します。このステップを踏むことで、運用の方向性が明確になり、一貫性のある施策を展開できるようになります。
ステップ1|目的とターゲットを明確にする
ハッシュタグマーケティングにおける最初のステップは、「何のために(目的)」、「誰に(ターゲット)」情報を届けたいのかを具体的に定義することです。ここが曖昧なままでは、効果的なハッシュタグ選定やコンテンツ作成はできません。
まず、ハッシュタグマーケティングを通じて達成したい目的をリストアップします。目的は一つに絞る必要はありませんが、優先順位をつけておくと施策の方向性がブレにくくなります。考えられる目的には、以下のようなものがあります。
- ブランドや商品の認知度向上
- 新商品の販売促進・ECサイトへの誘導
- ユーザー参加型キャンペーンの実施とUGC(ユーザー生成コンテンツ)の創出
- 特定のイベントやセールの告知・集客
- 企業やブランドのファンコミュニティ形成
- 採用活動における企業ブランディング
次に、設定した目的に基づいて、情報を届けたいターゲットユーザーの人物像(ペルソナ)を詳細に設定します。年齢、性別、職業、居住地といったデモグラフィック情報だけでなく、ライフスタイル、価値観、興味関心、SNSの利用動向など、具体的な人物像を描くことが重要です。ターゲットが明確になることで、彼らの心に響く言葉選びや、普段彼らが使っているハッシュタグの傾向を把握しやすくなります。
ステップ2|重要業績評価指標(KGI・KPI)を設定する
目的とターゲットが定まったら、次はその施策が成功したかどうかを客観的に判断するための指標を設定します。ここで用いられるのが「KGI」と「KPI」です。
- KGI(Key Goal Indicator/重要目標達成指標):施策全体の最終的なゴールを示す指標です。「売上〇%向上」「ブランド名の検索数〇%増加」など、ビジネスの成果に直結する目標を設定します。
- KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標):KGIを達成するための中間的な指標です。日々の運用の中で追いかけるべき具体的な数値目標であり、「ハッシュタグからのリーチ数」「投稿のエンゲージメント率」「フォロワー増加数」などが該当します。
重要なのは、ステップ1で設定した「目的」とこれらの指標を論理的に結びつけることです。目的によって、重視すべきKPIは異なります。例えば、「認知度向上」が目的なら「リーチ数」や「インプレッション数」が重要なKPIとなり、「販売促進」が目的なら「プロフィールへのアクセス数」や「ウェブサイトのクリック数」が重要になります。
以下に、目的別のKGI・KPI設定例をまとめました。自社の目的に合わせて参考にしてください。
目的 | KGIの例 | KPIの例 |
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ブランド認知度向上 | ブランド名の指名検索数 20%アップ |
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販売促進 | ECサイト経由の売上 15%アップ |
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UGC創出・ファン育成 | キャンペーンハッシュタグの投稿数 1,000件 |
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これらのKPIは、各SNSが提供する公式のインサイト機能や分析ツールで測定可能なものを選びましょう。数値を設定することで、施策の効果を定量的に評価し、次の改善アクションに繋げることができます。
ステップ3|投稿するハッシュタグのルールを決める
最後に、チーム全体で一貫した運用を行うための「ハッシュタグのルール(運用ガイドライン)」を策定します。担当者が複数人いる場合や、将来的に担当者が変わる可能性を考慮すると、ルールを明文化しておくことは非常に重要です。これにより、投稿の品質を担保し、ブランドイメージの毀損を防ぎます。
決めておくべきルールの項目は以下の通りです。
- 使用するハッシュタグの種類と個数
