ハラスメントとは?法律で定められた種類はあるのか
「ハラスメント(harassment)」とは、一般的に「嫌がらせ」「いじめ」を意味する言葉です。相手の意に反する言動によって不快な思いをさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益や脅威を与えたりする行為全般を指します。近年、職場や社会におけるハラスメントへの意識は高まり、「パワハラ」「セクハラ」といった言葉は広く知られるようになりました。
しかし、世の中には「〇〇ハラ」という言葉が数多く存在し、「どこからがハラスメントになるのか」「法律で罰せられるハラスメントはあるのか」と疑問に思う方も多いでしょう。この章では、ハラスメントの基本的な定義と、法律上の位置づけについて詳しく解説します。
ハラスメントの基本的な定義
ハラスメントが成立するかどうかを判断する上で最も重要なのは、「行為を受けた側がどう感じたか」という点です。たとえ行為者に「いじめるつもりはなかった」「指導の一環だった」という認識しかなくても、相手が身体的または精神的な苦痛を感じ、その尊厳が傷つけられたと判断されれば、ハラスメントに該当する可能性があります。
ただし、不快に感じたという主観だけで全てがハラスメントと認定されるわけではありません。実際には、その言動が行われた状況や背景、行為の継続性や頻度、当事者間の関係性などを踏まえ、「社会一般の労働者が同じ状況でどう感じるか」という客観的な視点も考慮して判断されます。
法律で定義され、企業の対策が義務付けられているハラスメント
実は、「ハラスメント」という行為そのものを包括的に禁止する単一の法律は存在しません。しかし、特定の法律において、いくつかのハラスメントについては明確に定義され、事業主(企業)に対して、それを防止するための措置を講じることが義務付けられています。
現在、日本の法律で事業主の防止措置が義務付けられている代表的なハラスメントは以下の通りです。
ハラスメントの種類 | 根拠となる法律 | 概要 |
---|---|---|
パワーハラスメント(パワハラ) | 労働施策総合推進法 | 職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるもの。 |
セクシュアルハラスメント(セクハラ) | 男女雇用機会均等法 | 職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働者が不利益を受けたり、就業環境が害されたりすること。 |
マタニティハラスメント(マタハラ) パタニティハラスメント(パタハラ) ケアハラスメント(ケアハラ) | 男女雇用機会均等法 育児・介護休業法 | 妊娠・出産、育児休業、介護休業などを理由とする、上司や同僚による解雇、雇い止め、降格、嫌がらせなどの不利益な取り扱いや言動。 |
これらのハラスメントについては、企業は相談窓口の設置や研修の実施、プライバシー保護の徹底といった具体的な対策を講じる法的義務を負っています。
法律で定められていない「〇〇ハラ」との関係
世の中には、法律で直接定義されていない「モラハラ(モラルハラスメント)」や「カスハラ(カスタマーハラスメント)」、「アルハラ(アルコールハラスメント)」など、多種多様な「〇〇ハラ」が存在します。
これらのハラスメントは、法律で個別に名称が定められているわけではありません。しかし、法律で定義されていないからといって、許されるわけでは決してありません。
例えば、言葉や態度による精神的な攻撃である「モラハラ」は、その多くが職場での優越的な関係を背景に行われるため、パワーハラスメントに該当するケースが非常に多いです。また、個人の人格を著しく侵害するような行為は、民法上の不法行為(民法第709条)に該当し、加害者に対して損害賠償を請求できる可能性があります。さらに、内容が悪質な場合には、刑法の脅迫罪や名誉毀損罪などに問われることもあり得ます。
この記事では、次章以降でこれらの多様なハラスメントについて、具体的な種類と事例を詳しく解説していきます。
【職場編】代表的なハラスメントの種類一覧

職場におけるハラスメントは、働く人の尊厳を傷つけ、安全で快適な職場環境を脅かす深刻な問題です。近年、その種類は多様化しており、法律で企業の対策が義務付けられているものも少なくありません。ここでは、職場で起こりうる代表的なハラスメントの種類について、具体例を交えながら詳しく解説します。
パワーハラスメント(パワハラ)
パワーハラスメント(パワハラ)は、職場のハラスメントの中でも特に代表的なものです。2020年6月に施行された労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)により、大企業では防止措置が義務化され、2022年4月からは中小企業にも適用が拡大されました。
法律上、パワハラは以下の3つの要素をすべて満たすものと定義されています。
- 優越的な関係を背景とした言動であること
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
- その言動により、労働者の就業環境が害されること
