テレワーク管理とは?中小企業が直面する5つの課題
テレワーク管理とは、従業員がオフィス以外の場所で働く「テレワーク(リモートワーク)」という勤務形態において、適切な業務遂行、労働時間の把握、円滑なコミュニケーション、そして情報セキュリティの確保などを実現するためのマネジメント手法全般を指します。オフィス勤務とは異なり、従業員の働く姿が直接見えない環境下で、いかにして生産性を維持・向上させ、組織としての一体感を保つかが重要なテーマとなります。
働き方改革やパンデミックを機に多くの企業で導入が進んだテレワークですが、特に人的・金銭的リソースが限られる中小企業においては、独自の課題が浮き彫りになっています。ここでは、多くの中小企業が直面する代表的な5つの課題について詳しく解説します。
従業員の労働時間や勤怠の管理
テレワークにおける最も基本的かつ重要な課題が、従業員の労働時間や勤怠状況の正確な把握です。オフィスであればタイムカードや入退室記録で客観的に管理できましたが、テレワークでは従業員の自己申告に頼らざるを得ないケースが多く、管理が煩雑になりがちです。
具体的には、始業・終業時刻が曖昧になったり、休憩や「中抜け」の実態が見えにくくなったりします。これにより、気づかないうちに長時間労働(隠れ残業)が発生していたり、逆に業務時間中に集中できていない従業員がいても把握できなかったりするという問題が生じます。労働基準法を遵守し、従業員の健康を守るためにも、客観的で信頼性の高い勤怠管理の仕組みを構築することが急務です。
業務の進捗状況の把握
「誰が、いつまでに、どの業務を、どこまで進めているのか」という進捗状況の可視化も、テレワーク管理における大きな課題です。隣の席にいれば気軽に「あの件、どうなってる?」と確認できたことも、テレワークでは意図的にコミュニケーションを取らなければ分かりません。
進捗が不透明な状態が続くと、以下のような問題が発生しやすくなります。
- プロジェクト全体の遅延に気づくのが遅れる
- 特定の従業員に業務負荷が偏ってしまう
- 問題が発生した際の報告・相談が遅れ、対応が後手に回る
- 管理職が部下の業務状況を把握できず、適切なサポートや指示ができない
業務プロセスが見えないことは、生産性の低下だけでなく、チーム全体の連携ミスや手戻りの原因にも直結するため、業務を可視化する仕組みづくりが不可欠です。
コミュニケーション不足による生産性の低下
テレワーク環境では、チャットやWeb会議といった「目的のあるコミュニケーション」は行われるものの、オフィスでの何気ない会話や雑談といった「偶発的なコミュニケーション」が激減します。この一見無駄に思える雑談が、実は組織の活性化において重要な役割を担っていました。
コミュニケーションが不足すると、情報共有の遅れや認識の齟齬が生まれやすくなるだけでなく、チームとしての一体感が希薄になり、従業員が孤独感や疎外感を抱きやすくなります。新しいアイデアの創出や、困ったときの気軽な相談がしにくい環境は、徐々に組織全体の士気と生産性を蝕んでいく可能性があります。
情報漏洩などセキュリティリスクの増大
テレワークの導入は、企業のセキュリティ体制に新たな脅威をもたらします。従業員が社内の保護されたネットワーク環境外で、個人のPCや自宅のWi-Fiといった多様な環境から社内情報にアクセスするため、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクが格段に高まります。
オフィス勤務とテレワークにおけるセキュリティリスクの違いは、以下の表のように整理できます。
項目 | オフィス勤務 | テレワーク |
---|---|---|
ネットワーク環境 | ファイアウォールなどで保護された社内ネットワーク | セキュリティレベルが不均一な自宅Wi-Fiや公共Wi-Fi |
使用端末 | 会社が管理・設定した業務用端末が中心 | 私物PC(BYOD)の利用や、管理の行き届かない業務用端末 |
物理的セキュリティ | 入退室管理されたオフィス内での業務 | 端末の盗難・紛失、第三者による画面の覗き見リスク |
脅威の具体例 | 限定的な経路からのサイバー攻撃 | マルウェア感染、不正アクセス、フィッシング詐欺など多様な経路からの攻撃 |
特に中小企業にとって、一度の情報漏洩インシデントは、顧客からの信頼失墜や損害賠償に繋がり、経営に致命的な打撃を与える可能性があります。全社的なセキュリティポリシーの策定と、それを遵守させるための管理体制が不可欠です。
公平な人事評価の難しさ
テレワークでは、従業員の勤務態度や業務プロセスが見えにくくなるため、人事評価のあり方も見直しを迫られます。オフィス勤務であれば、仕事への取り組み姿勢やチームへの貢献といった定性的な部分も評価に加味しやすかったですが、テレワークでは成果物(アウトプット)中心の評価に偏りがちです。
成果だけで評価しようとすると、目に見える成果を出しやすい部署や職種の従業員が有利になり、他者をサポートするような縁の下の力持ち的な貢献が見過ごされるなど、従業員の間に不公平感を生む原因となります。評価への不満は、従業員のモチベーションやエンゲージメントを著しく低下させるため、プロセスや貢献度を可視化し、誰もが納得できる公平な評価基準を設計することが新たな課題となっています。
テレワークの勤怠管理を徹底する方法
テレワークを成功させる上で、最も基本的かつ重要なのが「勤怠管理」です。オフィス勤務とは異なり、従業員の働く姿が直接見えないため、労働時間を正確に把握し、適切に管理する仕組みが不可欠となります。自己申告だけでは、長時間労働の温床になったり、サービス残業が発生したりするリスクも否定できません。
