「賃上げ」「ベースアップ」「定期昇給」それぞれの言葉の意味
ニュースや新聞で「賃上げ」という言葉を目にする機会が増えましたが、「ベースアップ」や「定期昇給」といった関連用語との違いを正確に説明できる方は意外と少ないかもしれません。これらの言葉は、私たちの給与に直結する重要な概念です。
ここでは、それぞれの言葉が持つ本来の意味を、具体例を交えながら一つひとつ丁寧に解説します。
賃上げとは:給与を上げる取り組みのすべて
「賃上げ」とは、従業員の賃金(給与)を引き上げるための企業の取り組み全般を指す、最も広い意味を持つ言葉です。これには、後述する「ベースアップ」や「定期昇給」による基本給の引き上げはもちろんのこと、賞与(ボーナス)の増額や、インフレ手当のような一時金の支給、各種手当の新設・拡充なども含まれます。
毎年春に行われる「春闘(春季労使交渉)」では、労働組合が経営側に対して、この「賃上げ」を要求します。その交渉の中で、賃金の引き上げ幅やその具体的な方法が決定されていきます。つまり、「賃上げ」は給与を増やすための様々な方法をまとめた総称と理解しておくとよいでしょう。
ベースアップ(ベア)とは:全従業員の基本給を一律に上げること
「ベースアップ」とは、「ベア」とも略され、企業の全従業員を対象に、基本給の水準そのものを一律で引き上げることを指します。これは、個人の成績や勤続年数とは関係なく、給与表(給与テーブル)の金額自体を底上げするイメージです。
例えば、ある企業の基本給が「200,000円」の従業員と「300,000円」の従業員がいたとします。もし企業が「2%のベースアップ」を実施した場合、それぞれの基本給は以下のようになります。
- 200,000円の従業員 → 204,000円(+4,000円)
- 300,000円の従業員 → 306,000円(+6,000円)
ベースアップは、主に企業の好業績を従業員に還元したり、物価上昇(インフレーション)に対応して従業員の生活水準を維持・向上させたりする目的で行われます。一度実施すると、企業の固定費(人件費)が恒久的に増加するため、経営側にとっては大きな決断となります。そのため、デフレが続いた日本では長らく実施が見送られる傾向にありました。
定期昇給(定昇)とは:個人の評価や勤続年数で給与が上がること
「定期昇給」とは、「定昇」とも略され、企業の給与規定に基づき、従業員一人ひとりの年齢、勤続年数、スキル、人事評価などに応じて基本給が上がることです。ベースアップが「全員一律」であるのに対し、定期昇給は「個人ごと」に昇給額が異なるのが最大の特徴です。
多くの企業では、年に1回(主に4月など)のタイミングで定期昇給が行われます。昇給額は、個人のパフォーマンスや会社への貢献度を評価した結果によって決まることが一般的です。これにより、従業員のモチベーション向上や長期的なキャリア形成を促す目的があります。
例えば、同じ勤続年数の同期入社の社員でも、人事評価が高ければ昇給額は大きくなり、評価が低ければ昇給額が小さくなる、あるいは昇給しないといった差が生まれます。これは、個人の努力や成果が給与に反映される仕組みと言えます。
これら3つの言葉の違いを、以下の表にまとめました。
項目 | ベースアップ(ベア) | 定期昇給(定昇) |
---|---|---|
対象者 | 原則として全従業員 | 個々の従業員 |
性質 | 一律・全体的 | 個別・個人的 |
昇給の根拠 | 企業の業績、経済情勢(物価動向など) | 年齢、勤続年数、スキル、人事評価など |
主な目的 | 生活水準の維持・向上、人材確保 | モチベーション向上、長期的な人材育成 |
実施の有無 | 企業の経営判断や労使交渉による(毎年あるとは限らない) | 企業の給与規定による(毎年実施されることが多い) |
賃上げとベースアップの関係性をわかりやすく解説
「賃上げ」と「ベースアップ」は、ニュースや会社の発表で頻繁に耳にする言葉ですが、その関係性が曖昧なまま理解している方も少なくありません。