ブランド名や商品名を使った「オリジナルハッシュタグ」、キャンペーン用の「キャンペーンハッシュタグ」、そして投稿内容に関連する一般的な「キーワードハッシュタグ」をどのように組み合わせるかを決めます。また、X(旧Twitter)では2〜3個、Instagramでは5〜15個など、各SNSの特性に合わせた推奨個数の目安も定めておくと良いでしょう。 - ハッシュタグの選定方法
誰が、どのような手順で投稿ごとのハッシュタグを選定するのかを決めます。ツールを使うのか、競合を参考にするのか、トレンドをどのように取り入れるのかといったプロセスを明確にします。 - 投稿内容との関連性チェック
投稿内容と関連性の低い人気ハッシュタグを安易に使用すると、ユーザーに不快感を与え、エンゲージメント率の低下やアルゴリズムからの評価を下げる原因となります。投稿前に、必ず内容とハッシュタグが一致しているかを確認するフローを設けます。 - 使用を禁止するハッシュタグ
政治的・宗教的なもの、差別的な表現、ネガティブな意味合いを持つ可能性のある単語など、企業のイメージを損なうリスクのあるハッシュタグのリストを作成し、使用を禁止します。
これらのルールを策定し、チームで共有することで、属人化を防ぎ、戦略的で安定したハッシュタグマーケティング運用が可能になります。最初は簡単なルールからでも構いません。運用しながら改善を重ね、自社に最適化されたガイドラインを育てていきましょう。
フォロワーが増えるハッシュタグ選定の5つのコツ
ハッシュタグマーケティングの成否は、ハッシュタグの「選定」にかかっていると言っても過言ではありません。ただ闇雲に人気のハッシュタグを付けるだけでは、数多の投稿に埋もれてしまい、ターゲットユーザーに情報を届けることは困難です。
ここでは、戦略的にハッシュタグを選び、フォロワー増加につなげるための5つの具体的なコツを解説します。
投稿数に応じたキーワードを組み合わせる
ハッシュタグは、その投稿数(ボリューム)によって「ビッグキーワード」「ミドルキーワード」「スモールキーワード」の3つに大別できます。それぞれに役割があり、これらをバランス良く組み合わせることで、投稿の露出を最大化し、エンゲージメントを高めることができます。
ビッグ・ミドル・スモールキーワードの使い分け
各キーワードの特徴と役割を理解し、自社の投稿内容や目的に合わせて使い分けることが重要です。一般的に、Instagramでは合計10〜15個程度のハッシュタグを付けるのが効果的とされており、その内訳を以下のように配分するのがおすすめです。
種類 | 投稿数(目安) | 特徴と役割 | 具体例 | 使用数の目安 |
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ビッグキーワード | 10万件以上 | 認知度が高く検索されやすいが、競合が多く投稿がすぐに流れてしまう。短時間での広いリーチ獲得が目的。 | #ファッション, #カフェ, #旅行 | 1〜3個 |
ミドルキーワード | 1万〜10万件 | ある程度の検索ボリュームがありつつ、ビッグキーワードほど競合は多くない。関連性の高いユーザーに発見されやすく、「人気投稿」に掲載される可能性も。 | #きれいめコーデ, #東京カフェ巡り, #週末旅行 | 5〜7個 |
スモールキーワード | 1万件未満 | 検索ボリュームは少ないが、競合も少なく、特定の興味関心を持つ熱量の高いユーザーに届きやすい。エンゲージメント向上が目的。 | #大人女子きれいめコーデ, #渋谷コーヒースタンド, #箱根温泉一人旅 | 3〜5個 |
ビッグキーワードで多くのユーザーの目に触れる機会を作りつつ、ミドル・スモールキーワードでより関心度の高いユーザーに確実にアプローチし、エンゲージメントを獲得する。この「網」と「銛(もり)」のような組み合わせを意識することが、ハッシュタグ選定の基本戦略となります。
独自のオリジナルハッシュタグを作成する
既存のハッシュタグだけでなく、自社ブランドやキャンペーン独自の「オリジナルハッシュタグ」を作成・活用することも非常に有効な手法です。オリジナルハッシュタグには、以下のようなメリットがあります。
- ブランド認知度の向上:ユニークなハッシュタグは、ユーザーにブランド名を覚えてもらうきっかけになります。
- UGC(ユーザー生成コンテンツ)の創出:ユーザーにオリジナルハッシュタグを付けて投稿してもらうことで、口コミやレビューといったUGCが自然に集まります。
