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ウェルビーイング経営とは?意味からメリット、導入企業の成功事例まで徹底解説

投稿日:2025年7月19日 /

更新日:2025年7月22日

ウェルビーイング経営とは?意味からメリット、導入企業の成功事例まで徹底解説

人的資本経営への関心の高まりを背景に「ウェルビーイング経営」が注目されています。なぜなら、従業員の心身の健康と幸福が、企業の持続的な成長に不可欠だからです。本記事では、ウェルビーイング経営の定義やメリット、具体的な始め方から国内企業の成功事例までを網羅的に解説します。この記事を読めば、自社で実践するための知識と具体的なアクションプランを得ることができます。

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目次

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ウェルビーイング経営とは

ウェルビーイング経営とは、従業員一人ひとりの身体的、精神的、そして社会的な健康を包括的に捉え、その幸福度(ウェルビーイング)を高める経営手法です。従業員の幸福度を高めることを通じて、組織全体の持続的な成長と企業価値の向上を目指します。単なる福利厚生の充実や健康管理に留まらず、従業員を企業の最も重要な「資本」と位置づけ、その価値を最大化するための経営戦略として注目されています。

従業員がやりがいを感じ、心身ともに満たされた状態で働くことができれば、個人のパフォーマンスが向上するだけでなく、組織全体の生産性や創造性も高まります。変化の激しい現代において、企業が競争優位性を確立し、持続的に発展していくための不可欠な考え方と言えるでしょう。

ウェルビーイングの定義と5つの要素

ウェルビーイング(Well-being)は、直訳すると「幸福」や「良好な状態」を意味しますが、一時的な感情だけでなく、身体的、精神的、社会的にすべてが満たされた、持続的な幸福の状態を指す多面的な概念です。

この概念を理解する上で、世界的な調査会社である米国ギャラップ社が提唱する「5つの要素」が広く知られています。これらは独立しているのではなく、互いに深く関連し合っています。

要素内容具体例
キャリアのウェルビーイング
(Career Well-being)
仕事やキャリアに対する満足度や働きがい。・仕事に情熱を持って取り組めている
・自分の強みを活かせている
・キャリアパスが明確である
社会的なウェルビーイング
(Social Well-being)
良好な人間関係。他者とのつながり。・職場に信頼できる上司や同僚がいる
・家族や友人との関係が良好である
・コミュニティへの所属感がある
経済的なウェルビーイング
(Financial Well-being)
経済的な安定と満足感。・現在の収入に満足している
・将来への経済的な不安が少ない
・資産を適切に管理できている
身体的なウェルビーイング
(Physical Well-being)
心身の健康状態。・健康的な生活習慣を送っている
・十分な睡眠と休息がとれている
・ストレスをうまく管理できている
地域社会のウェルビーイング
(Community Well-being)
地域社会とのつながりや貢献。・住んでいる地域に愛着がある
・ボランティア活動などに参加している
・地域社会の安全性を感じている

ウェルビーイング経営では、これら5つの要素をバランス良く満たすための環境を整えることが、従業員の幸福と企業の成長につながると考えられています。

ウェルビーイング経営が注目される社会的背景

近年、多くの企業がウェルビーイング経営に注目し、導入を進めています。その背景には、働き方や価値観の変化、そして企業に求められる社会的責任の増大といった、いくつかの大きな社会的潮流があります。

人的資本経営への関心の高まり

現代の企業経営において、従業員をコストではなく、知識やスキル、経験といった価値を生み出す「資本」として捉える「人的資本経営」への関心が世界的に高まっています。2020年に経済産業省が公表した「人材版伊藤レポート」でも、その重要性が強調されました。

従業員が持つ能力を最大限に引き出すためには、その土台となる心身の健康と幸福が不可欠です。従業員のウェルビーイング向上への投資は、人的資本の価値を高め、企業の競争力を直接的に強化するという認識が広まったことが、ウェルビーイング経営が注目される大きな要因となっています。