労働基準法を遵守し、従業員の健康を守り、公正な評価を行うためにも、客観的な記録に基づいた勤怠管理体制を構築しましょう。
ここでは、ツール活用とルール策定の両面から、テレワークの勤怠管理を徹底する方法を具体的に解説します。
勤怠管理ツールを活用する
Excelやスプレッドシートによる手作業での勤怠管理は、入力ミスや報告漏れ、集計作業の煩雑さといった課題がつきまといます。テレワーク環境下では、これらの課題がさらに顕在化しやすいため、勤怠管理ツールの導入が極めて有効です。
勤怠管理ツールを導入することで、以下のようなメリットが得られます。
- 客観的な労働時間の記録:PCのログオン・ログオフ時間と連携したり、IPアドレスで打刻場所を制限したりすることで、自己申告に頼らない客観的な記録が可能です。
- 法令遵守の徹底:残業時間や有給休暇の取得状況を自動で集計・可視化し、36協定の上限超過アラートなどで法令違反を未然に防ぎます。
- 管理業務の効率化:労働時間の自動集計により、人事・労務担当者の月末の集計作業や給与計算ソフトへの連携の手間を大幅に削減できます。
- 多様な働き方への対応:フレックスタイム制や時短勤務など、従業員一人ひとりの多様な働き方に合わせた勤怠管理が容易になります。
代表的な勤怠管理ツール
現在、テレワークに対応した多くの勤怠管理ツールが提供されています。ここでは、特に中小企業での導入実績が豊富な代表的なツールを比較表でご紹介します。自社の規模や勤務形態、予算に合ったツールを選びましょう。
ツール名 | 主な特徴 | こんな企業におすすめ |
---|---|---|
KING OF TIME | ・PCログ、GPS、Slack連携など多彩な打刻方法に対応。 | ・従業員数が多く、多様な働き方に対応したい企業。 |
ジョブカン勤怠管理 | ・勤怠管理以外にも、労務管理や給与計算などシリーズ展開が豊富。 | ・初めて勤怠管理ツールを導入する企業。 |
マネーフォワード クラウド勤怠 | ・給与計算や年末調整など、他のマネーフォワード クラウドシリーズとの連携がスムーズ。 | ・すでにマネーフォワードの他サービスを利用している企業。 |
始業終業報告のルールを策定する
勤怠管理ツールを導入するだけでは不十分です。ツールを正しく運用するための「ルール策定」が伴って初めて、勤怠管理は徹底されます。特に、業務の開始と終了を明確にするための報告ルールは必須です。
ルールを形骸化させないためには、報告方法やタイミングを具体的に定め、全従業員に周知徹底することが重要です。
策定すべきルールの具体例は以下の通りです。
- 報告のタイミング:原則として、業務を開始する直前と、業務を完全に終了した直後。
- 報告の方法:ビジネスチャットツールの特定チャンネル(例:「#勤怠報告」)、または勤怠管理ツールのコメント機能などを利用する。
- 報告のフォーマット:「おはようございます。本日の業務を開始します。」「お疲れ様でした。本日の業務を終了します。」といった定型文を基本とし、必要に応じて当日の主な業務予定や実績を簡潔に記載するルールも有効です。
- 遅刻・早退・欠勤時の連絡:始業時刻までに間に合わない場合や、予定より早く業務を終える場合は、必ず上長にチャットや電話で一報を入れることを義務付けます。
- 打刻修正のルール:打刻忘れや誤打刻があった場合の申請フローを明確にします(例:上長に理由を添えて申請し、承認を得る)。
これらのルールを定め、上長が報告に対して「承知しました」「今日も頑張りましょう」といった簡単な返信をするだけでも、従業員の意識は高まり、コミュニケーションの活性化にも繋がります。
中抜けや休憩時間の管理方法
テレワークでは、子どものお迎えや役所の手続き、通院などで一時的に業務を離れる「中抜け」が発生しやすくなります。これを厳格に禁止するのではなく、柔軟に認めることで、従業員のワークライフバランス向上や生産性向上に繋がります。ただし、労働時間の管理を曖昧にしないためのルール作りが不可欠です。
まず、労働基準法で定められた休憩時間(労働時間が6時間超で45分、8時間超で1時間)は、必ず取得させなければなりません。勤怠管理ツールで休憩開始・終了の打刻を義務付けるのが最も確実な方法です。
その上で、中抜けの管理については以下のルールを定めましょう。
- 中抜けの定義:昼休憩とは別の、私用による30分以上の業務離席など、会社としての中抜けの定義を明確にします。
- 申請・報告フロー:中抜けをする際は、事前に上長やチームメンバーにチャット等で「14:00から1時間、中抜けします」のように予定を共有し、業務に戻る際にも報告することをルール化します。
- 勤怠の記録:勤怠管理ツールに「休憩開始」「休憩終了」の機能があればそれを活用し、中抜けした時間を正確に記録します。これにより、中抜け時間は労働時間から控除され、給与計算も適正に行われることを従業員に周知します。
中抜けを柔軟に運用するためには、1日の労働時間を従業員が自由に決められる「フレックスタイム制」の導入も非常に有効な選択肢です。コアタイム(必ず勤務すべき時間帯)を設定し、それ以外の時間は個人の裁量に任せることで、より自律的な働き方を促進できます。
業務の進捗を可視化するテレワーク管理術
テレワーク環境では、オフィス勤務のように隣の席の同僚や部下の様子を直接見ることができないため、「誰が、どの業務を、どこまで進めているのか」が分かりにくくなります。この状態が続くと、業務の重複や抜け漏れが発生したり、特定の従業員にタスクが偏ったりと、生産性低下の大きな原因になりかねません。業務の進捗状況を「見える化」することは、テレワークを成功させる上で極めて重要です。