- コミュニティ形成:同じハッシュタグを使うユーザー同士で一体感が生まれ、ブランドのファンコミュニティを形成しやすくなります。
オリジナルハッシュタグを作成する際は、「#〇〇のある暮らし」「#〇〇部」のように、ユーザーが自分の投稿に付けたくなるような、覚えやすく、入力しやすく、かつ参加しやすいキーワードを意識しましょう。作成したハッシュタグは、プロフィール欄に記載したり、投稿で積極的に使用したりして、ユーザーへの利用を促すことが大切です。ユーザー参加型のキャンペーンと組み合わせることで、爆発的に拡散される可能性も秘めています。
トレンドのハッシュタグを積極的に取り入れる
SNSの「今」を反映したトレンドのハッシュタグを適切に取り入れることで、投稿の露出を飛躍的に高めることができます。X(旧Twitter)の「トレンド」やTikTokの「ハッシュタグチャレンジ」など、各SNSには話題のキーワードを知るための機能が備わっています。
また、季節のイベント(#お花見、#ハロウィン、#クリスマスプレゼント)、テレビ番組や映画、流行語など、世の中の動きと自社の投稿内容をうまく関連付けられるトレンドを見つけて活用しましょう。トレンドに乗ることで、普段はリーチできない新たな層に投稿が届き、新規フォロワー獲得の大きなチャンスとなります。
ただし、注意点として、投稿内容と全く関係のないトレンドハッシュタグを乱用するのは避けるべきです。ユーザーに「スパムだ」と認識され、かえってブランドイメージを損なう危険性があります。あくまでも投稿との関連性を第一に考え、適切に活用してください。
競合や人気インフルエンサーの付け方を参考にする
ハッシュタグ選定に迷ったときは、自社と同じジャンルで成功している競合アカウントや、ターゲット層から支持されている人気インフルエンサーの投稿を分析するのが近道です。彼らがどのようなハッシュタグを、どのような組み合わせで使っているのかを参考にすることで、自社が見落としていた効果的なキーワードを発見できます。
分析する際は、特に「いいね」や「コメント」が多い、エンゲージメント率の高い投稿に注目しましょう。単にハッシュタグを丸ごと真似するのではなく、「なぜこのハッシュタグが使われているのか」「どのような意図でこの組み合わせにしているのか」を考察し、自社のアカウントの特性や投稿内容に合わせて応用することが重要です。競合が使っているミドル・スモールキーワードは、自社にとっても効果的な場合が多く、積極的に取り入れていきましょう。
分析ツールを使い効果測定と改善を行う
ハッシュタグマーケティングは、一度ハッシュタグを付けて投稿したら終わりではありません。どのハッシュタグがフォロワー増加やエンゲージメント向上に貢献したのかを分析し、改善を繰り返すPDCAサイクルを回すことが、長期的な成功に不可欠です。
分析には、まず各SNSに標準で搭載されているインサイト機能(例:Instagramプロフェッショナルダッシュボード)を活用しましょう。「投稿のインサイト」から、その投稿がハッシュタグ経由でどれだけの人にリーチしたかを確認できます。複数の投稿データを比較することで、効果の高いハッシュタグとそうでないハッシュタグの傾向が見えてきます。
より詳細な分析を行いたい場合は、外部のハッシュタグ分析ツールを導入するのも一つの手です。ツールを使えば、特定のハッシュタグの投稿数推移や、エンゲージメント率の高い関連ハッシュタグなどを効率的に調査できます。データに基づいた客観的な視点でハッシュタグ選定を行うことで、マーケティングの精度は格段に向上するでしょう。
ハッシュタグマーケティングで炎上を避けるための注意点
ハッシュタグマーケティングは、正しく運用すれば絶大な効果を発揮しますが、一歩間違えれば「炎上」という形で企業のブランドイメージを大きく損なうリスクもはらんでいます。炎上は、顧客離れや売上低下に直結する深刻な問題です。
ここでは、ユーザーからの信頼を失わないために、絶対に押さえておくべき注意点を詳しく解説します。
投稿と無関係なハッシュタグは使わない
より多くのユーザーに投稿を見てもらいたいという気持ちから、投稿内容と直接関係のない人気のハッシュタグを付けてしまうケースがあります。これは「ハッシュタグの乱用」と呼ばれ、絶対に避けるべき行為です。ユーザーの検索体験を著しく損なうだけでなく、企業の信頼性を失墜させる原因となります。