SDGsとの関連性

SDGs(持続可能な開発目標)は、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。企業のSDGsへの取り組みは、今や企業価値を測る重要な指標の一つとなっています。

ウェルビーイング経営は、SDGsの複数の目標と深く関連しています。

  • 目標3「すべての人に健康と福祉を」:従業員の身体的・精神的な健康をサポートする取り組みは、この目標に直接貢献します。
  • 目標8「働きがいも経済成長も」:従業員がやりがいを感じ、公正な処遇を受けられる職場環境(ディーセント・ワーク)の実現を目指すウェルビーイング経営は、まさにこの目標を体現するものです。

このように、ウェルビーイング経営を推進することは、企業の社会的責任(CSR)を果たし、社会全体の持続可能性に貢献する活動でもあるのです。

「健康経営」との違い

ウェルビーイング経営とよく似た言葉に「健康経営」があります。両者は密接に関連していますが、その目的や範囲には違いがあります。

健康経営は、経済産業省が推進する取り組みで、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することを指します。主に、病気の予防や健康増進といった「身体的・精神的な健康」に焦点を当てるのが特徴です。

一方、ウェルビーイング経営は、その健康経営の概念を包含しつつ、さらに広い視点を持っています。身体的な健康だけでなく、働きがいや人間関係、経済的な安定といった、より多面的な幸福を目指します。

両者の違いをまとめると、以下のようになります。

 ウェルビーイング経営健康経営
焦点多面的・持続的な幸福
(身体、精神、社会、経済、キャリアなど)
心身の健康
(病気の予防、健康維持・増進)
目的従業員の幸福度向上を通じた、エンゲージメント向上、生産性向上、企業価値向上従業員の健康維持・増進を通じた、生産性維持、医療費抑制
アプローチ従業員の主体性を尊重し、やりがいや自己実現を支援する(ポジティブな状態を目指す)企業主導で健康課題を管理・改善する(マイナスをゼロにする)

端的に言えば、健康経営が「マイナスをゼロにする」守りのアプローチであるのに対し、ウェルビーイング経営は「ゼロをプラスにする」攻めのアプローチであり、健康経営を包含する、より広範で発展的な概念と理解することができます。

ウェルビーイング経営がもたらす5つのメリット

ウェルビーイング経営は、単なる福利厚生の充実にとどまらず、企業と従業員の双方に多大な恩恵をもたらす経営戦略です。従業員の幸福を追求することが、結果的に企業の持続的な成長へと繋がります。ここでは、ウェルビーイング経営がもたらす5つの具体的なメリットを詳しく解説します。

従業員エンゲージメントの向上

従業員エンゲージメントとは、従業員が自社の理念やビジョンに共感し、仕事に対して情熱を持ち、自発的に貢献しようとする意欲のことです。ウェルビーイング経営は、このエンゲージメントを高める上で重要な役割を果たします。

企業が従業員一人ひとりの心身の健康やキャリア、人間関係、経済的な安定といった多角的な側面に配慮することで、従業員は「自分は会社から大切にされている」「尊重されている」と感じるようになります。このような心理的安全性が確保された環境は、従業員の働く意欲、すなわちモチベーションを直接的に刺激します。従業員が心身ともに健康で、幸福を感じながら働ける環境は、自発的な貢献意欲を引き出し、エンゲージメントを飛躍的に高めます。結果として、従業員は自身の業務に誇りを持ち、より高いパフォーマンスを発揮しようと努力する好循環が生まれるのです。

生産性の向上と組織の活性化

従業員のウェルビーイングは、組織全体の生産性と密接に関連しています。特に問題となるのが「プレゼンティーイズム」と「アブセンティーイズム」です。

プレゼンティーイズムとアブセンティーイズム
項目プレゼンティーイズム (Presenteeism)アブセンティーイズム (Absenteeism)
状態出勤はしているものの、心身の不調が原因で本来のパフォーマンスを発揮できない状態。心身の不調を理由とした欠勤や休職。
課題周囲から気づかれにくく、本人の生産性が低下している状態が続く。組織全体の生産性損失が大きい。業務の遅延や、他の従業員への負担増加に繋がる。