上司から部下への言動だけでなく、専門知識を持つ部下から上司へ、あるいは同僚間や集団による言動も、優越的な関係を背景としていればパワハラに該当する可能性があります。
パワハラの6つの類型と具体例
厚生労働省は、職場のパワハラの代表的な言動の類型として、以下の6つを挙げています。
類型 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
① 身体的な攻撃 | 殴る、蹴る、物を投げつけるなどの暴行・傷害。 | ・殴る、蹴るなどの暴力をふるう。 ・書類で頭を叩く、胸ぐらをつかむ。 ・相手に物を投げつける。 |
② 精神的な攻撃 | 脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言など。 | ・人格を否定するような発言をする。 ・他の従業員の前で大声で威圧的に叱責し続ける。 ・「給料泥棒」「辞めてしまえ」などの暴言を吐く。 |
③ 人間関係からの切り離し | 隔離、仲間はずれ、無視など。 | ・挨拶や会話をしても意図的に無視する。 ・一人だけ別の部屋に席を移され、誰ともコミュニケーションが取れないようにする。 ・会議や社内イベントに意図的に参加させない。 |
④ 過大な要求 | 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害。 | ・新入社員に到底達成不可能なノルマを課し、未達を厳しく叱責する。 ・一日中、シュレッダー作業だけをさせる。 ・終業間際に大量の仕事を押し付ける。 |
⑤ 過小な要求 | 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えないこと。 | ・専門職として採用した従業員に、コピー取りや草むしりしかさせない。 ・理由なく仕事を取り上げ、何もさせない。 |
⑥ 個の侵害 | 私的なことに過度に立ち入ること。 | ・交際相手や休日の過ごし方について執拗に尋ねる。 ・本人の許可なく、病歴や家庭の事情などの個人情報を他の従業員に言いふらす。 ・業務時間外に何度も私用の電話やメールを送る。 |
ただし、これらはあくまで代表例であり、個別の事案がパワハラに該当するかどうかは、具体的な状況に応じて判断されます。
パワハラへの対処法
パワハラを受けた場合、一人で抱え込まずに行動することが重要です。まずは、いつ、どこで、誰に、何をされたか(言われたか)を詳細に記録しましょう。ICレコーダーでの録音や、メール・チャットの保存、日記形式のメモなどが有効な証拠となります。その上で、社内のコンプライアンス窓口や人事部、信頼できる上司などに相談しましょう。社内での解決が難しい場合は、後述する公的な相談窓口の利用も検討してください。
セクシュアルハラスメント(セクハラ)
セクシュアルハラスメント(セクハラ)は、職場において行われる、労働者の意に反する性的な言動により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることを指します。男女雇用機会均等法により、事業主はセクハラ防止措置を講じることが義務付けられています。
被害者は女性に限らず、男性も被害者になることがあります。また、異性間だけでなく同性間で行われるものや、性的指向や性自認に関わらない言動もセクハラに該当します。
セクハラの類型と具体例
セクハラは、大きく「対価型」と「環境型」の2つに分けられます。
類型 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
対価型セクシュアルハラスメント | 労働者の意に反する性的な言動に対する反応によって、その労働者が解雇、降格、減給などの不利益を受けること。 | ・上司からの性的な誘いを断ったことで、不当な人事異動を命じられた。 ・食事やデートの誘いに応じなかったら、プロジェクトから外された。 |
環境型セクシュアルハラスメント | 労働者の意に反する性的な言動によって就業環境が不快なものとなり、能力の発揮に重大な悪影響が生じること。 | ・身体的な特徴をからかったり、性的な噂を流したりする。 ・ヌードポスターを職場に掲示する。 ・不必要に身体に触れる。 ・執拗に食事やデートに誘う。 |
セクハラへの対処法
セクハラに対しては、まず明確に拒否の意思を示すことが重要です。相手がハラスメントだと認識していないケースもあるため、「やめてください」とはっきり伝えることで、行為が止まる可能性があります。意思表示が難しい場合や、行為がやまない場合は、パワハラと同様に証拠を記録し、社内外の相談窓口に相談しましょう。
マタニティハラスメント(マタハラ)
マタニティハラスメント(マタハラ)とは、職場において、妊娠・出産、産前産後休業や育児休業などの制度利用を理由として行われる、精神的・肉体的な嫌がらせや不利益な取り扱いを指します。男女雇用機会均等法および育児・介護休業法で禁止されています。
具体例としては、「妊娠したなら退職すべきだ」といった退職強要、妊娠報告後の解雇や雇止め、育休からの復帰後に本人の意に反して元の職場から遠く離れた部署へ異動させるといった行為が挙げられます。
パタニティハラスメント(パタハラ)