ここでは、業務の進捗を正確に把握し、チーム全体の生産性を向上させるための具体的な管理術を紹介します。
タスク管理ツールを導入する
口頭やチャットでの業務依頼は、情報が流れてしまいやすく「言った・言わない」のトラブルや、タスクの対応漏れに繋がるリスクがあります。そこで有効なのが、タスク管理ツールの導入です。タスク管理ツールを使えば、チーム全体のタスク、担当者、期限、進捗状況を一覧で把握でき、業務の属人化を防ぐことができます。管理者はもちろん、従業員自身も自分の抱えるタスクを整理し、優先順位をつけて効率的に業務を進められるようになります。
代表的なタスク管理ツール
タスク管理ツールには様々な種類がありますが、ここでは日本の中小企業で広く利用されている代表的な3つのツールをご紹介します。それぞれの特徴を理解し、自社の規模や業種、チームのITリテラシーに合ったツールを選びましょう。
ツール名 | 主な特徴 | 向いているチーム・用途 |
---|---|---|
Trello (トレロ) | 「ボード」「リスト」「カード」を使って、付箋を貼るような感覚で直感的にタスクを管理できるカンバン方式のツール。シンプルで分かりやすく、誰でもすぐに使い始められるのが魅力です。 | 個人、小規模チーム、ITツールに不慣れなメンバーが多いチーム、タスクのステータス管理をシンプルに行いたい場合。 |
Asana (アサナ) | リスト、ボード(カンバン)、タイムライン(ガントチャート)、カレンダーなど多彩な表示形式でプロジェクトを管理できます。タスク間の依存関係も設定でき、複雑なプロジェクトの全体像を把握するのに優れています。 | 複数のプロジェクトが同時進行するチーム、部署間の連携が多い組織、詳細な進捗管理や計画立案が必要な場合。 |
Backlog (バックログ) | 日本の株式会社ヌーラボが開発した純国産ツール。ガントチャートやGit/Subversion連携など、特にITエンジニアやWeb制作の現場で重宝される機能が豊富です。非エンジニアでも使いやすいデザインも特徴です。 | ソフトウェア開発、Web制作チーム、バグや課題の管理を重視するプロジェクト、国産ツールならではのサポートを求める場合。 |
これらのツールは無料プランやトライアル期間が用意されていることが多いので、まずは小規模なチームで試してみて、操作感や機能が自社に合うかを確認することをおすすめします。
定期的なオンラインミーティングを実施する
タスク管理ツールは便利ですが、それだけでは補えない細かなニュアンスの共有や、予期せぬ課題への迅速な対応には限界があります。そこで重要になるのが、定期的なオンラインミーティングです。特に、毎日決まった時間に15分程度の短い「朝会」や「夕会」を実施することは非常に効果的です。
朝会では「昨日やったこと」「今日やること」「困っていること・相談したいこと」の3点を簡潔に共有し合います。これにより、チームメンバー各自の状況をリアルタイムで把握し、問題が発生した際に即座にサポート体制を組むことができます。目的のない長時間の会議は避けるべきですが、こうした短時間で目的の明確なミーティングは、チームの一体感を醸成し、進捗の停滞を防ぐ上で欠かせません。
日報や週報を運用する
日報や週報は、単なる管理のための義務ではなく、従業員自身の業務の振り返りと、上司や同僚との重要なコミュニケーション手段となります。特にテレワークでは、従業員がどのような業務に時間を使い、どのような成果を上げたのかが見えにくいため、日報は公正な評価を行う上での貴重な材料にもなります。
日報の運用を成功させるポイントは、書く側の負担を減らし、読む側(上司)が必ずフィードバックする文化を定着させることです。
- テンプレート化する: 「本日の業務内容」「成果」「課題・相談事項」「明日の予定」など、記載項目をフォーマット化し、誰でも簡単に書けるようにします。
- 提出を簡易化する: メールではなく、ビジネスチャットツールに日報専用のチャンネルを作成したり、日報ツールを導入したりして、手軽に提出・閲覧できるようにします。
- 必ずフィードバックする: 上司は日報を読みっぱなしにせず、「お疲れ様」「この件、明日相談しよう」といった一言でも良いので、必ずリアクションを返しましょう。この小さな積み重ねが、部下のモチベーション維持と信頼関係の構築に繋がります。
これらの進捗管理術を組み合わせることで、テレワーク環境下でも業務は「見える化」され、チームは円滑に機能します。まずは自社で取り入れやすいものから始めてみましょう。
テレワーク下でのコミュニケーション管理のコツ
テレワーク環境では、オフィス勤務のように気軽に声をかけたり、相手の様子を伺ったりすることが難しくなります。この「見えない」状況が、従業員の孤独感やチームの一体感の欠損を招き、結果として生産性の低下に繋がることも少なくありません。
しかし、適切なツールと工夫を取り入れることで、オフィス以上の円滑なコミュニケーションを実現することは可能です。ここでは、テレワーク下でのコミュニケーションを活性化させるための具体的な管理のコツを解説します。
ビジネスチャットツールを活用する
メールや電話に代わる主要なコミュニケーション手段として、ビジネスチャットツールの導入は不可欠です。リアルタイム性の高いやり取りが可能で、業務のスピードを落とさずに情報共有ができます。
重要なのは、ただ導入するだけでなく、自社に合った運用ルールを定めて活用することです。例えば、以下のようなルールが考えられます。