ウェルビーイング経営は、健康相談窓口の設置、ストレスチェックの実施、柔軟な働き方の導入などを通じて、これらの問題を根本から改善します。心身のコンディションが整うことで、従業員一人ひとりの集中力や創造性が向上し、パフォーマンスが最大化され、組織全体の生産性向上に直結します。また、部署や役職を超えたコミュニケーションが活発化し、新たなアイデアやイノベーションが生まれやすい、風通しの良い組織風土が醸成される効果も期待できます。

人材の定着と離職率の低下

少子高齢化による労働力人口の減少が進む現代において、人材の確保と定着は企業にとって最重要課題の一つです。ウェルビーイング経営は、この課題に対する有効な解決策となります。

従業員が「この会社で働き続けたい」と感じる要因は、給与や待遇だけではありません。良好な人間関係、キャリア成長の機会、仕事と私生活の両立(ワークライフバランス)、そして公正な評価制度など、総合的な働きやすさが求められます。

ウェルビーイング経営は、まさにこれらの要素を包括的に改善する取り組みです。従業員の満足度が高まることで、自社への帰属意識が強まり、離職を考える従業員が減少します。ウェルビーイング経営は、従業員の定着を促し、優秀な人材の流出を防ぐことで、採用や再教育にかかる莫大なコストを大幅に削減する効果も期待できます。

優秀な人材の獲得

ウェルビーイング経営は、社内の人材定着だけでなく、社外の優秀な人材を引きつける「採用ブランディング」においても強力な武器となります。特にミレニアル世代やZ世代といった若い世代は、企業選びにおいて、企業の社会的姿勢や従業員を大切にする文化を重視する傾向が顕著です。

自社のウェブサイトや採用活動において、ウェルビーイング経営への具体的な取り組み(例:柔軟な勤務制度、メンタルヘルスケア支援、キャリア開発プログラムなど)を積極的に発信することは、企業の魅力を高めるため他社との差別化を図る上で非常に効果的です。「従業員の幸福を真剣に考える企業」というポジティブなイメージは、企業の価値観に共感する優秀な人材からの応募を増やすことに繋がります。ウェルビーイング経営への取り組みは、企業の魅力として求職者に伝わり、激化する人材獲得競争において大きな優位性をもたらします。

企業価値とブランドイメージの向上

ウェルビーイング経営は、従業員だけでなく、顧客、取引先、投資家といったあらゆるステークホルダーからの評価を高め、企業全体の価値向上に貢献します。

近年、企業の長期的な成長性を評価する上で、財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を考慮する「ESG投資」が世界の潮流となっています。ウェルビーイング経営は、この中の「S(社会)」、特に「従業員の人権や労働環境への配慮」という項目に直結する取り組みです。従業員を大切にする企業姿勢は、投資家からの信頼を獲得し、持続的な成長を支える基盤となります。また、「ホワイト企業」「健康経営優良法人」といった社会的評価は、顧客や取引先に対するブランドイメージを向上させ、製品やサービスの選択においても有利に働くでしょう。従業員を大切にする企業姿勢は、社会的な信頼を醸成し、サステナビリティを重視する現代において、揺るぎない企業価値を築くための無形の資産となります。

ウェルビーイング経営の注意点とデメリット

多くのメリットが期待されるウェルビーイング経営ですが、その導入と推進には慎重な検討が必要です。理想を掲げるだけではうまくいかず、かえって従業員の不信感を招くことにもなりかねません。ここでは、ウェルビーイング経営に取り組む上で直面しがちな2つの大きな注意点とデメリット、そしてその対策について詳しく解説します。

形骸化するリスクと対策

ウェルビーイング経営における最も大きな課題の一つが「形骸化」です。経営陣が流行に乗って導入したものの、具体的な目的や計画が伴わず、施策が単発で終わってしまうケースは少なくありません。掛け声だけで実態が伴わない状況は、従業員のエンゲージメントを向上させるどころか、会社へのシニカルな見方や不信感を助長する原因となります。