パタニティハラスメント(パタハラ)は、男性従業員が育児休業や時短勤務などの制度を利用することに対する嫌がらせや不利益な取り扱いです。マタハラの一種と捉えられますが、男性特有の課題として注目されています。
「男のくせに育休を取るなんて考えられない」「育休を取得したら昇進に響くぞ」といった言動や、制度の利用申請を妨害する行為などが該当します。
ケアハラスメント(ケアハラ)
ケアハラスメント(ケアハラ)は、家族の介護を理由に、介護休業や時短勤務などの制度を利用する従業員に対する嫌がらせや不利益な取り扱いです。育児・介護休業法では、介護を理由とするハラスメントの防止措置も事業主に義務付けています。
「介護を理由に頻繁に休まれると迷惑だ」と嫌味を言われる、制度利用を相談しても「代わりの人間はいない」と取り合わない、といった行為がケアハラにあたります。
ジェンダーハラスメント
ジェンダーハラスメントとは、「男だから」「女だから」といった性別による固定観念や役割分担意識に基づいた嫌がらせのことです。性的な言動を伴わない点でセクハラとは区別されることもありますが、両者が複合的に発生する場合も少なくありません。
具体例としては、「お茶汲みやコピー取りは女性の仕事」「男なら営業で成果を出して当たり前だ」といった発言や、性別を理由に特定の業務から排除する行為などが挙げられます。
モラルハラスメント(モラハラ)
モラルハラスメント(モラハラ)は、言葉や態度、身振りなどによって、相手の尊厳や人格を継続的に傷つける精神的な暴力を指します。身体的な暴力は伴わず、陰湿で巧妙に行われることが多いため、周囲に気づかれにくいという特徴があります。
職場においては、パワハラと重なる部分も多いですが、上司・部下といった優越的な関係性がなくても成立します。無視、陰口、仲間外れ、根拠のない悪い噂を流す、わざと失敗するように仕向けるといった行為がモラハラに該当します。
テクノロジーハラスメント(テクハラ)とリモートハラスメント(リモハラ)
働き方の多様化に伴い、新たなハラスメントも生まれています。
- テクノロジーハラスメント(テクハラ):パソコンやITツールなどの操作に不慣れな人に対し、能力が低いことを見下したり、わざと専門用語を使って困らせたりする嫌がらせです。「こんなこともできないのか」と罵倒する、ITスキルが低いことを理由に重要な業務から外す、といった行為が該当します。
- リモートハラスメント(リモハラ):テレワーク(リモートワーク)環境下で行われるハラスメントです。業務時間外に過剰な連絡を強要したり、Web会議で私的な空間を執拗に映させたりする行為などが挙げられます。部下の監視目的で常にカメラをONにさせることも、リモハラと見なされる可能性があります。
時短ハラスメント(ジタハラ)
時短ハラスメント(ジタハラ)は、働き方改革で残業削減が叫ばれる中で生まれたハラスメントです。具体的な業務改善策を示さずに「早く帰れ」と定時退社を強要し、結果的に従業員が家に仕事を持ち帰らざるを得ない状況に追い込む行為を指します。
上司が部下の業務量を把握せず、精神論だけで残業を禁じることが主な原因です。これは実質的なサービス残業を強いるものであり、従業員に大きな負担をかけます。
エイジハラスメント(エイハラ)
エイジハラスメント(エイハラ)は、年齢を理由とした嫌がらせや差別的な言動です。若手社員に対して「最近の若い者は根性がない」と言ったり、中高年の社員に対して「もう年だから無理だろう」と重要な仕事を任せなかったりするなど、あらゆる年代が被害者にも加害者にもなり得ます。
SOGIハラスメント(ソジハラ)
SOGI(ソジ)とは、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字をとった言葉です。SOGIハラスメント(ソジハラ)は、性的指向や性自認を理由とした差別的な言動や嫌がらせ、いじめを指します。
本人の許可なく性的指向などを第三者に暴露する「アウティング」は、重大な人権侵害であり、SOGIハラスメントの典型例です。「ホモ」「レズ」といった差別的な呼称を使うことや、性自認と異なる性別で扱うことも該当します。パワハラ防止指針においても、SOGIハラスメントはパワハラに該当しうることが明記されています。
逆パワーハラスメント(逆パワハラ)
逆パワーハラスメント(逆パワハラ)は、部下から上司へ、または部下たちが集団となって上司に対して行われる嫌がらせです。上司が部下からのハラスメントを恐れて、正当な業務指示や指導をためらってしまうケースもあります。
具体例としては、部下たちが結託して上司の指示を無視する、上司の能力不足を公然と非難して孤立させる、SNSなどで上司の誹謗中傷を行うといった行為が挙げられます。
その他の職場で起こりうるハラスメントの種類
上記以外にも、職場では様々なハラスメントが発生する可能性があります。
採用に関するハラスメント(オワハラ・セカハラ)
- オワハラ(就活終われハラスメント):企業が内定を出した学生に対し、他社の選考を辞退するよう圧力をかける行為。「今ここで内定承諾書にサインしないなら内定を取り消す」などと迫るケースが該当します。