- 目的別のチャンネル作成: 「部署」「プロジェクト」「業務連絡」「雑談」など、目的別にチャンネルを分けることで、情報の整理と円滑なコミュニケーションを両立できます。必要な情報が埋もれるのを防ぎ、参加すべき会話が明確になります。
- メンション(@)の活用ルール: 必ず確認してほしい相手にはメンションを付け、単なる情報共有の場合は付けない、といったルールを設けることで、通知疲れを防ぎ、重要な連絡を見逃しにくくします。
- リアクション機能の積極利用: 「確認しました」「ありがとうございます」といった簡単な返信の代わりに、絵文字やスタンプでのリアクションを推奨します。これにより、コミュニケーションのハードルが下がり、ポジティブな雰囲気の醸成に繋がります。
- ステータス機能の活用: 「会議中」「集中作業中」「離席中」といったステータス表示を活用することで、相手の状況を把握し、話しかけるタイミングを計りやすくなります。
代表的なビジネスチャットツール
日本国内の中小企業で広く利用されている代表的なビジネスチャットツールを比較します。自社の規模や文化、既存システムとの連携性を考慮して選びましょう。
ツール名 | 主な特徴 | 強み |
---|---|---|
Slack | カスタマイズ性と外部サービス連携が非常に豊富。エンジニアやIT企業での利用率が高い。チャンネルでの会話が基本となる。 | Google DriveやTrelloなど、数多くの外部アプリと連携でき、業務の自動化や効率化を推進しやすい。 |
Microsoft Teams | Microsoft 365(旧Office 365)に含まれるツール。WordやExcel、PowerPointとの連携がスムーズ。Web会議機能も強力。 | 既にMicrosoft 365を導入している企業であれば、追加コストなしで利用開始できる点。ファイル共同編集機能が優れている。 |
Chatwork | 国産ツールで、シンプルで直感的な操作性が特徴。ITに不慣れな人でも使いやすい。タスク管理機能が一体化している。 | 取引先など社外のユーザーとも繋がりやすい。中小企業向けの導入実績が豊富で、サポート体制も充実している。 |
Web会議システムを有効活用する
Web会議システムは、単に遠隔地のメンバーと会議をするだけのツールではありません。定期的な「顔を合わせる機会」を意図的に作ることで、チームの一体感を醸成し、信頼関係を構築する上で極めて重要な役割を果たします。
効果的な活用方法として、以下が挙げられます。
- 定例ミーティング(朝会・夕会): 毎日5分〜15分程度の短い時間でも、チーム全員で顔を合わせる機会を設けます。業務の進捗共有だけでなく、簡単な雑談を交えることで、チームとしての一体感が生まれます。
- 1on1ミーティング: 上司と部下が1対1で定期的に話す機会を設けます。業務の相談だけでなく、部下のコンディションやキャリアに関する悩みなどをヒアリングし、孤立感の解消とエンゲージメント向上に繋げます。
- カメラONの推奨: できる限りカメラをONにすることを推奨しましょう。表情やジェスチャーといった非言語情報が伝わることで、相手の反応が分かりやすくなり、より深く、円滑な意思疎通が可能になります。
- 画面共有機能のフル活用: 資料を画面共有しながら説明することで、認識のズレを防ぎ、議論を効率的に進めることができます。
雑談を生むためのオンライン上の工夫
オフィスでの「ちょっとした立ち話」や「休憩室での会話」といった偶発的なコミュニケーション(雑談)は、テレワークで最も失われやすい要素の一つです。しかし、この雑談こそが、新たなアイデアの源泉になったり、人間関係の潤滑油になったりします。
オンライン上で雑談を生むためには、意識的な「場づくり」が欠かせません。
- 雑談専用チャンネルの開設: ビジネスチャットツール内に、業務とは関係のない「雑談チャンネル」や「趣味のチャンネル(例:#ごはん、#ペット、#好きな映画)」を作成します。心理的な安全性を確保し、従業員が気軽に投稿できる雰囲気を作ることが成功の鍵です。
- バーチャルオフィスの導入: アバターを使って仮想のオフィス空間に出社するツールです。同じ空間にいるメンバーの様子が分かり、まるで隣の席の同僚に話しかけるように、気軽に音声で会話を始めることができます。孤独感の解消に大きな効果が期待できます。
- オンラインコーヒーブレイクの設定: 例えば「毎日15時から15分間」のように時間を決め、自由参加のWeb会議室を開設します。業務から離れてリラックスした雰囲気で会話することで、部門を超えた交流が生まれるきっかけにもなります。
これらの施策は、従業員のエンゲージメントを高め、離職率の低下にも繋がる重要な投資です。まずは一つでも、自社で取り入れやすいものから試してみてはいかがでしょうか。
今すぐやるべきテレワークのセキュリティ管理
テレワークの導入は、働き方の柔軟性を高める一方で、オフィスという物理的な壁に守られていない環境で業務を行うため、新たなセキュリティリスクを生み出します。特に、セキュリティ対策に多くのリソースを割くことが難しい中小企業にとって、情報漏洩やマルウェア感染は事業継続を揺るがす深刻な問題に直結します。
しかし、ポイントを押さえて対策を講じれば、安全なテレワーク環境を構築することは決して不可能ではありません。ここでは、企業が今すぐ取り組むべき4つの重要なセキュリティ管理策を具体的に解説します。
VPNの導入と設定
自宅やカフェなどの公衆Wi-Fiから会社の重要な情報にアクセスする際、通信内容が第三者に盗聴されるリスクが常に伴います。このリスクを回避するために不可欠なのがVPN(Virtual Private Network)です。