なぜ、ウェルビーイング経営は形骸化してしまうのでしょうか。その主な原因と、それを防ぐための対策を以下にまとめました。

形骸化の主な原因具体的な対策
経営層のコミットメント不足
「人的資本経営が重要だから」「他社もやっているから」といった理由だけで始め、経営トップが本気で関与しない。
経営トップによる一貫したメッセージ発信
経営理念や事業戦略とウェルビーイングを結びつけ、その重要性を経営層自らの言葉で繰り返し社内外に発信する。
目的・ビジョンの欠如
「何のためにウェルビーイング経営を行うのか」という目的が曖昧で、従業員に共有されていない。
従業員を巻き込んだビジョンの策定
ワークショップやアンケートを実施し、従業員の意見を反映させながら「自社らしいウェルビーイング」のあり方や目指す姿を具体的に定義する。
従業員の当事者意識の欠如
施策がすべて会社から与えられるものとなり、従業員が「受け身」の姿勢になってしまう。
ボトムアップでの施策立案と推進
従業員が自ら企画・運営するワーキンググループや委員会を設置し、現場のニーズに基づいた施策を展開する。
単発・一過性の施策
健康セミナーやヨガ教室といったイベント的な施策で満足してしまい、継続的な取り組みに繋がらない。
推進体制の構築とPDCAサイクルの確立
専門部署や担当者を任命し、責任の所在を明確にする。定期的な効果測定と改善を仕組み化し、取り組みを継続・発展させる。

形骸化を防ぐ鍵は、ウェルビーイング経営を「一過性のイベント」ではなく「企業文化を醸成するための継続的な活動」と捉えることです。経営層の強い意志と、従業員一人ひとりの当事者意識の両輪が不可欠と言えるでしょう。

コストと効果測定の難しさ

ウェルビーイング経営を推進する上で、避けては通れないのが「コスト」と「効果測定」の壁です。特に体力のない中小企業にとっては、大きな負担となる可能性があります。

まずコスト面では、以下のような直接的・間接的な費用が発生します。

  • 直接的なコスト:外部EAP(従業員支援プログラム)の契約料、健康管理アプリやツールの導入費、研修・セミナーの講師依頼料、リフレッシュスペースなどの設備投資費用など。
  • 間接的なコスト:施策を企画・運営する人事部門や担当者の人件費、従業員が研修などに参加することによる業務時間など。

さらに大きな課題となるのが、効果測定の難しさです。ウェルビーイングは、従業員の身体的・精神的・社会的な幸福度といった主観的な要素を多く含みます。そのため、投じたコストに対して、どれだけの利益(ROI)が生まれたのかを直接的な数値で示すことが非常に困難です。

また、施策の効果はすぐには現れず、組織文化の変革には中長期的な時間が必要です。短期的な成果を求められると、担当者の負担が増し、取り組みそのものが頓挫してしまうリスクもあります。

こうした課題に対しては、以下のようなアプローチが有効です。

課題対策・考え方
投資対効果(ROI)の算出が困難
ウェルビーイング向上と業績向上の直接的な因果関係を証明しにくい。
多角的なKPI(重要業績評価指標)を設定する
直接的な利益だけでなく、関連する複数の指標を定点観測する。
【KPI例】
  • アウトプット指標:施策参加率、満足度アンケート
  • アウトカム指標:エンゲージメントスコア、ストレスチェック結果、離職率、採用応募者数、有給休暇取得率、健康診断有所見率
初期投資や継続的なコスト負担
特に中小企業にとって、費用負担が導入の障壁となる。
スモールスタートを意識する
最初から大規模な投資はせず、特定の部署や課題に絞って小規模な施策から始める。無料のツールや自治体の支援制度などを活用するのも有効。
効果発現までに時間がかかる
短期的な成果が見えにくく、取り組みの継続が難しい。
定性的な評価も重視する
数値データだけでなく、従業員へのインタビューや座談会を通じて「職場の雰囲気が明るくなった」「相談しやすくなった」といった生の声(定性的な変化)を収集し、経営層や従業員に共有する。これが、取り組みを継続するモチベーションとなる。