第1章でそれぞれの言葉の意味を解説しましたが、ここでは両者の関係性に焦点を当て、より深く掘り下げていきます。この関係性を正しく理解することで、経済ニュースの背景やご自身の給与明細への影響がより明確になります。
賃上げの中にベースアップが含まれる
まず最も重要なポイントは、「賃上げ」という大きな枠組みの中に「ベースアップ」が含まれているという関係性です。「賃上げ」は、従業員の給与を引き上げる企業の取り組み全体の総称を指します。一方で「ベースアップ」は、その賃上げを実現するための具体的な手段の一つなのです。
賃上げは、大きく分けて「ベースアップ(ベア)」と「定期昇給(定昇)」という2つの要素で構成されるのが一般的です。以下の表でその関係性を整理してみましょう。
分類 | 概要 | 対象者 | 決定要因 |
---|---|---|---|
賃上げ(給与を引き上げる取り組み全般) | ベースアップ(ベア) | 原則として全従業員 | 企業の業績、経済情勢(物価上昇など)、春闘での労使交渉 |
定期昇給(定昇) | 対象となる従業員個人 | 個人の年齢、勤続年数、スキル、人事評価 |
このように、賃上げは単一の方法で行われるわけではありません。企業の給与テーブル(賃金表)そのものを底上げするベースアップと、そのテーブルに沿って個人の給与が上がっていく定期昇給が組み合わさって、月々の給与の引き上げ、すなわち「賃上げ」が実現されます。
ベースアップと定期昇給は同時に行われることもある
多くの企業では、給与改定は年に一度、例えば4月に行われます。その際、ベースアップと定期昇給が同時に実施されるケースが非常に多く見られます。
春闘(春季労使交渉)などで「今年の賃上げ率は平均3.5%で妥結」といったニュースが報じられることがありますが、この数字の内訳を理解することが重要です。この「賃上げ率」は、多くの場合、ベースアップによる引き上げ分と、定期昇給による引き上げ分を合算したものなのです。
具体的な例で見てみましょう。
項目 | 計算式・内容 | 金額 |
---|---|---|
改定前の月給 | – | 300,000円 |
賃上げ率 | ベースアップ分と定期昇給分の合計 | 3.0% |
賃上げ総額 | 300,000円 × 3.0% | 9,000円 |
【内訳①】定期昇給分 | 個人の評価や勤続年数による昇給(例:1.8%相当) | 5,400円 |
【内訳②】ベースアップ分 | 全従業員一律の基本給底上げ(例:1.2%相当) | 3,600円 |
改定後の月給 | 300,000円 + 9,000円 | 309,000円 |
この例では、賃上げ額9,000円のうち、個人の成長や勤続に対する昇給が5,400円、会社の決定による一律の底上げが3,600円となっています。もしベースアップが実施されなければ、この従業員の昇給額は5,400円にとどまります。近年のように物価が上昇している局面では、定期昇給だけでは実質的な生活水準の維持が難しくなるため、経済全体の動向を反映するベースアップの有無が従業員の生活に大きな影響を与えるのです。
企業が賃上げを行う主な方法
「賃上げ」と一言でいっても、その方法は一つではありません。企業は経営状況や経済情勢、従業員への還元方針などを総合的に判断し、様々な手法を組み合わせて従業員の給与を引き上げています。賃上げの方法によって、従業員の生活への影響や企業の財務的な負担も大きく異なります。ここでは、企業が賃上げを行う際の代表的な3つの方法について、それぞれの特徴を詳しく解説します。
基本給の改定(ベースアップと定期昇給)
従業員にとって最も影響が大きく、安定的といえるのが基本給の改定です。基本給は毎月の固定給与の土台となるだけでなく、残業代や賞与(ボーナス)、さらには将来の退職金の算定基礎にもなるため、この部分が引き上げられることは生活の安定に直結します。
基本給を改定する方法には、主に「ベースアップ」と「定期昇給」の2種類があります。これらは賃上げの文脈で頻繁に登場する重要なキーワードです。
ベースアップ(ベア) | 定期昇給(定昇) | |