VPNは、インターネット上に仮想的な専用トンネルを作り出し、通信データを暗号化することで、安全な通信経路を確保する技術です。これにより、たとえ通信が傍受されても内容を解読されることを防ぎ、社外からでも安全に社内ネットワークやクラウドサービスにアクセスできるようになります。
VPNにはいくつかの種類がありますが、中小企業ではコストと導入のしやすさから「インターネットVPN」が広く利用されています。導入を検討する際は、以下のポイントを確認しましょう。
- 同時接続ユーザー数: 全従業員が同時にアクセスしても問題ないか。
- 通信速度: 業務に支障が出ない十分な速度が確保できるか。
- セキュリティ機能: 多要素認証(MFA)など、より強固な認証方式に対応しているか。
- サポート体制: 導入時やトラブル発生時に迅速なサポートを受けられるか。
代表的なサービスとしては、NTT東日本・西日本が提供する「フレッツ・VPNワイド」や、ファイアウォール製品に付帯するCisco AnyConnect、FortiGateなどが挙げられます。
業務用端末の管理とルール
テレワークにおける情報漏洩の多くは、PCやスマートフォンといった業務用端末の紛失・盗難、あるいは不適切な利用が原因で発生します。そのため、端末そのものを適切に管理し、利用ルールを明確に定めることが極めて重要です。私物端末の業務利用(BYOD)は、管理が煩雑になりセキュリティリスクも高まるため、可能な限り会社が管理する業務用端末のみを利用する「コーポレート端末方式」を推奨します。
端末管理を徹底するために、以下のルールを策定し、従業員に遵守させましょう。
管理項目 | 具体的なルール内容 | 目的 |
---|---|---|
OS・ソフトウェア | OSやアプリケーションのアップデート通知が来たら、速やかに適用する。自動更新設定を有効にする。 | 脆弱性を放置せず、常に最新のセキュリティ状態を保つ。 |
パスワード設定 | 英数字・記号を組み合わせた10桁以上の複雑なパスワードを設定し、定期的に変更する。 | 不正ログインやブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)を防ぐ。 |
画面ロック | PCから離席する際は必ず手動でロックする。5分以上操作がない場合は自動で画面ロックがかかるよう設定する。 | 第三者による覗き見や不正操作を防止する。 |
データ保存 | 業務データは原則としてPCのローカル(デスクトップやドキュメントフォルダ)に保存せず、会社が指定したクラウドストレージや社内サーバーに保存する。 | 端末の紛失・故障時におけるデータ消失や情報漏洩のリスクを低減する。 |
紛失・盗難時対応 | 端末の紛失や盗難に気づいた際は、直ちに定められた報告先に連絡する。 | リモートワイプ(遠隔データ消去)などの対応を迅速に行い、被害を最小限に抑える。 |
これらのルールを効率的かつ確実に実行するためには、MDM(モバイルデバイス管理)やEMM(エンタープライズモビリティ管理)といったツールの導入が効果的です。これらのツールを使えば、管理者が遠隔から全端末の設定を強制したり、アプリの利用を制限したり、万が一の際にはデータを消去したりすることが可能になります。
ウイルス対策ソフトの導入徹底
テレワーク環境では、従業員が意図せずマルウェアに感染したWebサイトを閲覧したり、ウイルスが添付されたメールを開いてしまったりするリスクが高まります。1台でも無防備な端末があれば、そこが侵入経路となり、社内ネットワーク全体に感染が広がる恐れがあります。
そのため、すべての業務用端末に法人向けのウイルス対策ソフト(アンチウイルスソフト)を導入し、常に最新の状態に保つことが必須です。法人向けソフトは、個人向けとは異なり、管理者が全端末のセキュリティ状況(定義ファイルの更新状況やウイルス検知履歴など)を一元管理できる機能が備わっています。
近年では、従来のウイルス対策ソフト(EPP:Endpoint Protection Platform)の機能に加え、万が一ウイルスが侵入してしまった後の挙動を検知し、迅速に対応するための「EDR(Endpoint Detection and Response)」というソリューションも注目されています。予算や自社のセキュリティレベルに応じて、EDR機能を持つ製品の導入も検討するとよいでしょう。
代表的な法人向け製品には、「ウイルスバスター ビジネスセキュリティサービス」や「ESET PROTECT」、「Symantec Endpoint Security」などがあります。自社の規模や求める機能、サポート体制を比較検討して選びましょう。
従業員へのセキュリティ教育
VPNやウイルス対策ソフトといった技術的な対策をどれだけ講じても、それを使う従業員のセキュリティ意識が低ければ、その効果は半減してしまいます。フィッシング詐欺や標的型攻撃メールなど、人間の心理的な隙を突く攻撃は後を絶ちません。セキュリティインシデントの多くは、こうしたヒューマンエラーに起因しています。
したがって、定期的なセキュリティ教育を実施し、従業員一人ひとりのリテラシーを向上させることが不可欠です。教育では、以下のような内容を具体例を交えて伝えましょう。
- 不審なメールへの対処法: 知らない送信元からのメールや、件名・本文が不自然なメールの添付ファイルやURLは絶対に開かない。
- パスワード管理の徹底: 推測されにくいパスワードの設定、他サービスとの使い回しの禁止。
- 公共の場での注意点: 公衆Wi-Fi利用時は必ずVPNに接続する。PC画面を他人から覗かれないように配慮する(ショルダーハッキング対策)。