- セカンドハラスメント(セカハラ):ハラスメントの被害を会社や上司に相談した結果、「あなたにも原因があったのでは?」「大げさだ」などと言われ、さらに精神的な苦痛を受ける二次被害のことです。被害者を孤立させ、問題を隠蔽することにつながる悪質な行為です。
個人の尊厳を傷つけるハラスメント(ブラハラ・スメハラ)
- ブラッドタイプハラスメント(ブラハラ):血液型によって人の性格を一方的に決めつけ、相手を不快にさせる言動。「B型だから自己中心的だ」など、科学的根拠のない偏見に基づく嫌がらせです。
- スメルハラスメント(スメハラ):体臭や口臭、香水、柔軟剤などの「におい」によって、周囲に不快感を与えてしまうこと。本人の自覚がない場合も多く、指摘が非常にデリケートな問題ですが、就業環境を害するレベルであればハラスメントと見なされます。
解雇や退職勧奨に関するハラスメント(リスハラ)
- リストラハラスメント(リスハラ):企業が従業員を自主退職に追い込む目的で、嫌がらせやいじめ、実現不可能な業務命令、不当な配置転換などを行うことです。退職勧奨自体は違法ではありませんが、執拗に退職を迫ったり、侮辱的な言動を用いたりした場合は違法となる可能性があります。
【顧客・取引先編】近年問題視されるハラスメントの種類
ハラスメントは、職場の同僚や上司との間で起こるものだけではありません。近年、顧客や取引先といった社外の立場にある人から従業員への嫌がらせ行為が深刻な社会問題として認識されるようになりました。ここでは、特に問題視されている「カスタマーハラスメント」と「取引先ハラスメント」について詳しく解説します。
カスタマーハラスメント(カスハラ)
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客や消費者からのクレームや言動のうち、その要求内容が妥当性を欠いていたり、要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当であったりして、従業員の就業環境を害する行為を指します。
正当なクレームや意見表明と、カスハラは明確に区別される必要があります。商品やサービスへの不満を伝える正当な権利と、従業員の人格を否定したり、過剰な要求を突きつけたりする行為は全くの別物です。カスハラは従業員の心身に大きなストレスを与え、メンタルヘルスの不調や離職の原因となるだけでなく、企業の評判や生産性の低下にもつながる重大な問題です。
カスハラの具体例
カスハラには様々な態様がありますが、代表的なものを以下に示します。これらは単独で起こることもあれば、複合的に行われることもあります。
行為の類型 | 具体的な言動の例 |
---|---|
暴言・侮辱・脅迫 | 「バカ」「死ね」などの人格を否定する言葉を浴びせる 従業員の能力や容姿を執拗に罵る 「家を特定したぞ」「SNSで晒してやる」などと脅す |
過剰または不当な要求 | 商品やサービスの不備に対し、金銭や土下座を強要する 企業の規則や常識の範囲を超える謝罪や対応を求める 「誠意を見せろ」と金品を要求する |
時間的・身体的な拘束 | 何時間にもわたって電話を切りさせない、または店舗に居座る 従業員を長時間にわたり立たせたまま説教する 帰宅しようとする従業員を妨害する |
セクシュアルハラスメント・プライバシー侵害 | 執拗に連絡先を聞き出そうとする 不必要に身体に触れる、または容姿について性的な発言をする 従業員のプライベートな情報をSNSなどで拡散する |
暴力・器物損壊 | 従業員に暴力を振るう、または物を投げつける 店舗の備品や商品を故意に破壊する 机を叩くなど、威嚇的な行動をとる |
企業としてのカスハラ対策
カスハラは従業員個人で解決できる問題ではなく、企業が組織として毅然と対応することが不可欠です。企業には従業員が安全で健康に働けるよう配慮する「安全配慮義務」があり、カスハラ対策を怠ると法的な責任を問われる可能性もあります。具体的な対策としては、以下のようなものが挙げられます。
- 方針の明確化と社内外への周知:企業としてカスハラを容認しない姿勢を明確にし、ポスターやウェブサイトなどで社内外に広く知らせます。
- 対応マニュアルの作成と研修:カスハラの判断基準や具体的な対応フローを定めたマニュアルを作成し、全従業員を対象とした研修を定期的に実施します。ロールプレイングなどを通じて、実践的な対応スキルを身につけさせることが重要です。
- 相談体制の整備:従業員が一人で抱え込まずに済むよう、専門の相談窓口を設置したり、上司が速やかに相談に乗れる体制を構築したりします。
- 従業員を守るための現場対応:対応は一人で行わせず、必ず複数人で対応する、または上司に交代するルールを徹底します。また、証拠保全のために会話を録音・録画することも有効な手段です。
- 外部機関との連携:従業員の安全が脅かされる悪質なケースでは、ためらわずに警察に通報します。また、法的な対応が必要な場合は、顧問弁護士などの専門家と連携できる体制を整えておきます。
取引先ハラスメント
取引先ハラスメントとは、発注元などの取引上の優越的な立場を利用して、受注側の企業の従業員に対して無理な要求をしたり、人格を傷つけるような言動を行ったりする行為を指します。パワーハラスメントの一種と捉えられますが、行為者が社外の人間である点が特徴です。