---|---|---|
対象者 | 企業の全従業員、または特定の職種の従業員全員 | 個々の従業員 |
昇給の根拠 | 企業の業績向上、物価上昇への対応、同業他社との賃金格差是正など | 勤続年数、年齢、人事評価(個人の成績や能力)など |
実施の目的 | 従業員全体の給与水準を底上げし、生活水準の維持・向上やモチベーションアップを図る | 個人の成長や会社への貢献度を給与に反映させ、スキルアップを促す |
特徴 | 一度上げると下げるのが難しく、企業にとっては固定費が増加する大きな経営判断となる。デフレ経済下では実施が見送られる傾向があった。 | 多くの企業で毎年実施される制度。個人の頑張りが報われる仕組みであり、キャリアプランの設計にも関わる。 |
ベースアップは賃金テーブルそのものを書き換えるイメージで、全従業員の給与水準を力強く引き上げる効果があります。一方、定期昇給は同じ賃金テーブルの中で、個人の評価に応じて階段を上っていくイメージです。持続的な賃上げを実現するためには、この両方が適切に機能することが重要とされています。
賞与(ボーナス)の増額
賞与(ボーナス)の増額も、多くの企業で採用されている賃上げ方法です。賞与は、企業のその時々の業績に応じて支給額が変動する性格を持っています。そのため、業績が好調な年度に、その利益を従業員へ還元する手段として非常に有効です。
企業側のメリットとしては、基本給の引き上げと比べて固定費の増加リスクを抑えられる点が挙げられます。もし翌年度の業績が振るわなかった場合でも、賞与の支給額を調整することで人件費をコントロールしやすいため、経営の柔軟性を保つことができます。
一方で従業員にとっては、賞与は業績次第で変動するため、安定的・継続的な収入増とは言い切れない側面もあります。賞与の増額は一時的な収入アップとして非常に喜ばしいものですが、住宅ローンの返済計画など、長期的なライフプランを立てる上では基本給の引き上げほど確実な要素にはなりにくいでしょう。夏と冬の定期的な賞与とは別に、年度末の業績が確定した後に「決算賞与」として支給されるケースもあります。
インフレ手当など一時金の支給
近年の急激な物価上昇に対応するため、新たな賃上げ手法として注目されているのが「インフレ手当」や「物価高騰対応手当」「生活応援金」といった名称で支給される一時金です。
これは、基本給や賞与とは別の特別な手当として、従業員の当面の生活負担を軽減することを目的に支給されます。給与や賞与の改定には時間がかかる場合もありますが、一時金であれば経営層の判断でスピーディーに支給できるため、社会情勢の変化に迅速に対応できるというメリットがあります。
企業にとっては、賞与と同様に固定費を増やすことなく従業員に報いることができる有効な手段です。しかし、従業員から見れば、この手当はあくまで一時的な措置であり、来年度以降も継続して支給される保証はありません。したがって、インフレ手当は緊急避難的な生活支援としての意味合いが強く、恒久的な賃金水準の引き上げにつながるベースアップとは性質が異なります。その他、住宅手当や家族手当といった各種手当を拡充することも、従業員の実質的な手取り収入を増やす広義の賃上げに含まれます。
ベースアップが従業員と経済に与える影響
ベースアップは、単に個人の給与が増えるというだけでなく、従業員の生活や企業の成長、ひいては日本経済全体にまで大きな影響を及ぼす重要な取り組みです。
ここでは、従業員個人にもたらされるミクロな視点と、経済全体に与えるマクロな視点の両面から、ベースアップの重要性を掘り下げて解説します。
従業員の生活安定とモチベーション向上
ベースアップが実施されると、従業員には直接的かつ継続的なメリットがもたらされます。これは、一時的な手当や業績に連動する賞与(ボーナス)とは異なる、ベースアップならではの大きな特徴です。
まず最も大きな影響は、月々の安定した収入が増えることによる生活の安定です。基本給は給与の土台となる部分であり、残業代や賞与の算定基準にもなります。この土台が底上げされることで、将来にわたる収入の見通しが立てやすくなり、住宅ローンや子どもの教育費といった長期的なライフプランの設計にも安心感が生まれます。