- 情報発信のリスク: SNSなどで業務に関する情報や、背景に機密情報が映り込んだ写真を投稿しない。
- インシデント発生時の報告義務: 「怪しいな」と感じた時点で、すぐに情報システム部門や担当者に報告する。「報告すると怒られる」という雰囲気を作らないことが重要です。
研修やeラーニングの実施に加え、擬似的な標的型攻撃メールを送信して従業員の対応を訓練するサービスを活用するのも効果的です。セキュリティ対策は「ルールを作って終わり」ではなく、全従業員の意識を高め、継続的に取り組むことが最も重要であると覚えておきましょう。
テレワーク管理を成功させる就業規則とルール作りのポイント
テレワークを本格的に導入し、継続的に運用していくためには、しっかりとした土台となるルール作りが欠かせません。オフィス勤務とは異なる環境で従業員が働くことになるため、労働時間、業務報告、費用負担、セキュリティなど、これまで想定していなかったさまざまな問題が発生する可能性があります。
こうしたトラブルを未然に防ぎ、全従業員が公平かつ安心して業務に取り組める環境を整備するためには、就業規則の改定や、新たに「テレワーク規程」を策定することが不可欠です。ここでは、テレワークのルール作りにあたって押さえるべき重要なポイントを具体的に解説します。
テレワーク規程に盛り込むべき項目
テレワーク規程は、テレワーク勤務に関するルールを網羅的に定めたものです。就業規則本体を改定する方法もありますが、別規程として定めることで、内容の変更や管理がしやすくなります。厚生労働省が公表している「テレワークモデル就業規則」なども参考に、自社の実情に合わせて以下の項目を盛り込みましょう。
項目 | 定める内容の具体例 | ポイント・注意点 |
---|---|---|
対象者 | ・テレワークを許可する従業員の範囲(全従業員、特定の部署・職種など) ・許可制か申請制か、その際の手続き方法 | 公平性を保ちつつ、業務内容や職務遂行能力を考慮して対象範囲を明確にします。 |
テレワークの場所 | ・原則として従業員の自宅 ・サテライトオフィスやコワーキングスペースの利用可否 | セキュリティや業務効率の観点から、勤務場所を限定するのか、ある程度の自由を認めるのかを定めます。 |
労働時間 | ・始業・終業時刻、休憩時間、中抜けのルール ・時間外労働、休日労働の申請・承認手続き ・勤怠報告の方法(ツールへの打刻、メール報告など) | 労働時間の把握は労務管理の基本です。中抜けを認める場合は、その間の時間を労働時間から除くなど、明確なルールが必要です。 |
服務規律 | ・業務への専念義務 ・業務時間中の離席や私用に関するルール ・職場環境の維持(第三者が業務情報に触れないようにする等) | オフィス勤務時と同様に、従業員が守るべき基本的なルールを定めます。特に情報管理に関する項目は重要です。 |
業務報告 | ・業務の開始・終了報告の方法とタイミング ・日報や週報など、業務進捗の報告ルール | 業務の可視化と円滑なコミュニケーションのために、報告のフォーマットや頻度を具体的に定めます。 |
通信費・経費負担 | ・PC、スマートフォンなど情報通信機器の貸与について ・通信費、光熱費、消耗品費などの費用負担のルール | 従業員の不満に繋がりやすい項目です。手当として一律支給するのか、実費精算するのかなどを明確に定めます。 |
人事評価 | ・テレワーク勤務者に対する評価方法 ・オフィス勤務者との公平性の担保 | 成果物や業務プロセスに基づいた評価基準を設け、テレワークであることが評価に不利にならないことを明記します。 |
安全衛生 | ・従業員が確保すべき執務環境の基準 ・長時間労働の抑制や健康確保のための措置 ・業務災害の取り扱い | 会社は従業員の安全配慮義務を負います。自宅での作業環境整備に関する指針や、健康相談窓口などを設けます。 |
セキュリティ | ・貸与PCの管理方法、私物端末の利用(BYOD)の可否 ・重要データや機密情報の取り扱いルール ・パスワード管理、ウイルス対策ソフトの導入義務 | 情報漏洩は企業の存続に関わる重大なリスクです。具体的な禁止事項や遵守事項を細かく定めます。 |
費用負担(通信費・光熱費)のルール
テレワークにおける費用負担は、従業員の納得感を得る上で非常に重要な要素です。労働基準法では、業務に必要な費用は原則として会社が負担すべきとされています。トラブルを避けるため、どこまでを会社が負担するのかを規程で明確にしましょう。
主な費用項目
- 情報通信機器:パソコン、モニター、Webカメラ、マイクなど業務に必要な機器。
- 通信費:インターネット回線費用やスマートフォンの通信料。
- 水道光熱費:業務時間中に使用する電気代など。
- 消耗品費:文房具やプリンターのインク・用紙など。
負担方法の選択肢
費用負担のルールには、主に以下の3つのパターンがあります。自社の状況に合わせて最適な方法を選択しましょう。
- テレワーク手当として一律支給する
最もシンプルで管理がしやすい方法です。「在宅勤務手当」などの名目で、月額3,000円~5,000円程度を支給する企業が多く見られます。従業員ごとの利用状況の差は考慮されませんが、経理処理の負担を大幅に軽減できます。 - 実費を精算する
従業員が支払った費用のうち、業務使用分を申請してもらい、会社が支払う方法です。公平性は高いですが、通信費や光熱費は私的利用との切り分け(家事按分)が難しく、計算や申請・承認のプロセスが煩雑になるというデメリットがあります。 - 現物を支給・貸与する