「仕事を回してやっている」といった優越的な関係性を背景に、理不尽な要求がなされることが多く、立場の弱い受注側は断りにくいという深刻な問題があります。これは個人の尊厳を傷つけるだけでなく、企業の公正な取引関係を阻害する行為でもあります。
具体的には、以下のような行為が該当します。
- 契約内容に含まれない業務を無償で強要する
- 「取引を打ち切るぞ」と脅し、不当な値引きや短納期を要求する
- 担当者に対して、他の従業員の前で大声で叱責したり、侮辱的な言葉を浴びせたりする
- 業務とは無関係な接待や私的な用事を強要する
こうした行為は、単なるハラスメントにとどまらず、内容によっては独占禁止法が禁じる「優越的地位の濫用」や、下請法に抵触する可能性もあります。対策としては、カスハラと同様に、企業として対応方針を定め、従業員が一人で対応しない体制を整えることが重要です。被害を受けた場合は、担当者レベルで解決しようとせず、速やかに上司や法務部門に報告し、組織として対応を協議する必要があります。場合によっては、取引関係の見直しや、公正取引委員会などの公的機関への相談も視野に入れるべきです。
【プライベート・その他】多様化するハラスメントの種類一覧
ハラスメントは職場だけでなく、私たちの日常生活、つまりプライベートな場面にも潜んでいます。友人関係や家族間、学校、医療機関、さらにはSNS上など、その発生場所は多岐にわたります。ここでは、近年特に問題視されるようになった、プライベートやその他の場面で起こりうる多様なハラスメントの種類と具体例を解説します。
アルコールハラスメント(アルハラ)
アルコールハラスメント(アルハラ)とは、飲酒に関連する嫌がらせや人権侵害行為全般を指します。飲み会などの場で、本人の意思や体質を無視して飲酒を強要したり、酔って迷惑をかけたりする行為が該当します。急性アルコール中毒による死亡事故につながるケースもあり、極めて危険な行為です。
具体的には、以下のような5つの定義が広く知られています。
- 飲酒の強要:上下関係や場の雰囲気を利用して、飲酒を断れない状況に追い込むこと。「飲まないと場の空気が悪くなる」などと言ってプレッシャーをかける行為も含まれます。
- イッキ飲ませ:一気飲みや早飲み競争などを強要すること。血中アルコール濃度を急激に上昇させ、生命の危険を伴います。
- 意図的な酔いつぶし:酔い潰すことを目的としてお酒を飲ませる行為。酔いつぶれた人を放置することも、保護責任者遺棄罪に問われる可能性があります。
- 飲めない人への配慮を欠く言動:体質的にお酒が飲めない人や、飲みたくない人に対して「人生損してる」「付き合いが悪い」などと侮辱したり、飲まないことを責めたりする行為。
- 酔った上での迷惑行為:酔った勢いで暴言を吐く、暴力をふるう、セクハラをする、しつこくからむなど、他人に不快感や恐怖を与える行為全般。
ソーシャルメディアハラスメント(ソーハラ)
ソーシャルメディアハラスメント(ソーハラ)は、X(旧Twitter)やInstagram、Facebook、LINEといったSNS上で発生する嫌がらせです。職場関係者からプライベートな投稿を過度に監視されたり、友人関係を強要されたりすることで、精神的な苦痛を感じるケースが増えています。
具体例としては、以下のような行為が挙げられます。
- プライベートな投稿の一つひとつにコメントや「いいね!」を付けて監視しているかのような圧力をかける。
- SNS上での「友達」申請を執拗に要求し、断ると不機嫌になったり理由を問いただしたりする。
- 本人の許可なく、プライベートな写真や情報をタグ付けして投稿する。
- 勤務時間外や休日に、SNSのメッセージ機能を使って業務上の連絡を繰り返し送る。
- 匿名のアカウントを使って、特定の個人への誹謗中傷や悪意のあるコメントを投稿する。
オンライン上の行為であっても、相手のプライバシーを侵害し、精神的に追い詰める深刻なハラスメントであるという認識が重要です。
アカデミックハラスメント(アカハラ)
アカデミックハラスメント(アカハラ)は、大学や研究機関といった教育・研究の場で、教員などが優越的な地位や権威を濫用して、学生や部下の研究者に対して行う嫌がらせです。閉鎖的な環境で起こりやすく、被害者の学業やキャリアに深刻な影響を及ぼす可能性があります。
アカハラの具体例には、以下のようなものがあります。
- 正当な理由なく研究指導を拒否したり、学位論文の審査を妨害したりする。
- 学生や若手研究者の研究成果やアイデアを盗用し、自分の業績として発表する。
- 研究に必要な機器や設備を使わせない、実験を妨害するなど、研究活動を不当に阻害する。
- 「君には才能がない」「辞めてしまえ」といった人格を否定する暴言を浴びせる。
- 指導的立場を悪用し、食事やデートなど、研究とは無関係の私的な関係を強要する。
ドクターハラスメント(ドクハラ)
ドクターハラスメント(ドクハラ)とは、医師や看護師などの医療従事者が、その専門的知識や立場を背景に、患者やその家族に対して行う高圧的・侮辱的な言動や態度を指します。患者は心身が弱っている状態にあるため、医療従事者からの心ない言動は深刻な精神的苦痛となり、治療への意欲を削ぐことにもつながります。