近年のように物価上昇が続く状況下では、ベースアップは実質賃金の目減りを防ぎ、生活水準を維持・向上させるための生命線とも言えます。
さらに、ベースアップは従業員のモチベーションやエンゲージメント(会社への愛着や貢献意欲)にも大きく寄与します。会社が全従業員を対象に一律で基本給を引き上げるという決定は、「会社は従業員を大切にしている」という明確なメッセージとなり、従業員の会社に対する信頼感を高めます。自分の頑張りだけでなく、会社全体の成長が給与に還元されるという実感は、仕事への意欲を高め、組織の一員としての連帯感を育むでしょう。結果として、優秀な人材の確保や離職率の低下につながり、企業の持続的な成長を支える力となります。
以下の表は、給与が上がる主な方法と、それが従業員に与える影響の違いをまとめたものです。
項目 | ベースアップ | 定期昇給 | 賞与・一時金 |
---|---|---|---|
安定性 | 非常に高い(基本給が恒久的に上がる) | 高い(一度上がると下がりにくい) | 低い(業績により変動・支給なしの場合もある) |
将来設計への影響 | 大きい(収入の土台が上がるため計画を立てやすい) | 比較的大きい(勤続による上昇が見込める) | 小さい(不確定要素が大きく計算に入れにくい) |
モチベーションへの影響 | 会社への帰属意識や安心感につながる | 個人の努力や成果が報われる実感につながる | 短期的な意欲向上につながる |
日本経済のデフレ脱却への期待
ベースアップの動きは、個々の従業員や企業という枠を超え、日本経済全体を活性化させるための重要な鍵として大きな期待が寄せられています。特に注目されているのが、「賃金と物価の好循環」の創出です。
これは、以下のような経済の良い流れを生み出すことを目指すものです。
- 企業の業績が向上し、その利益を原資にベースアップを実施する。
- 従業員の所得が増え、可処分所得(自由に使えるお金)が増加する。
- 消費意欲が高まり、モノやサービスの購入が活発になる(個人消費の拡大)。
- 需要の増加を受けて、企業は製品やサービスの価格を適正に引き上げる。
- 企業の売上と利益がさらに増加し、それが新たな設備投資やさらなる賃上げにつながる。
この好循環が生まれることで、長年日本経済を停滞させてきたデフレからの完全な脱却が期待されています。政府や日本銀行が企業に対して強く賃上げを要請している背景には、この経済の好循環を何としても実現したいという強い意志があります。
また、広範囲にわたるベースアップの実施は、人々の心に根付いた「給料は上がらない」「モノの値段は変わらない」といったデフレマインドを払拭する効果も期待されます。将来の所得増が見込めるようになれば、人々は安心して消費にお金を回せるようになり、経済全体が前向きな活気を取り戻すきっかけとなるのです。
少子高齢化による労働力不足が深刻化する日本において、賃金の引き上げは人材を確保し、企業の生産性を維持・向上させるための「コスト」ではなく、未来への「投資」として、その重要性がますます高まっています。
過去の推移と今後の見通し|日本の賃上げ事情
賃上げ、特にベースアップの動向は、個々の企業の経営判断だけでなく、日本経済全体の大きな流れの中で決定されます。ここでは、賃上げをめぐる社会的な動きの歴史と、今後の見通しについて解説します。
春闘の歴史と役割
日本の賃金決定に大きな影響を与えてきたのが「春闘(しゅんとう)」です。
春闘とは
春闘とは「春季生活闘争」の略称で、毎年春に労働組合が経営者側と賃金や労働条件について交渉を行う取り組みのことです。1955年に始まり、現在では日本の賃金水準を決める上で最も重要なイベントと位置づけられています。
主に、労働組合の中央組織である「日本労働組合総連合会(連合)」が方針を掲げ、それに基づき各産業の労働組合(自動車、電機など)が、経営者側の団体である「日本経済団体連合会(経団連)」などと交渉を進めます。この交渉の最大の焦点が、ベースアップ(ベア)の有無と、その上げ幅である賃上げ率です。