パソコンやモニター、ポケットWi-Fiなどを会社が購入し、従業員に貸与する方法です。セキュリティ管理の観点からも、業務用端末は会社が用意し貸与することが推奨されます。初期コストはかかりますが、資産管理やセキュリティ対策がしやすくなります。
これらの方法を組み合わせ(例:PCは貸与し、通信費等は手当で支給)、従業員が不利益を感じないようなルールを設計することが大切です。
導入までの具体的なステップと社内への周知方法
優れたルールを策定しても、それが従業員に正しく理解され、遵守されなければ意味がありません。テレワーク規程の導入と周知は、丁寧なコミュニケーションを心がけ、計画的に進めることが成功の鍵となります。
導入までの4ステップ
- ステップ1:現状把握と方針決定まず、どの部署・職種でテレワークが可能か、導入によるメリット・デメリットは何かを整理します。経営層、管理職、現場の従業員などからヒアリングを行い、自社に合ったテレワークの形を検討し、基本方針を決定します。ステップ2:テレワーク規程案の作成基本方針に基づき、人事・総務部門が中心となって規程の草案を作成します。前述の「盛り込むべき項目」を参考に、法的な要件を満たしつつ、自社の実情に合った内容に落とし込みます。ステップ3:意見聴取と届出作成した規程案について、従業員代表(労働組合または労働者の過半数を代表する者)の意見を聴取します。これは就業規則の変更における法的な義務です。聴取した意見を参考に規程を修正し、最終版を完成させます。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、変更後の就業規則(テレワーク規程を含む)を所轄の労働基準監督署長へ届け出る必要があります。
- ステップ4:社内への周知徹底完成した規程を全従業員に周知します。単に文書を配布するだけでなく、以下の方法を組み合わせて、従業員の理解を深めることが重要です。
効果的な周知方法
- 全社説明会の実施:オンライン会議システムなどを活用し、経営層や人事担当者から直接、導入の背景、目的、ルールの詳細を説明します。質疑応答の時間を十分に設け、従業員の疑問や不安をその場で解消するよう努めましょう。
- 分かりやすいマニュアルの配布:規程の条文だけでなく、図やイラストを用いて解説したハンドブックやマニュアルを作成・配布します。勤怠管理や各種ツールの使い方なども含めると、より実践的で役立ちます。
- ポータルサイトやチャットでの継続的な情報発信:いつでも誰でもルールを確認できるよう、社内ポータルサイトやイントラネットに規程やマニュアルを掲載します。改定があった場合や、よくある質問(FAQ)などを定期的に発信することも有効です。
一方的な通達ではなく、なぜこのルールが必要なのかという目的や背景を丁寧に伝え、従業員の理解と協力を得ながら進める姿勢が、テレワークを円滑に運用するための最も重要なポイントです。
【目的別】テレワーク管理に役立つおすすめツール比較
テレワーク管理を効率化し、課題を解決するためには、自社の目的や規模に合ったツールの導入が不可欠です。ここでは、テレワーク管理に欠かせない「勤怠管理」「プロジェクト・タスク管理」「コミュニケーション」「セキュリティ対策」の4つの目的に分け、それぞれのおすすめツールを比較・紹介します。自社がどの課題を最も解決したいのかを明確にし、最適なツールを選びましょう。
勤怠管理ツール
従業員の労働時間を正確に把握し、適切な労務管理を行うためのツールです。PCログの取得やGPS打刻など、テレワーク特有の働き方に合わせた機能が充実しているものを選ぶのがポイントです。これにより、「見えない場所での働きぶり」を客観的なデータで管理し、サービス残業の防止や公平な評価につなげることができます。
ツール名 | 特徴 | 料金(月額/1人あたり) | こんな企業におすすめ |
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KING OF TIME | 業界シェアNo.1の実績と信頼性。PCログ取得、GPS打刻、申請承認ワークフローなど、テレワークに必要な機能が網羅されている。外部サービスとの連携も豊富。 | 300円 | 豊富な機能と実績を重視し、本格的な勤怠管理システムを導入したい中小企業。 |
ジョブカン勤怠管理 | 必要な機能だけを選んでカスタマイズできる柔軟性が魅力。低コストで導入でき、シリーズ内の他ツール(労務管理、給与計算など)との連携もスムーズ。 | 200円〜 | コストを抑えつつ、自社に必要な機能からスモールスタートしたい企業。 |
freee勤怠管理Plus | 会計ソフトfreeeとの連携が強力。勤怠データを給与計算にシームレスに反映できるため、バックオフィス業務全体の大幅な効率化が期待できる。 | 300円〜(freee人事労務のプランによる) | すでにfreee会計を利用しており、勤怠から給与計算までを一気通貫で管理したい企業。 |
プロジェクト・タスク管理ツール
「誰が・何を・いつまでに行うのか」を可視化し、チーム全体の業務進捗を管理するためのツールです。テレワークで発生しがちな「あの件どうなった?」という確認の手間を削減し、業務の抜け漏れや遅延を防ぎます。進捗状況が一覧できれば、マネージャーは適切なタイミングでサポートに入ることができます。
ツール名 | 特徴 | 料金(月額/1人あたり) | こんな企業におすすめ |
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Trello | カンバン方式(付箋を貼るような感覚)でタスクを管理できる。直感的な操作性が特徴で、ITツールに不慣れな人でも使いやすい。無料プランでも十分に活用可能。 | 無料〜 | 個人や小規模チームで、シンプルかつ視覚的にタスク管理を始めたい企業。 |