具体的には、次のような行為がドクハラに該当する可能性があります。
- 患者の訴えや質問を「気のせい」「そんなはずはない」と頭ごなしに否定し、真摯に耳を傾けない。 * 威圧的な態度や専門用語の多用により、患者が質問しにくい雰囲気を作る。
- 患者の生活習慣や価値観について、侮辱したり見下したりするような発言をする。
- 治療方針について十分な説明を行わず、患者の同意なしに治療を進める。
- セカンドオピニオンを求めたいという患者の正当な権利を妨害したり、非難したりする。
その他の多様なハラスメントの種類
上記以外にも、私たちの生活の様々な場面で「ハラスメント」と認識される行為が生まれています。ここでは、特に近年話題になることが多いものを紹介します。
結婚や恋愛に関するハラスメント(マリハラ・ラブハラ・ゼクハラ)
個人の価値観が大きく関わる結婚や恋愛について、他人が土足で踏み込むような言動はハラスメントと見なされます。親しい間柄であっても、相手に多大なストレスを与える行為です。
ハラスメントの名称 | 具体例 |
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マリッジハラスメント(マリハラ) | 「まだ結婚しないの?」「いい人いないの?」と執拗に聞く。 「結婚しないと一人前じゃない」など、個人の生き方を否定する。 |
ラブハラスメント(ラブハラ) | 恋愛経験や交際相手の有無、詳細などをしつこく詮索する。 他人の恋愛事情を本人の許可なく周囲に言いふらす。 |
ゼクシィハラスメント(ゼクハラ) | 結婚情報誌を見せながら「あなたも早く」などと結婚を暗に強要する。 交際中のカップルに対し、過度に結婚への期待をかける発言をする。 |
娯楽に関するハラスメント(カラハラ・グルハラ)
飲み会や食事会など、本来は楽しいはずの娯楽の場でも、個人の嗜好や意思を無視した強要はハラスメントとなります。
ハラスメントの名称 | 具体例 |
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カラオケハラスメント(カラハラ) | 歌うのが苦手な人に無理やりマイクを渡して歌わせる。 人が歌っている曲を勝手に止めたり、歌唱力を馬鹿にしたりする。 |
グルメハラスメント(グルハラ) | 自分の食のこだわりを他人に押し付け、相手の好みを「センスがない」などと否定する。 高級店での食事に無理に付き合わせる。 |
その他の生活に関わるハラスメント
日常生活の中に潜む、比較的新しいタイプのハラスメントです。加害者側に悪意がなく、「冗談のつもり」「良かれと思って」という認識のズレから発生しやすいのが特徴です。
ハラスメントの名称 | 具体例 |
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エアハラスメント(エアハラ) | 暑がりの人、寒がりの人のどちらか一方の意見だけでエアコンの温度を設定し、体調不良を訴えても配慮しない。 |
パーソナルハラスメント(パーハラ) | 個人の容姿、身体的特徴、癖、家庭環境など、本人の努力では変えられない事柄をからかったり、侮辱したりする。 |
ペイシェントハラスメント(ペイハラ) | 患者やその家族が、医療従事者に対して行う理不尽な要求、暴言、暴力、セクハラなどの迷惑行為。ドクハラの逆のケース。 |
ここで紹介した以外にも、ハラスメントの種類は社会の変化と共に増え続けています。大切なのは、相手が「嫌がらせ」や「苦痛」と感じれば、それはハラスメントになりうるという視点を持つことです。
ハラスメントを受けたときの対処法と相談窓口

もしあなたがハラスメントの被害に遭ってしまったら、決して一人で抱え込まないでください。心身の安全を確保し、問題を解決するためには、冷静に、そして段階的に行動することが重要です。ここでは、ハラスメント被害に遭った際に取るべき具体的な対処法と、頼りになる相談窓口について詳しく解説します。
まずは証拠を記録する
ハラスメントの事実を第三者に客観的に伝え、適切な対応を求めるためには、証拠の収集が極めて重要になります。感情的にならず、できるだけ冷静に、具体的な事実を記録し続けることを心がけましょう。
客観的かつ具体的な証拠を継続的に記録することが、後の対応を有利に進めるための第一歩となります。具体的には、以下の項目を「いつ」「どこで」「誰が」「誰に」「何を」「どのようにしたか」という5W1Hを意識して、時系列で記録してください。
- 日時と場所:ハラスメント行為があった具体的な年月日、時間、場所(例:「〇月〇日 14:30頃、第2会議室にて」)
- 加害者と被害者、目撃者:誰からハラスメントを受けたか、その場に誰がいたか(同僚、上司など)
- ハラスメントの具体的な内容:言われた言葉、された行為を詳細に記録します。暴言や侮辱的な発言は、可能な限り正確に書き留めてください。
- その時の自分の感情や心身の反応:恐怖を感じた、屈辱的だった、悲しかったなどの感情や、動悸、腹痛、不眠といった身体的な症状も記録しておきましょう。
- 物的な証拠:
- ハラスメントに関連するメール、ビジネスチャット(Slack, Teamsなど)、SNSのメッセージは、スクリーンショットやPDFで保存する。
- 暴言や脅迫など、身の危険を感じる場合は、相手に気づかれないように会話を録音する(ボイスレコーダーやスマートフォンのアプリを活用)。
- 精神的な苦痛により心療内科や精神科を受診した場合は、医師の診断書を取得する。
これらの記録は、手書きのメモや日記、スマートフォンのメモアプリ、パソコンの文書ファイルなど、ご自身が続けやすい方法で構いません。重要なのは、継続的に記録を残すことです。
社内の相談窓口や信頼できる人に相談する
証拠がある程度集まったら、まずは社内での解決を目指すのが一般的です。会社には労働者の安全な労働環境を確保する「安全配慮義務」があり、ハラスメント問題に対応する責任があります。
多くの企業では、ハラスメントに対応するための専門窓口を設置しています。以下のような部署や担当者に相談しましょう。
- 人事部、労務部
- コンプライアンス部門
- 社内に設置されたハラスメント相談窓口
- 産業医、保健師
- 労働組合
相談する際は、収集した証拠を提示し、事実関係を具体的に説明します。また、相談した事実(いつ、誰に、何を相談したか)も記録に残しておきましょう。もし、社内に信頼できる上司や同僚がいる場合は、状況を相談してみるのも一つの手ですが、情報が意図せず漏れてしまうリスクも考慮し、相談相手は慎重に選ぶ必要があります。
社外の公的な相談窓口を利用する
「社内に相談窓口がない」「相談しても適切に対応してくれない」「会社自体が信用できない」といった場合には、社外の公的な相談窓口を利用しましょう。これらの窓口は中立的な立場で話を聞いてくれ、無料で利用できる場合がほとんどです。秘密も厳守されるため、安心して相談できます。
総合労働相談コーナー(厚生労働省)
全国の労働局や労働基準監督署内に設置されている、あらゆる労働問題に関する相談窓口です。解雇、賃金未払い、長時間労働といった問題だけでなく、パワハラやセクハラなどのハラスメントに関する相談も受け付けています。予約不要で、電話または面談で専門の相談員が対応してくれます。職場のトラブルに関して、無料で専門相談員に相談できる最初の窓口として非常に有用です。相談内容に応じて、法的な解決策や、労働局長による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」といった手続きの案内も受けられます。
法テラス(日本司法支援センター)
国によって設立された、法的トラブルを解決するための総合案内所です。ハラスメント問題について、どのような法的な解決策があるのか、弁護士に相談すべきかといった情報提供を受けられます。また、収入や資産が一定の基準以下の方を対象に、無料の法律相談や、弁護士・司法書士費用の立替えを行う「民事法律扶助制度」も利用できます。法的な解決を視野に入れているものの、弁護士費用に不安がある場合に頼りになる機関です。
みんなの人権110番(法務省)
法務局の職員や人権擁護委員が、いじめや虐待、そしてハラスメントといった様々な人権問題に関する相談を受け付けています。電話またはインターネットで相談が可能で、秘密は固く守られます。相談内容に応じて、法務局が調査を行い、人権侵害の事実が認められた場合には、加害者への説示や関係機関への改善要請など、救済措置を講じてくれることもあります。ハラスメントを「個人の尊厳を傷つける人権侵害」という観点から捉え、相談したい場合に適しています。
これらの公的機関はそれぞれに特徴があります。ご自身の状況に合わせて、最適な窓口を選びましょう。
相談窓口名 | 運営組織 | 主な相談内容 | 特徴 |
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総合労働相談コーナー | 厚生労働省 | パワハラ、セクハラを含むあらゆる労働問題 | 無料で予約不要。労働問題の専門家が対応。助言・指導やあっせん制度の案内も受けられる。 |
法テラス(日本司法支援センター) | 国 | ハラスメントに関する法的な問題全般 | 法的解決策の情報提供。収入等の要件を満たせば無料法律相談や弁護士費用の立替え制度が利用可能。 |
みんなの人権110番 | 法務省 | ハラスメントなどの人権侵害問題 | 人権問題の専門家が対応。必要に応じて調査や救済措置が行われることがある。 |
弁護士に相談する
会社が誠実に対応しない場合や、加害者や会社に対して損害賠償(慰謝料など)を請求したい場合、また、退職を余儀なくされた場合など、法的な措置を検討する段階では、弁護士への相談が有効です。労働問題に詳しい弁護士に相談することで、法的な観点から具体的な見通しや最適な解決策についてアドバイスをもらえます。
法的措置を具体的に検討している場合や、会社との交渉が困難な場合には、法律の専門家である弁護士への相談が最も確実な手段となります。弁護士に依頼すれば、あなたの代理人として会社と交渉を行ったり、労働審判や訴訟といった法的手続きを進めたりしてくれます。初回の相談を無料で行っている法律事務所も多いため、まずは一度、相談してみることをお勧めします。
ハラスメント加害者にならないために知っておくべきこと