例えば、飲食店の新メニュー紹介の投稿に「#ファッション」や「#旅行好きと繋がりたい」といった、全く関連性のないトレンドハッシュタグを付けるのは典型的なNG例です。ユーザーは、そのハッシュタグで特定の情報を探しているため、無関係な投稿が表示されると強い不快感を抱きます。
さらに、SNSのプラットフォーム側もこのような行為を問題視しています。アルゴリズムによってスパム行為と判断された場合、アカウントの表示が制限される「シャドウバン」の対象となったり、最悪の場合はアカウントが凍結されたりする可能性もあります。目先のインプレッション数に惑わされず、投稿内容と関連性が高く、ユーザーにとって有益なハッシュタグのみを選定するという誠実な姿勢が、長期的なファン獲得に繋がります。
ステルスマーケティングを疑われないための配慮
ステルスマーケティング(通称:ステマ)とは、広告・宣伝であることを消費者に隠したまま、商品やサービスを宣伝する行為です。これは消費者を欺く行為であり、発覚した際のダメージは計り知れません。
特に日本では、2023年10月1日からステルスマーケティングが景品表示法違反(不当景品類及び不当表示防止法)の対象となり、法的な規制が強化されました。知らなかったでは済まされず、違反した場合は行政処分の対象となる可能性があります。
インフルエンサーに商品やサービスを提供して投稿を依頼する場合や、自社でUGC(ユーザー生成コンテンツ)風の広告を作成する際には、それが広告・宣伝であることを誰が見ても明確にわかるように表示する義務があります。
具体的には、以下のような表記を投稿の分かりやすい場所(冒頭など)に入れるように徹底しましょう。
- 「#PR」「#広告」「#プロモーション」などのハッシュタグを付ける
- 「〇〇社から商品提供を受けて投稿しています」といったテキストを記載する
以下の表は、ステマを疑われやすいケースとその対策をまとめたものです。自社の運用が該当しないか、必ず確認してください。
ステマを疑われやすいケース | 推奨される対策 |
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インフルエンサーに金銭や物品を提供し、SNS投稿を依頼する。 | 契約の段階で、「#PR」などの広告表記を投稿の分かりやすい位置に記載することを必須条件とする。 |
自社の従業員が、身分を明かさずに個人アカウントで自社の商品やサービスを過度に賞賛する投稿を行う。 | 従業員であることをプロフィールや投稿文で明記するなど、企業との関係性を明確にする社内ルールを設ける。 |
一般ユーザーの口コミ投稿に見せかけた広告(UGC風広告)を配信する。 | 投稿内に「広告」「プロモーション」といった表示を明確に行い、ユーザーが広告であると認識できるようにする。 |
消費者を欺く行為は、最終的に自社の首を絞めることになります。常に透明性を意識し、誠実なコミュニケーションを心がけることが、炎上を防ぎ、ユーザーとの信頼関係を築く上で最も重要です。
社会的にデリケートな話題のハッシュタグ利用は慎重に
災害、事件、事故、政治的なトピックなど、社会的にデリケートで多くの人々の感情を揺さぶる出来事に関連するハッシュタグの利用には、最大限の注意が必要です。
これらのハッシュタグは多くの人の注目を集めるため、安易に自社の宣伝やキャンペーンに結びつけてしまうと、「不謹慎だ」「人の不幸を商売に利用している」といった激しい批判を浴び、大規模な炎上につながるリスクが非常に高いです。たとえ善意や共感のつもりであっても、文脈によっては企業の利益のために利用していると受け取られかねません。企業の公式アカウントとして発信する際は、その投稿が社会にどう受け止められるかを多角的に検討し、少しでも懸念があれば利用を控えるという慎重な判断が求められます。
まとめ
ハッシュタグマーケティングは、低コストで認知拡大やユーザーとの交流を促進できる強力な手法です。成功の鍵は、目的を明確にし、InstagramやX(旧Twitter)など各SNSの特性を理解した上で、戦略的にハッシュタグを選定することにあります。投稿数に応じたキーワードの組み合わせや効果測定を繰り返し、継続的に改善することがフォロワー増加に繋がります。
本記事で解説した手順とコツを参考に、炎上リスクを避けながら効果的なアカウント運用を目指しましょう。