Asana | リスト、ボード、タイムライン、ガントチャートなど多彩な表示形式でプロジェクト全体を俯瞰できる。タスク間の依存関係も設定でき、複雑なプロジェクト管理に対応。 | 無料〜 | 複数のプロジェクトが同時進行しており、全体の進捗状況や負荷を正確に把握したい企業。 |
Backlog | 日本のチームのために開発されたツール。エンジニアやWeb制作会社に人気で、バグ管理やバージョン管理システム(Git/SVN)との連携機能が強力。 | 約2,180円/月〜(スタータープラン) | ソフトウェア開発やWeb制作など、IT系のプロジェクト管理を円滑に進めたいチーム。 |
コミュニケーションツール
テレワークにおける最大の課題の一つがコミュニケーション不足です。ビジネスチャットやWeb会議システムを導入することで、オフィスにいる時のような気軽な相談や情報共有を促進し、孤独感の解消やチームの一体感醸成に繋がります。目的別にチャンネルを分けたり、雑談専用の場を設けたりする工夫が効果的です。
ツール名 | 特徴 | 料金(月額/1人あたり) | こんな企業におすすめ |
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Slack | 高いカスタマイズ性と豊富な外部アプリ連携が魅力。様々な通知や業務をSlackに集約し、業務のハブとして活用できる。チャンネルでの会話が基本。 | 無料〜 | 情報共有の効率化を徹底し、スピーディーなコミュニケーション文化を醸成したい企業。 |
Microsoft Teams | Microsoft 365(旧Office 365)との連携がシームレス。チャット、Web会議、ファイル共有・共同編集が1つのアプリで完結する。 | Microsoft 365のライセンスに含む | すでにMicrosoft 365を導入しており、追加コストなしで統合的な環境を構築したい企業。 |
Chatwork | 国産ツールならではのシンプルで分かりやすい操作性が特徴。タスク管理機能も内蔵されており、チャットの会話からそのままタスクを作成できる。 | 無料〜 | ITツールに不慣れな従業員が多く、誰でも簡単に使えるツールを導入したい企業。 |
セキュリティ対策ツール
テレワークでは、社内ネットワークの外で業務を行うため、情報漏洩やウイルス感染のリスクが高まります。VPNによる通信の暗号化や、業務用端末のセキュリティを強化するツールの導入は、企業の信頼を守る上で必須の対策です。
VPN(仮想プライベートネットワーク)
社外から社内ネットワークへ安全にアクセスするための仮想的な専用トンネルを構築する技術です。カフェや自宅のWi-Fiからでも、通信内容を暗号化することで、盗聴や情報漏洩のリスクを大幅に低減します。
分類 | 特徴 | 代表的なサービス/製品 |
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アプライアンス型VPN | 社内に専用のVPN機器を設置する方式。自社で管理するため、セキュリティポリシーを柔軟に設定できる。 | FortiGate, YAMAHA RTXシリーズ など |
クラウド型VPN(ZTNA) | 機器の設置が不要で、手軽に導入できる。ユーザー単位でアクセス制御を行う「ゼロトラスト」の考え方に基づいたサービスも増えている。 | Cisco Umbrella, Zscaler Private Access, Soliton SecureBrowser など |
EDR・MDM(エンドポイントセキュリティ・モバイルデバイス管理)
PCやスマートフォンなどの端末(エンドポイント)を保護・管理するツールです。MDMで紛失・盗難時のリモートロックやデータ消去を行い、EDRでウイルス感染後の不審な挙動を検知・対応することで、多層的な防御を実現します。
ツール名 | 特徴 | こんな企業におすすめ |
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Microsoft Intune | Microsoft 365に含まれるMDM/MAMソリューション。Windows PCやスマホを一元管理し、セキュリティポリシーを適用できる。 | Microsoft 365を導入済みで、様々なデバイスを統合的に管理したい企業。 |
CrowdStrike Falcon | AIを活用した次世代アンチウイルスとEDR機能をクラウドで提供。未知の脅威にも対応し、インシデント対応を迅速化する。 | 従来のウイルス対策ソフトだけでは不安で、より高度な脅威検知と対応体制を構築したい企業。 |
ウイルスバスター ビジネスセキュリティサービス | 従来型のウイルス対策に加え、WebレピュテーションやURLフィルタリングなど、中小企業に必要なセキュリティ機能をパッケージで提供。管理サーバーが不要なクラウド型。 | 専任のIT管理者がいなくても、手軽に包括的なエンドポイントセキュリティを導入したい中小企業。 |
まとめ
本記事では、中小企業がテレワークを成功させるための管理方法を、課題別に解説しました。テレワークにおける生産性の維持とセキュリティの確保は、企業の成長に不可欠です。
結論として、勤怠や業務進捗、コミュニケーションといった課題は、適切なツールの導入と明確なルール策定を両輪で進めることで解決できます。自社の状況に合わせて本記事で紹介した手法やツールを組み合わせ、計画的に管理体制を構築していきましょう。