「インサイドセールス」の失敗に潜む「ブラックボックス」
――コロナ禍をきっかけに、「リモートセールス」「インサイドセールス」といったデジタル中心とした営業手法が増加しています。しかも、こうした手法をコロナ禍が収束しても恒常的に使っていく傾向が強いようですね。
會田 あるグローバルの調査によると、コロナ禍の2019年から2020年にかけてBtoB 顧客の調査および評価ステージの両方で「担当者とのデジタル接触」が20%から50%に増加したことが分かっています。日本も同様の傾向にあったと推測されます。そして具体的には「インサイドセールス」の手法が注目され、規模の大小を問わず導入しようとする日本企業が増加していきました。この動きが一過性のものではないのは、グローバルで景気後退の懸念が拡大していて、営業の生産性がより強く求められるようになっていることが影響していると思います。
――「インサイドセールス」によって、営業の生産性向上に欠かせない、ということでしょうか。
會田 これまで一般化とされてきた営業手法は、個人の力、属人性に依存する傾向がありました。そうした一部の「スター営業担当者」に頼っていては、生産性が向上しないことは明らかだし、彼らが去ってしまえばたちまち業績は下がってしまいます。
とはいえ、スター営業担当者の能力は、なかなか他の部員に引き継がれることはありません。生産性向上を追求する企業にとっては「再現性」のあるノウハウ・手法のほうが重要です。その意味でデジタル技術を使ったインサイドセールスは大きな可能性を秘めているわけですが、何かツールを導入すればうまく行くかというと、そう簡単ではありません。
――インサイドセールスを進めるとき、成功と失敗の分かれ目になるのはどんな点でしょうか。
會田 インサイドセールスでは、見込み顧客からさまざまなニーズや課題を聞き取り、それを成約へとつなげていくクロージング部隊に引き継ぎます。ヒアリングとクロージングとを単に役割分担しても、それぞれの仕事が属人化してしまい、肝心なところでのノウハウが明確化できない、なぜうまく行ったのか、行かなかったのか理由が明確にできないという状態になってしまうことがよくあります。私は海外も含めてさまざまなインサイドセールスの立ち上げに関わってきましたが、こういうケースがとても多いのです。
――SFAやCRMなど営業活動のデジタル化が多くの企業で進んでいます。それだけでは、うまく行った理由、行かなかった理由は分からないものでしょうか。
會田 デジタル化が進んだとしても、肝心なところ、すなわち「顧客との直接の会話」がブラックボックス化して可視化されていないから、分析がうまくいかないのです。つまり、「顧客とのラストワンマイルのコミュニケーションの可視化」ができていません。ヒアリングにしてもクロージングにしても、CRMやSFAによってメールやチャットでやり取りはデジタル化され可視化できます。しかし、顧客と自社の担当者が、どのような会話をしているのか、「音声」を素早く可視化できるツールは、これまでになかなかありませんでした。
「顧客とのラストワンマイル」である音声コミュニケーションを可視化する
――「顧客とのラストワンマイル」のコミュニケーションの可視化するとは、具体的にどういうことでしょうか?
會田 例えば、担当者の会話のスピードです。1秒間の発語文字数があまりに多いと、顧客は担当者に対して極めて不親切だという印象を持ちます。1秒あたり8文字が限界のようです。コミュニケーションスキルには「ペーシング(pacing)」というものがあり、話す速度だけでなく声の大きさ・音程、あいづちなどの頻度・タイミングを最適にする手法があります。また会話のなかで、顧客の発言に被せて話す回数が多いとうまくニーズを引き出せない、悪い印象を与えてしまうということも分かっています。こうした問題点は、メールやチャットのやりとりだけでは明らかにはなりません。
――顧客の性格なども、テキストでのやり取りからは分かりづらいですね。
會田 話してみると、丁寧な説明よりも結論ありきでスピーディに話してくれるのを好む人もいます。その逆のケースもありますね。ヒアリングの担当者は直接話した段階で相手の性格を理解して、相手の好む会話方法をとったとしても、引き継いだクロージングの担当者はそれにうまく対応できなくて、信頼を失うというケースもあるでしょう。また事前に「あのお客様はこういう人です」と説明されていても、上手くいかないこともあり得ます。実際の会話を聞いておくと対応の仕方も変わりますよね。
――会話を分析することで、相手が何を求めているのかがはっきりする、ということもあるのでは?