時代ごとの賃上げの推移
春闘における賃上げの歴史は、日本の経済状況を色濃く反映しています。
- 高度経済成長期(1960年代〜1970年代前半):経済成長を背景に、毎年10%を超える大幅なベースアップが実現しました。
- 安定成長期(1970年代後半〜1980年代):オイルショックを経て経済は安定成長期に入り、賃上げ率も5%前後で安定的に推移しました。
- バブル崩壊後・デフレ経済下(1990年代後半〜2010年代):長引くデフレと景気低迷により、企業はコスト削減を優先。ベースアップが見送られる「ベアゼロ」が常態化し、定期昇給のみで賃上げを行う時代が長く続きました。
- 近年(2020年代〜):世界的なインフレと深刻な人手不足を背景に、再びベースアップの重要性が高まっています。特に2023年、2024年の春闘では、30年ぶりとも言われる高水準の賃上げが実現し、大きな注目を集めました。
政府が企業に賃上げを要請する背景
近年、岸田政権をはじめとする政府が、経済界に対して積極的に賃上げを要請する「官製春闘」とも呼ばれる状況が続いています。その背景には、日本経済が抱える構造的な課題があります。
デフレからの完全脱却と「賃金と物価の好循環」
政府が賃上げを強く推進する最大の目的は、長年続いたデフレ経済から完全に脱却し、経済の好循環を生み出すことです。政府や日本銀行が目指す「賃金と物価の好循環」とは、以下のような流れを指します。
- 企業の収益が拡大する
- 従業員の賃金が上昇する(賃上げ)
- 家計の所得が増え、消費が活発になる
- モノやサービスの需要が高まり、物価が緩やかに上昇する
- 企業の売上が増え、さらなる収益拡大につながる(1.に戻る)
この好循環を実現するためには、その起点となる「賃上げ」が不可欠です。物価だけが上昇し、賃金がそれに追いつかなければ、人々の生活は苦しくなり、消費は冷え込んでしまいます。これを「悪い物価高」と呼び、避けるべき事態とされています。そのため、政府は物価上昇を上回る持続的な賃上げの実現を企業に求めているのです。
具体的な政府の取り組み
政府は単に要請するだけでなく、企業が賃上げを行いやすい環境を整備するための政策も進めています。
- 賃上げ促進税制:従業員の給与を増やした企業に対して、法人税の控除を行う制度です。大企業向け、中小企業向けにそれぞれ条件が設けられており、賃上げのインセンティブとなっています。
- 最低賃金の引き上げ:国が定める最低賃金を毎年改定し、全国的な賃金の底上げを図っています。
- 公的価格の改定:政府が価格決定に関与する介護・障害福祉サービスの報酬や、保育士などの処遇改善を進めています。
今後の見通しと課題
2024年の春闘では、大企業を中心に歴史的な高水準の賃上げが相次ぎました。この流れが今後、日本経済全体に波及していくかが焦点となります。
しかし、課題も残されています。一つは、物価の上昇に賃金の伸びが追いつかず、「実質賃金」がマイナスで推移している状況です。給与の額面(名目賃金)は増えても、それ以上に物価が上がれば、購買力は低下し、生活実感は向上しません。
もう一つの大きな課題は、日本の雇用の約7割を占める中小企業への波及です。原材料費やエネルギー価格の高騰分を製品やサービスの価格に十分に転嫁できていない中小企業にとって、大幅な賃上げは経営の重荷となりかねません。大企業と中小企業の格差を是正し、日本全体で持続的な賃上げを実現できるかどうかが、今後の日本経済の鍵を握っています。
まとめ
本記事では、賃上げとベースアップ、定期昇給の違いを解説しました。賃上げは給与を上げる取り組み全般を指し、その具体的な方法として、全従業員の基本給を一律に上げるベースアップ(ベア)や、個人の評価に基づく定期昇給があります。
特にベースアップは、物価高から従業員の生活を守り、日本経済のデフレ脱却にも繋がるため重要視されています。
言葉の意味を正しく理解し、今後の春闘や経済の動向に注目しましょう。