ウェルビーイング経営は、短期的なリターンを求める投資ではなく、持続的な企業成長の基盤をつくるための長期的な取り組みです。コストや効果測定の難しさを理解した上で、自社の状況に合わせて無理なく継続できる計画を立てることが成功の鍵となります。

ウェルビーイング経営の始め方|具体的な導入ステップを解説

ウェルビーイング経営は、単に流行りの福利厚生制度を導入するだけでは実現できません。経営層の強い意志のもと、自社の課題に合わせた戦略を立て、継続的に取り組む組織文化の変革です。ここでは、ウェルビーイング経営を成功に導くための具体的な4つのステップを、体系的に解説します。

ステップ1:現状の把握と課題の可視化

何事も、まずは現在地を知ることから始まります。ウェルビーイング経営の第一歩は、従業員と組織が今どのような状態にあるのかを客観的なデータに基づいて正確に把握し、課題を可視化することです。思い込みや感覚だけに頼らず、多角的な視点から現状を分析しましょう。

具体的な方法としては、以下のようなものが挙げられます。

分析手法主な内容と目的ポイント
従業員サーベイストレスチェック、エンゲージメントサーベイ、パルスサーベイなどを実施し、従業員の身体的・精神的健康状態、仕事への満足度、人間関係、キャリアへの展望などを定量的に測定します。匿名性を確保し、従業員が安心して本音で回答できる環境を整えることが、信頼性の高いデータを得るための鍵となります。
勤怠・健康データ分析時間外労働時間、有給休暇取得率、休職者数・離職率、健康診断の結果といった客観的なデータを分析し、組織全体の健康リスクや労働環境の問題点を洗い出します。部署ごとや年代別など、属性を分けて分析することで、より具体的な課題が見えてきます。
ヒアリング・面談1on1ミーティングや部門ごとのグループインタビュー、役職者へのヒアリングなどを通じて、サーベイやデータだけでは見えてこない定性的な情報(現場の生の声)を収集します。「なぜそのように感じるのか」という背景や文脈を深く理解することが重要です。

ステップ2:経営理念と方針の策定

ステップ1で明らかになった課題を踏まえ、自社がどのようなウェルビーイング経営を目指すのか、その方向性を明確に定めます。このステップで重要なのは、経営トップが強いリーダーシップを発揮し、ウェルビーイング経営を経営戦略の根幹に据えるというコミットメントを社内外に示すことです。

まず、「なぜ自社はウェルビーイング経営に取り組むのか」という目的(パーパス)を、自社の経営理念やビジョンと結びつけて定義します。例えば、「従業員の創造性を最大限に引き出し、イノベーションを創出するため」「すべての従業員が心身ともに健康で、働きがいを感じられる会社になるため」といった、自社ならではの言葉で語ることが大切です。その上で、以下のような具体的なアクションに移ります。

  • ウェルビーイング宣言の策定と発信:経営トップ自らの言葉で、ウェルビーイング経営への取り組みを社内外に宣言します。これにより、全従業員の意識を高め、取り組みへの本気度を伝えます。
  • 推進体制の構築:人事部や新設の専門部署(ウェルビーイング推進室など)が中心となり、各部門からメンバーを選出した横断的なプロジェクトチームを立ち上げ、全社的な取り組みとして推進します。

ステップ3:具体的な施策の計画と実行

策定した方針に基づき、いよいよ具体的な施策を計画し、実行に移します。ここで大切なのは、他社の成功事例をそのまま模倣するのではなく、ステップ1で可視化された自社の課題や従業員のニーズに優先順位をつけ、最も効果的と思われる施策から着手することです。ここでは、代表的な施策の方向性を3つのカテゴリーに分けて紹介します。

【施策例1】働きがいのある職場環境づくり

従業員が仕事そのものにやりがいを感じ、自身の成長を実感できる環境は、ウェルビーイングの根幹をなす要素です。キャリアの充実や公正な評価を通じて、働きがいを醸成します。