ハラスメントは、被害者だけでなく、加害者や企業にも深刻なダメージを与えます。「そんなつもりはなかった」という言い訳は通用せず、誰もが意図せず加害者になる可能性があります。ここでは、ハラスメントの加害者にならないために、企業と個人がそれぞれ知っておくべき重要なポイントを解説します。
企業が行うべきハラスメント防止対策
労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)により、企業には職場のハラスメント防止措置を講じることが義務付けられています。これは大企業だけでなく、中小企業を含むすべての事業主が対象です。怠った場合、行政指導や勧告、企業名公表の対象となる可能性があります。具体的に講じるべき措置は以下の通りです。
措置義務の項目 | 具体的な対策例 |
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1. 事業主の方針の明確化と周知・啓発 |
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2. 相談に応じ、適切に対応するための体制整備 |
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3. ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応 |
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4. その他の併せて講ずべき措置 |
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これらの対策は、パワハラだけでなく、セクハラやマタハラなど、あらゆるハラスメントに対して一体的に講じることが望ましいとされています。安全で働きやすい職場環境を整備することは、企業の法的義務であり、社会的責任でもあるのです。
個人がハラスメントをしないために意識すべきこと
職場で良好な人間関係を築こうとする言動が、意図せず相手を傷つけ、ハラスメントと受け取られてしまうケースは少なくありません。自分自身が加害者にならないために、日頃から以下の点を意識することが極めて重要です。
自分の「当たり前」を相手に押し付けない
価値観は人それぞれです。自分が「これくらい普通」「冗談のつもり」と感じることでも、相手にとっては深刻な苦痛である場合があります。「自分たちの時代はこうだった」「これくらい乗り越えられないとダメだ」といった自分の価値観を基準にするのは危険です。相手の年齢、性別、性的指向、国籍、経歴、家庭の事情など、多様な背景を尊重する姿勢が求められます。
アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に気づく
アンコンシャス・バイアスとは、誰もが持っている「無意識の思い込みや偏見」のことです。例えば、「男性だから力仕事が得意だろう」「女性だから細やかな気配りができるはず」「若いからITに詳しいだろう」といった決めつけが、ジェンダーハラスメントやエイジハラスメントにつながることがあります。自分の中にある無意識の偏見に気づき、言動に移す前に「これは思い込みではないか?」と自問する習慣をつけましょう。
「指導」と「パワハラ」の境界線を理解する
部下や後輩への指導は業務上必要ですが、その方法を誤るとパワハラになります。以下の点を常に意識してください。
- 目的の正当性:その指導は業務上の必要性に基づいていますか?私的な感情やストレス発散が目的になっていませんか?
- 手段の相当性:人格を否定するような暴言、他の従業員の前での叱責、必要以上の長時間にわたる説教など、社会通念上、相当な範囲を超えていませんか?
- 相手への配慮:相手の状況や能力を考慮していますか?一方的に考えを押し付けていませんか?
指導の際は、あくまで「業務上の問題行動」そのものに焦点を当て、相手の人格や尊厳を傷つけないよう細心の注意を払う必要があります。
プライベートへの過度な干渉を避ける
コミュニケーションのつもりが、相手のプライベートに踏み込みすぎるとハラスメントになります。特に、以下のような話題は慎重になるべきです。
- 恋人や結婚、子どもの有無に関する質問や意見(「まだ結婚しないの?」「二人目はいつ?」など)
- 休日の過ごし方やプライベートな予定の詮索
- 容姿や体型、服装に関する個人的な意見
- 支持政党や信仰する宗教に関する話題
相手が自ら話さない限り、個人のプライベートな領域には踏み込まないのが原則です。もし相手が不快な表情をしたり、話をそらしたりした場合は、すぐにその話題をやめ、謝罪することが大切です。
まとめ
本記事では、パワハラやセクハラといった代表的なものからカスハラまで、多様化する33種類のハラスメントを解説しました。ハラスメントは職場に限らず、誰もが意図せず加害者にも被害者にもなりうる身近な問題です。
被害に遭った際は一人で抱え込まず、証拠を記録して社内外の適切な窓口へ相談することが解決への第一歩となります。この記事が、ハラスメントへの正しい知識と対処法を身につける一助となれば幸いです。