會田 もちろんです。分析することで特定のキーワードに顧客が反応していることが理解できるというケースもあります。会話しているときは分からなっかものが、可視化、分析することではっきりしてくれば、商談の途中から軌道修正して相手のニーズに合った提案を行うこともできるようになります。
――しかし、会話を録音して、多くの見込み顧客との会話を可視化して振り返るのは、実際には難しいですよね?
會田 録音した音声をすべて聞き直して振り返っていたら、生産性は著しく落ちでしまいますし、継続してそんな業務を続けるのは無理でしょう。顧客との会話の分析・解析作業を自動化し、直感的に分かるような仕組みが求められているということです。
短期間で人材を育成できる仕組みで、人材不足時代に備える
――RevCommが提供している「MiiTel」(ミーテル)が、「顧客とのラストワンマイル」のコミュニケーションを可視化に役立つツールというわけですね
會田 「MiiTel」なら会話のペーシングの分析結果もすぐに分かりますし、相手の会話途中で何回被せて発語しているかなどもチャートにして可視化できます。もちろんテレコミュニケーションツールとして、電話番号をワンクリックするだけで架電可能ですし、AIによって会話の文字起こしも自動で行います。録音した会話の整理もしやすく、手作業で整理する手間などはゼロになります。
――会話の分析そのものはどうですか?
會田 文字起こししたテキストから重要と思われるキーワードを抽出したり、そのキーワードが使われている部分の会話内容を列挙することも簡単にできます。またそれらの会話内容にユーザーが註釈を入れて、それを他のユーザーと共有することが可能です。こうした機能を使うことで、チーム内の社員同志で営業活動を振り返ることもできますし、リーダーが各担当者の会話の癖や強み、弱点などを迅速に把握するのにも役立ちます。
――ここまで伺っていると、まさに「営業を科学する」という感じですね。
會田 担当者の活動を数値で可視化するということが、「営業のDX」にとって重要です。顧客と担当者の会話を聞いて、「少し早口だね」「相手の言葉が終わるまで待っていた方がいいよ」といったアドバイスはツールを使わなくても可能でしょうが、「1秒間に何文字発語している」とか「顧客との会話において何回被せて発言している」というように数字で示すのは無理でしょう。また自動的に文字起こしをしてくれたり、キーワードなどによって内容について分析したりすることもできるので、上司だけでなく担当者自身の学びも密度が濃くなります。
――今後、生産年齢人口の減少、労働力の流動化によって営業担当者の不足が恒常化することも考えられます。そうしたなかで各担当者が迅速にレベルアップできることが求められますね。そうした意味でも「営業のDX」は必須ですね。
會田 営業というと、数字を上げるためにストレスがかかる無理な活動を強いられるケースも少なくありません。しかしこれからは「営業のDX」、データによって活動を可視化することで、そうした無理な活動を極力減らせるようになると思います。これは、営業人材を確保するという意味で、とても重要な要素です。また今後は、教育を行う側の人材も十分には確保できなくなるでしょう。経験の浅い人材でも自ら学びスキルアップを実現できるようなツールが必要です。
――こうしたツールを選択するときのポイントを教えてください。
會田 まず、担当者が直感的に操作できることです。ほとんどの機能が、マニュアルを見なくても利用できるユーザーインターフェースが備わっていることが大切です。また、ノーコード/ローコードの製品・サービスであることも重要で、基幹系システムやCRMやSFAなどのクラウドサービスとの連携が簡単にできることが必要となります。
当社では、すべての製品・サービスにおいて、こうした要素をとくに重視して開発しています。また、実際に導入した後のカスタマーサクセスについても、従来から組織のパワーを結集して対応しています。
――本日は、ありがとうございました。