施策の方向性具体的な施策例
柔軟な働き方の推進フレックスタイム制度、テレワーク・リモートワーク制度、時短勤務制度、ワーケーションの導入
キャリア開発支援スキルアップ研修、資格取得支援制度、社内公募制度、メンター制度の導入、1on1によるキャリア面談
公正な評価と承認透明性の高い評価制度の構築、360度評価の導入、成果だけでなくプロセスも評価する仕組みづくり
心理的安全性の確保ハラスメント防止研修の徹底、役職や立場に関わらず意見を言い合える文化の醸成、感謝や称賛を伝えるツールの導入(サンクスカードなど)

【施策例2】心身の健康をサポートする制度

従業員が最高のパフォーマンスを発揮するためには、心と身体の健康が不可欠です。健康維持・増進を直接的にサポートする制度を充実させます。

サポート対象具体的な施策例
身体的健康(フィジカル)健康診断・人間ドックの費用補助、婦人科検診の補助、フィットネスクラブ利用補助、社内での健康セミナー(栄養・睡眠・運動)、社員食堂でのヘルシーメニュー提供、オフィスでの野菜配布
精神的健康(メンタル)産業医やカウンセラーへの相談窓口設置(EAP)、ストレスチェック後のフォローアップ面談の義務化、マインドフルネス研修、アンガーマネジメント研修、リフレッシュ休暇制度
経済的健康(ファイナンシャル)金融リテラシー向上のためのセミナー開催(ライフプラン、資産形成など)、確定拠出年金(DC)制度の導入・拡充、従業員持株会制度

【施策例3】コミュニケーションの活性化

良好な人間関係は、職場のウェルビーイングを支える重要な土台です。部署や役職の垣根を越えたコミュニケーションを促し、組織の一体感を高めます。

コミュニケーションの方向具体的な施策例
タテ(上司と部下)1on1ミーティングの定例化と質の向上、経営層と従業員が直接対話するタウンホールミーティングの開催
ヨコ(同僚・部門間)社内SNSやビジネスチャットツールの活用、部門横断プロジェクトの推進、フリーアドレス制の導入、社内サークル活動への補助
ナナメ(他部署の上司・先輩)メンター制度の導入、役員や他部署の管理職とのランチ会・懇親会の設定

ステップ4:効果測定と改善のサイクル

ウェルビーイング経営は「施策を導入して終わり」ではありません。実行した施策が本当に従業員のウェルビーイング向上につながっているのかを定期的に測定・評価し、改善を繰り返すPDCAサイクルを回していくことが極めて重要です。

まず、ステップ1で把握した数値をベースラインとして、具体的な目標値(KPI)を設定します。その上で、定期的に効果を測定し、施策の有効性を検証します。

測定指標(KPI)の例測定方法改善アクション
従業員エンゲージメントスコアエンゲージメントサーベイ(年1回)、パルスサーベイ(月1回など)データ分析と従業員へのヒアリングに基づき、施策の優先順位を見直したり、内容を修正・追加したりします。効果の低い施策は思い切ってやめる判断も必要です。データと対話を繰り返しながら、自社に最適な形へと進化させ続けることが、ウェルビーイング経営を形骸化させないための秘訣です。
離職率・定着率人事データ分析
有給休暇取得率・平均残業時間勤怠データ分析
ストレスチェックの高ストレス者率ストレスチェック結果

この4つのステップを継続的に実践することで、ウェルビーイング経営は単なるスローガンではなく、企業の成長を支える強力な経営基盤として組織に根付いていくでしょう。

まとめ

本記事では、ウェルビーイング経営の意味やメリット、具体的な始め方を成功事例と共に解説しました。ウェルビーイング経営は、人的資本経営やSDGsへの関心の高まりを背景に、単なる福利厚生を超えた重要な経営戦略となっています。従業員の幸福を追求することが、生産性向上や人材定着、ひいては企業価値の向上に直結するためです。自社の現状把握から始め、計画的に取り組みを進めることで、持続的な成長を実現しましょう。

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